McBride氏の公開書簡に対するRaymondとPerensの返答

McBrideさん、 「Darl McBrideからオープンソース・コミュニティへの公開書簡」 の中であなたが私たちに行った提案は、結局のところ欺瞞、半端な真実、言い逃れ、誹謗、誤伝をごたまぜにしたものにすぎないようだ。あなたは、こんなことしかできないのだろうか? 私たちは不正の基盤の上にあなたとの妥協を築くつもりはない。

あなたは、Eric Raymondが「(SCOに対してDDoS攻撃を行った)本人から連絡を受けた」と述べておられるが、まずはこれが最初の嘘である。Raymond氏がとった行動はきわめてはっきりしている。彼は攻撃者の(直接事件に関与していない)関係者から連絡を受けたことを自ら明かし、攻撃をやめるよう要求したのであって、攻撃者の素性は知らないのである。事実、攻撃は終わり、今のところ再開されていない。その後、Raymond氏はSCOのBlake Stowellから彼の行動を感謝する電子メールを受け取ったのである。

したがって、あなたの口ぶりだと攻撃がまだ続いていてOSI代表が身内の攻撃者をかくまっているかのごとく聞えるが、それは恥知らずな嘘であるばかりか、SCO自身がそのすぐ前にとった行動とも矛盾するわけだ。オープンソース・コミュニティの人間からすると、「SCOならまあそんなとこだろう」となるのだが。誰かと本気で交渉するつもりなら、メディア向けにちょっとポーズをとって見せるのでない限り、こうした態度はやめることだ。

実際、オープンソース・コミュニティのリーダーたちはDDoS攻撃をやめさせるべく確実かつ速やかに行動をとった。このことは知的所有権のコンタミネーション(情報混入)問題でも変わらない。私たちは、明らかにされた問題ときっちり取り組むためにいつも速やかに行動している。こうした歴史はLinuxカーネルのアーカイブやその他のどこでも公衆の目にさらされており、第三者の知的所有権の主張に触れると考えるに足る十分な理由がある場合にLinus Torvaldsやその他の人々がコードを拒否している例は枚挙にいとまがないのである。

ソフトウェア開発者である私たちにとって知的所有権は商売道具である。私たちは自分の成果をお金に換えるにせよ、もっと繊細で永続的な報酬に換えるにせよ、知的所有権や著作者表示、所有権の出所をめぐる問題に無意識に敬意を払っている。私たちのライセンス(GPLその他)は著作権法とともにあり、それとは対立しない。あなたが私たちのコミュニティを野蛮にわめきたてる知的所有権泥棒のように描こうとするのは何の根拠のない破壊主義的誹謗であり、私たちはそれを拒否する。

私たちオープンソース・コミュニティは説明責任を果たしている。私たちのソース・コードは完全に公開されており、その所有権に異議を唱えたければ誰もが徹底的に調査できる。果たしてSCOやその他のクローズ・ソースベンダは同じことが言えるだろうか?クローズ・ソースコードの深部に知的所有権の侵犯や、著作権表示の剥離、処理方式の盗用などがないと誰が言えるのだろう。実際、SCOはかつてGPLで保護されたLinuxテクノロジをSCO Unixに合体すると説明していたが、UNIXの知的所有権に関する先ごろの大きな訴訟でDebevoise判事が下した裁定は、ほかの人々を泥棒呼ばわりする前にSCOは自らの行動を正すべきであることを強く示唆していた。

SCOは第三者の知的所有権の主張により生じる損害からユーザを保護していないとIBMやその他の会社を非難している。だが、SCO自身やMicrosoftなどが与えている保証の文言にベンダの責任がソフトウェアの購入価格を上限とすると抜け目なく記されていることには何故か触れていない。つまり、損害賠償に対して事実上何の保障も与えていないのである。早い話が、ユーザをだまして安全と思わせているだけだ。この類のごまかしは、ユーザのことを本当に考えた結果というよりも、私たちだけを押さえつけるポーズのように思われる。私たちオープンソース・コミュニティと協力会社は、こうしたいんちきを拒否する。

あなたは私たちに話し合いを呼びかけているが、話し合いの余地がある要求をずっと拒んできたのはあなた自身ではないのか。あなたは100万行のコードがコピーされたと主張している。しかし、それはLinuxの開発の歴史――既知の、誰にも公開されている歴史――から見て数学的に不可能である。あなたが唱えてきた途方もなく大きな共同謀議説は中傷的かつ侮辱的な部分以外は全部漠然としている。あなたは既に主要な主張――たとえば、IBMに対して当初主張していたSMPテクノロジの所有権の問題など――を断念せざるを得なくなっている。どう見ても、それらは間違っており、あなたはそれらが間違っていることを知っていたか、知っているべきだったのだ。

以上により、私たちオープンソース・コミュニティは話し合うべき正当な事由があるとは認めない。Linuxは私たちの成果物であり、法律上正当な財産であり、世界中の何十万人ものハッカーの12年にわたる勤勉、理想、創造、涙、歓喜、汗が産んだ精粋である。これはあなた方のものではない。これまでもずっとそうだったし、これからもずっとそうである。

情報混入に関してまともな申し立てをしたいのなら、私たちにコードを示すことだ。重なる部分を開示せよ。1つ1つのファイルについて、あなたが法律に違反していると思う行を個別に示し、その根拠を述べなければならない。そうすれば、私たちは法律に則って速やかに行動し、申し立てのあった法律違反のコードを削除するか、所有権の主張を封じる形でLinuxに組み込まれるように何らかの措置を講じるだろう。

Eric Raymond
Bruce Perens


編集部注:この記事に含まれる意見はEric Raymond氏とBruce Perens氏のものであり、opentechpress.jp編集部やOSDNの経営陣の見解と一致するとは限りません。また、opentechpress.jpの編集者やライターも、SCOの行動に関して執筆する(または執筆しない)よう買収または強制されているという事実はありません。opentechpress.jpとOSDNはオープンソースコミュニティの正当性を信じる擁護者であることに変化はありません。