SourceLabsに移籍したBruce Perensに聞く

更新版 Bruce Perensは、8日朝、オープンソース支援企業SourceLabsに開発者対応および政策担当副社長として加わった。同氏は、SourceLabsでの任務を「エンタープライズITとオープンソース・コミュニティの良好な関係を構築すること」だと述べているが、これには「おかしな二人」(ニール・サイモンの戯曲で、相反する性格を持った2人の男の話。映画化もされた)の趣がある。

SourceLabsには主に2人のベンチャー投資家が絡んでいるが、その1人は最近までMicrosoftのWindowsグループを率いていたBrad Silverberg、その人なのだ。NewsForgeは、7日、Perensにインタビューし、SourceLabsでの仕事について尋ねた。

Barr:Hewlett-Packardで携わっていた仕事との違いについて、お話しください。

Perens:SourceLabsに比べ、Hewlett-Packardはかなり多くの利害対立を抱えていました。その点で大きく異なります。SourceLabsのビジネスはすべてオープンソースに関するものです。ですから、私の経歴についてもかなり寛大に見てくれますが、HPは明らかに神経質になっていました。

SourceLabsには、次のような、なかなか興味深い共通認識があります。基本的に、Linuxの知名度は高く、したがってエンタープライズの世界にかなり広く浸透している。しかし、Linux以外のオープンソースについてはそうした状況にはない。エンタープライズ向けIT市場ですぐにも通用すると思われるオープンソースのソフトウェアは数多くあるが、テストが不十分だ。そのため、企業は基幹業務に採用するのをためらっている。サポートもまちまちだ。サポートするのは開発者だけということもあり、誠実に対応してくれるのはよいとしても、サポート体制は十分とは言い難い状態にある。

そこで、SourceLabsはサポート市場に目を向けます。それは、Gartnerによれば180億ドル規模の市場です。そして思うのです。「ほら、オープンソースが伸びる余地があるぞ」と。

今、SourceLabsはスタックを構成する一連のソフトウェアをリリースしサポートしています。AMP、つまりL抜きのLAMPです。と言っても、Linux上では動かさないという意味ではありません。Linuxについては、サポートの必要性はないと判断したということです。さらに、現在、サポートの必要なオープンソース・ソフトウェアの中から追加のスタックを選びリリースしようとしているところです。最初のリリースの際は、テストを大量に自作しました。オープンソース・ソフトウェアの場合、ユニットテストは行いますが、それ以上のテストはしないのが普通だからです。オープンソース・ソフトウェアに対して機能テスト、システムテスト、スケーラビリティテストを十分に行い、自社の要件を満たしていることを保証した上で公表し、サポートを提供します。ですから、SourceLabsのビジネスは、純粋にオープンソースなのです。

SourceLabsに資金を拠出したのは、Danny RimerとBrad Silverbergである。

Barr:Bradという名前を、よく耳にしますね。

Perens:MicrosoftでWindowsビジネスを率いていたからでしょう。Microsoftの前役員とこの私が、同じ会社に関わっているのですからね。Bradの意見を聞いてみたいものです。おそらく、「我々はライセンスだけに固執しているわけではない。従来型モデルでライセンスするビジネスにも投資するし、オープンソース・ビジネスにも投資する」といった趣旨のことを言うでしょう。まったく興味深いことです。何しろ、Microsoftを辞めたのは、この12月か1月のことですから。(更新)

Barr:しかし、Bradは投資家として関わっているだけですね。

Perens:投資家としての関わりです。しかし、もちろん、投資家には管理者の役目もあり、役員会にも出席します。実際、Bradとは頻繁に話をしています。Danny Rimerは、オープンソースの世界では知られている人物です。MySQLの資金に関わっていますからね。

Barr:UserLinuxもお続けになるのでしょうか。

Perens:UserLinuxも続けます。オープンソースに関する仕事は、すべて従来通りです。ですから、Debianの仕事も続けます。もっとも、Debianはすでにリリースされましたから、今はUserLinuxのリリースに力を入れていますが。この6日にSargeをリリースして、ほっとしているところです。品質は非常に高く、おそらく、どのLinuxディストリビューションよりも高品質でしょう。次期Debianのリリースは来年になると思います。

しかし、Debianベースのシステムを商用サポートする仕組みを改善する仕事が、まだ残っています。現実にサポートすべきリリースが出たわけですから、これからは本格的に取り組めます。現存しない物についてビジネスするのは実際的ではありませんからね。

今私が取り組むべき課題で最も重要なものは政策関連です。おそらく、政策課題の中で最も重要なものでしょう。それは、オープンソースをソフトウェア特許から守ることです。会社の支援を背景に、表だって取り組んでいきます。

Barr:EUとMicrosoftの対立が決着したことについて、ご意見をお聞かせください。

Perens:EUとこうした形で決着することは、ほとんどの原告が脱落したときに予想されていました。つまり、6か月以上も前からわかっていたことです。

Barr:Microsoftが原告を買収したということでしょうか。

Perens:基本的には、そういうことでしょう。たとえば、Novellは脱落したことで、大金を受け取っています。他の多くの企業も同様です。最後に残ったのはCCIAで、OSAIAという部門を通してオープンソースに関わっていました。そして、そのCCIAでさえも、辺りを見渡して「あれ、友人たちが皆いなくなってしまった」とつぶやき、金で解決することにしたのです。それで得たお金の使い道に制限はありませんから、それを元手にMicrosoftと戦うことはできます。CCIAは今もオープンソースに関わっていますが、残念ながら、今回、私たちはMicrosoftに対する本当に意味のある制約を勝ち取ろうとはしませんでした。

Barr:米国での訴訟より、少なくとも善戦はしたのではないでしょうか。

Perens:ええ、米国では政治的に動いているように思えます。George Bushが選出されたようなもので、青息吐息状態です。本当に残念なことです。しかし、だからといって、再起不能というわけではありません。

しかし、ソフトウェア特許の方が、私には気になります。欧州では、ソフトウェア特許を制度化するために多くの資金を投入する人々がたくさんいます。その中には、私たちの友人とされている企業の多くも――IBMやHewlett-Packardも――含まれています。本当に悲しいことです。

ここでは、IBMもHewlett-Packardもオープンソース・コミュニティの利益に直接反する行動をしていると思います。ソフトウェア特許を制度化するためにロビー活動をしているのですから。一方、米国では、いわゆる特許改革法案がありますが、これは米国の特許制度を欧州や日本のそれに整合させることを直接の目的とするものであり、問題点を直そうという趣旨ではありません。この法案については、今後、もっと話題になるでしょう。

Barr:ありがとうございました。

Bruceが所信を表明した文章がWebサイトTechnocrat.netに掲載されている。

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