これでわかる知的財産権の法律と規制

アメリカの文豪マーク・トゥエインは、かつてこう書いた。「神に不可能なことが1つだけある。それは、地球上の著作権法に意味を見出すことだ」。トゥエインの批評には確固たる根拠がある。新しい発想を刺激するために、政治家たちは「知的財産権(Intellectual property)」日本語版]と呼ばれる法律的な混迷の紛れもない地雷原を作り出してしまった。

知的財産権法は、論争と矛盾の不可解な塊だ。このところの多くの判決により、政府がコンテンツの製作者に知的財産権を与えることは誰もが知るようになったが、コンテンツの消費者の権利を保護するための条項も著作権法に数多く含まれていることはほとんど知られていない。訴訟に怯えることなくコンテンツを利用し、共有できるように、著作権法についてよく知ることが必要である。

今日のアメリカで知られる著作権という概念は、主にベルヌ条約(Berne Convention for the Protection of Literary and Artistic Works)、 1952年に制定されたUNESCOの万国著作権条約(Universal Copyright Convention)、1976年に制定された米国著作権法(United States Copyright Act of 1976)を基にしている。その後も多くの改正が重ねられてきた。議論の的であるデジタル・ミレニアム著作権法 (Digital Millennium Copyright Act of 1998)は、米国著作権法に加えられた最新の大きな改正であり、著作権侵害を助長する技術を禁じる法律である。

米国著作権法第106条の定めによると、米国民は、自身が著作権を保有する作品からの派生物を再現、実演、展示、デジタルによる記録、営利目的での配布、作成を行う排他的な権利を持つ。このような権利は、著作権所有者の同意により第三者に与えることができる。米国著作権法には、公正使用の原則(fair use doctrine)も明記されている。公正使用の原則とは、権利侵害に問われないための複数のガイドラインが不明瞭に集められたものである。第107条には、公正使用の原則について次のように書かれている。「(保護された作品を)批評、論評、ニュース報道、教育(学級で使用するためにコピーを複数作成することを含む)、学問、または研究を目的として使用することは著作権の侵害に当たらない」。どういったケースが公正使用なのかを判断するには、その使用目的、作品の性質、使用する作品の量、使用する部分が作品全体に占める実質性、保護される作品の市場価値に対する影響度を考慮する必要がある。

保護される作品の一部を論説、論評または批評を目的として単純に引用する場合は、引用が作品の実質にどの程度近いかにもよるが、高い確率で公正使用の範疇に入る。1985年、出版社Harper & Rowは、フォード大統領の回顧録から約300語を引用したThe Nation誌を訴え、勝訴した。この訴訟に関して、最高裁判所は、引用部分が「書籍の核心部分」であり、引用の実質性が公正使用と言えないほど大きいという理由でHarper & Rowの訴えを認めた。

多くの場合、コンテンツ消費者が何を意図するかが、判決に多大な影響を与える。保護された作品を営利目的に使用することは、営利ではない目的に使用する場合と比べて公正使用と認められない可能性が高い。作品を丸ごと複製する使用方法は、まず間違いなく公正使用とは認められない。目的を達するのに必要な量だけ使用するのが、分別のあるコンテンツ消費者の行いである。画像のサムネールは、実際の画像が合法的に表示されているWebサイトへのリンクを表すのであれば、一般に公正使用と見なされる。2000年3月、連邦判事Harry Huppは、保護されるコンテンツへのリンクは公正使用であるとの判断を示し、ハイパーリンクを図書館の書籍目録になぞらえた。他人のコンテンツを使用するときは、自分がコンテンツを使用することがどのような営利的な意味を持つのか考えてみる必要がある。抜粋したり脚色したりすることによって、作品の商品価値が著しく損なわれないか。第107条に定められた規定と過去の判決で確立された先例に照らし合わせ、公正であると裁判官に証明できるだろうか。コピー行為が権利侵害と見なされるかどうかを判断する最上の方法は、似たような判例を調べてみることだ。この記事の最後にある「詳細な参考資料」に、さまざまな判例の詳細が書かれているWebサイトへのリンクを紹介した。

公正使用の域を超える使用が必要な場合は、コンテンツの使用許可または商用ライセンスをいつでも打診できる。丁重かつ外交的に振舞うことが重要だ。使用したいもの、使用したい範囲、使用したい状況をはっきりと説明できれば、コンテンツを無償で使用することが許可される可能性は大きくなる。コンテンツの作成者は歩み寄りの用意があるかもしれないし、条件を追加することを望む可能性もある。コンテンツの作成者が、要望された作品より目的に合う別の作品を提案することもありうる。コンテンツの作成者と契約するツテがない場合は、Copyright Clearance Center(CCC)で調べる手もある。CCCのWebシステムでは、著作権で保護される膨大な数の発表物の使用が、使用回数単位の課金制度により許可される。

仕事を充実させるためのコンテンツを探す場合、私は最初にパブリック・ドメインの領域にコンテンツを探す。パブリック・ドメインのコンテンツは、著作権法の保護下になく、実質的にどのような目的にも使用できる。作品がパプリック・ドメインにあるかどうかを簡単に確認できないこともある。長年の間に法律の改正が数え切れないほど繰り返されているからだ。

1923年より前に発表された作品は、現在はすべてパブリック・ドメインに含まれる。1923〜79年に発行された作品は、著作権表示が書かれている場合に発表日から95年間保護される。ただし、1923〜64年に発表された作品に関しては、著作権所有者が著作権を更新していない場合、28年しか保護されない。1978年より後に発表された作品は、作品が発表されたかどうかに関係なく、コンテンツの製作者が死亡した日から70年間保護される。1979年より前に作成された未発表の作品は、現在はパブリック・ドメインに含まれる。

現在では、作品が発表されていたり、なんらかの著作権記号が付けられていることは必須ではなく、1978年より後に作成されたすべての作品が著作権法の保護下にあることに注意する必要がある。

頭はまだ爆発していないだろうか?

幸いなことに、著名な法律家Laura Gasawayが、このような不明瞭な規定を読みやすいにまとめてくれているので、これを見ると事情ははるかに単純になるはずだ。

パブリック・ドメインであることがわかっているコンテンツを探すために参照できる場所が、いくつかある。一番有名なのは、Project Gutenberg Webサイトだ。このサイトでは、幅広い分野に及ぶパブリック・ドメインの文学書を各種の形式でダウンロードできるほか、パブリック・ドメインの楽譜、同組織のRadio Gutenbergサービスによるオーディオ電子ブックも入手できる。

また、さまざまなオープンソース・ライセンスの下に使用が認められるコンテンツも、膨大な量が存在する。このようなオープンソース・ライセンス(「コピーレフト」ライセンスとも呼ばれる)の下にリリースされるコンテンツは、無断で自分の作品に組み入れることができる(ただし、その作品を互換性のあるライセンスの下にリリースすることが条件となる)。

オープンソース・ライセンスについては、Creative Commonsサイトに詳しい解説がある。このサイトには、必要なライセンスの条件に合致するコンテンツをすばやく見つけるのに役立つ検索エンジンが用意されている。研究用の素材が必要な場合は、Wikipediaが素晴らしい情報源である。Wikipediaは、GNU Free Documentation License下での利用が認められる巨大なデジタル百科事典だ。Wikimedia Commonsは、36,000を超えるコピーレフトのメディア・ファイルがさまざまな形式で含まれるコンテンツ・リポジトリである。コピーレフトのコード・ブロックを探す場合には、SourceForgeまたはKodersで検索を実行する。

知的財産権と公正使用について、Rosenlaw & Einschlagの弁護士であり、『Open Source Licensing: Software Freedom and Intellectual Property Law』の著者であるLawerence Rosenと意見を交わした。彼の見解では、コンテンツの特定の部分がパブリック・ドメインにあるかどうかを見分けるために多くの要素を計算に入れなければならないことから来る混乱が、著作権法の最も手ごわくてややこしい側面である。1999年、彼は著作権法の多くの側面(パブリック・ドメインの判定を含む)をわかりやすくまとめた論文を発表した。そこには、“Bits of History Project”に関連する法的な問題点が詳しく書かれている。

Rosenは、公正使用を守るという文脈における「公正」の法的な意味と「口語的な意味」との矛盾から大きな混乱が生まれていると考える。このテーマは、「なぜ公正使用は常に公正であるとは限らないか」について解説する記事で論じられている。

また、公正使用は権利侵害に対する防御であることを彼は強調する。権利侵害行為に加担した場合について、彼はこう書いている。「自分を守るために主張できることが2つあります。1つは、ライセンスを持っている、という主張。もう1つは、権利侵害は公正使用である、つまり『確かに侵害しました。作品のコピーまたは派生物を作りましたが、それは公正使用の原則の要件を満たすためでした』という主張です。ですから、公正使用は権利侵害への防御なのです」。

詳細な参考資料

個人の公正使用に関する具体的な判例については、Indiana大学でまとめられた便利なリストを参照するか、FindLaw.comの判例摘要を検索するとよい。コンテンツ消費者の権利については、Chilling Effects ClearinghouseサイトElectronic Frontier Foundationの Intellectual Property Law Sectionが詳しい。著作権全般については、Rosenの発表物U.S. Copyright Officeサイトを参照することをお勧めする。

Ryan Paulは、カリフォルニア州Oak Park在住のフリーランスのライターである。

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