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Debian Project、GPL3を詳細検査

2006年01月30日 11:28 Bruce-Byfield(2006年1月25日(水))
1月16日に改定GNU General Public Licence(GPL3)の第1次草案が発表されたが、その会場にはDebianプロジェクトのメンバーも多数出席していた。DebianプロジェクトのリーダーBranden Robinsonをはじめとして、Don Armstrong、Benjamin Mako Hill、Bruce Perens、そしてボストン地域のDebianメンバー数名である。以来、Debianではこの草案についての議論が続いており、まだ意見の統一には至っていない。しかし、草案の細部の言い回しや含意について懸念を示す意見はあるものの、概ね肯定的に見ているようだ。

議論の大部分は、Debian Free Software Guidelines(DFSG)――ディストリビューションとして配布可能なパッケージを決定する際に適用される規定――との整合性を巡るものである。Debianとしては今後の草案改訂手続きで大きな役割を果たしたいと考えているようだ。もっとも、今回発表された第1次草案において、すでに何らかの役割を果たしていたにちがいない。

GPL3について、Branden Robinsonは、当初、懸念を抱いていたと言う。「第1次草案の作成過程が不透明だったため、とてもヤキモキさせられました」。その上、DebianにはGNU Free Documentation Licence(FDL)を忌避した過去があるため、GPL3も同じように論争になるのではないかと心配していたのだ。

「嬉しいことに、杞憂に終わりました。大きな変更点も細かな変更点もいいですね。ずばり、気に入りました」

GPL3草案ではdebian-legalメーリング・リスト上の議論で問題になった曖昧さが解消されていると、Robinsonは特に指摘している。「それらがDebianが最初に指摘したものかどうかはわかりませんが、この第1次草案を見て、Free Software Foundationがコミュニティの主張に真摯に向き合おうとしてきたことを再確認できました」

RobinsonはGPL3草案で追加されたライセンスの整合性に関する第7条を取り上げ、この規定はGPLと両立可能なライセンスを判断する明確な指針になると述べた。これでようやく「3つの条文から成るBSDライセンスが、文面上からも明確にGPLと両立することになるでしょう。Free Software Foundationの解釈でそうなるというのではなくね」

残る不整合能性

このようにDebianメンバーの反応は概ね肯定的ではあるが、GPL3をDFSGに完全に整合させるためには草案の変更が必要だとRobinsonらは見ている。Nathanael Nerodeは、debian-legalメーリング・リストに意見を幾つか寄せ、GPL3草案の文言について多くの変更を提案している。ほかにも、ソフトウェアの配布に地理的制約を課すことがソフトウェアの自由に及ぼす影響や、DFSGの下ではフリーとは見なされないであろう方法でもGPL3が適用できる可能性――新しいDebianリリースを編成するのは今でも厄介な仕事だが、それが大幅に複雑化するかもしれない――などがdebian-legalで指摘されている。同様に、GPL3草案第7条が派生利用に課す制約がDFSG第3条に抵触する可能性についても、Robinsonらは問題点として指摘している。DFSGは、第3条で、ライセンスは派生品に対して「オリジナルソフトウエアのライセンスと同じ条件の下で配布する」(http://www.jp.debian.org/social_contract#guidelinesより引用)権利を認めなければならないと規定している。

最大の問題点は、おそらく、デジタル著作権管理に関して追加された第3条だろう。ほとんどの利用者は、Robinson同様、スパイウェアなどの「不法に利用者のプライバシーを侵害する」ものに対する制約を歓迎するかもしれない。しかし、この規定が乱用される可能性を心配する利用者も少なからずいる。Robinson自身は、ライセンスで著作権に直接関わる領域を越える問題まで扱うことの前例になるのではないかと懸念している。第3条が、Robinson言うところの「反体制派テスト」――つまり、少数派や非合法な見方をする人々を攻撃する根拠とされないか――をパスしないかもしれないと述べた。

DebianメンバーのBas ZoetekouwJosh Triplettらは、先鋭的な市民権擁護論者としてGPL3草案第3条に反対している。Zoetekouwは、この規定がDFSG第6条に抵触すると主張する。DFSG第6条は「ライセンスは、人々が特定の目標分野でプログラムを利用することを制限してはいけません」(http://www.jp.debian.org/social_contract#guidelinesより引用)と規定している。「テロリストのコード利用を許し、生物兵器の研究に使うことを許すのなら、ブラックハット・ハッカーがスパイウェアを作るために利用することも許されねばなりません」。Triplettも同意見だ。「フリーソフトウェアの理念に例外を設けるとすれば、(スパイウェアなどは)まさにそれに相応しい対象です。しかし、そうするのは誤りです。私たちの原則的立場を弱体化させるだけで、得るものは何もありません」。つい幻惑されてしまいそうになるが、そのような制約はDebianの中心的理念と真っ向から対立するものだろう。

GPL3に対するDebianの影響力

Robinsonの意見も含め、こうした意見は、いずれも、改定GPLに対するDebianの公式見解ではない。公式見解は、草案の最終版が出るまで待たねばならないのだ。

とはいえ、Debianメンバーが表明した意見の影響は、Debianコミュニティの中だけには留まらない。Debianは最大級のフリーソフトウェア・コレクションであり、ここから多くのコミュニティ・ディストリビューションや商用ディストリビューションが生まれている。そのため、Debianの見解は改定GPLの普及に大きな影響力を持っている。

その上、GPL3に対する意見聴取は、これまでのところコミュニティ・リーダーにほぼ限られている。最終草案をまとめる際には広く意見を募集するだろうが、現時点では、草案について公開で議論できる場と言えば、まずDebianプロジェクトなのである。Debianプロジェクトには、利用者が意見を表明できるようにRobinsonが草案の発表前から設けているdebian-legalおよびwikiがある。言い換えれば、Debianから発せられるGPL3に関する意見は、大方のものよりも民主的に寄せられた意見だと言えよう。

そして、まさに重要な点は、Free Software Foundation(FSF)を除いて、Debianがソフトウェアの自由を規定する者として、近年、大きな存在になっていることである。Robinsonが語っているように、「DebianはFree Software Foundationの追従者ではなく、そのライセンスを無批判に受け入れることはありません」。それ故に、新しいライセンスの起草者たちはこぞってDebianとFSFの門前に列をなしてきた。DebianとFSFの承認が得られれば、そのライセンスのフリーとしての性格に疑問の余地はないという感覚があるのだろう。

ともあれ、GPL3に関するDebianの議論はコミュニティにおける審問官と見ることができる。実際、非公式ながら、すでにFSFを相手にその役割を演じているようだ。DebianがGNU FDLを忌避して以来、この問題を解決するためにFSFはDebianと話し合いを続けてきた。そうした話し合いの結果は公表されていないが、GPLの次にFDLの改定が予定されている主たる理由はこの辺りにあると思われる。また、GPL3草案第5条c項のコレクションに関する規定など、草案の文言の中にはそうした場での議論がおそらくは反映されているだろう。

DebianでGPL3を論じている人たちのほとんどは、法律に関する専門知識を持っていない。しかし、多くは長年ライセンスを調査し、自身が管理するパッケージに適用してきた人たちである。今後1年の間に彼らが展開するであろう議論は、GPL3が受けるべき審問の中でもきわめて網羅的で専門的なものにちがいない。

Bruce Byfieldは、研修コースの開発者でありインストラクター。コンピュータ・ジャーナリストでもあり、NewsForge、Linux.com、IT Manager's Journalの常連。

原文

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最終更新:2007年07月01日 19:05