勢いづくXグラフィックス

カリフォルニア州サンタクララで開催されるX.Org Developer’s Conference(XDevConf)に何とか間に合うよう、NovellはX.orgプロジェクトのためにXglフレームワークの改良と共にCompizコンポジット・マネージャをリリースしようとしている。

XglはOpenGL APIベースのXサーバー・アーキテクチャと位置づけられ、ハードウェアによるエフェクト・レンダリングを実現する。Compizコンポジット・マネージャは、簡単に言えば、Xglで実現される新たなエフェクトを追加するプラグインのためのウィンドウ・マネージャだ。

Nat Friedmanによれば、NovellのXglアーキテクチャは描画モデルをラスタモデルからベクタモデルへ移行するもの、今後10年から15年は実用に耐える「最新の」グラフィックス・モデルを提供するものだという。「当面これで大きな懸案事項は消えるので万事うまくいくだろう。この機能を提供するもうひとつのOSはMac OS Xだけだ。理由は、ハードウェアと密に結び付いているからだが、我々がやっていることもハードウェアを利用しているに過ぎない。Windowsはこれがまだ欠けている。我々としては、3Dグラフィックス・アクセラレーションの世界をプロプライエタリ・ソフトウェアに譲るつもりはない」

コミュニティへのお返し

NovellのDavid RevemanがX.orgリストでXglの開発を発表したのは2004年11月。その後、彼はほぼ一人でこのプロジェクトと取り組んできた。そのことが開発者の間でちょっとした論争を巻き起こした。12月、KDE開発者のAaron Seigoは、Novellの開発が「コミュニティからまるで隔たっており、密室で事が進行している」との私見を披露した。

Xglの開発がコミュニティ・プロセスから外れたところで進行していることに何人かの開発者が不満を表明した。開発者の取り組むオープンソース・プロジェクトが正規の経路から外れていると、しかもそれがソース・リポジトリの外で進行していると、2つのコードベースをマージするとき面倒なことが起こる可能性がある。たとえ会社がソースコードを丸ごと寄贈したとしても変更を統合するとき手を焼くことになる。

あれこれ突っ込まれ、またOSDL Desktop Architectsリストの論争を受けて、FriedmanはNovellがXDevConfに間に合うようコードをリリースしようと目論んでいることを明かした。「ほぼ実用段階のものを見せてあっと言わせる」というのだ。

「そうすれば、Xglが大々的に取り上げられ、これまで1年以上にわたって開発の責任を担ってきたNovellはその功績を認められる」

先月、RevemanはXglコードをX.org CVSに登録すべくリリースしたが、Compizはまだリリース段階でなく、XDevConfに間に合うようリリースすると表明していた。明日、彼はXDevConfでXglのプレゼンテーションを行うことになっている。

この種の交流はオープンソース・コミュニティに特有なものだとSeigoは指摘する。「クローズソース環境で、こうしたことはまず起こらない。せんないことだが、Microsoftに出向いて、『君たちがVistaを開発しているそのやり方が気に入らない。Windowsのプレゼンテーション層を開発者がもっといじれるようにすべきだ』と言ったところで、『あんた誰』と一瞥くれてお仕舞いだろう」

いろいろあったが、結果的にとても満足しているとSeigoは言う。「Novellの貢献はコミュニティに還元されようとしており、コミュニティはこれに再び参加できる。コミュニティ側の開発の言質も得ている」

XglはLinuxデスクトップに魅力的なグラフィックスを提供するだろうが、Friedmanは「Xglの妙味が3D自体にあるわけではない」と言う。「それよりも3Dハードウェアのアクセラレーション機能を利用して、Linuxデスクトップの処理をもっと効率化することに意義がある」

たとえば、Xglでアニメーションの動きを滑らかにし、デスクトップを「より自然」にすれば、Linuxデスクトップの使い勝手が向上する。Friedmanは、Xglが実現する新たなデスクトップ・メタファーでデスクトップはより使いやすく、わかりやすいものになるとも指摘する。

最終プロダクトでない

ところで、XglとCompizはまだ本格投入というわけではない。Friedmanによれば、今回のリリースは主に開発者と新し物好きをターゲットにしている。Novellは他の開発者がこのテクノロジに貢献し、Compizフレームワークのプラグインを開発してくれることを期待しているという。

エンドユーザーは「code 10」(次期のNovell Enterprise Desktop)でXglとCompizを体験することになる。「Novellの次期Linuxデスクトップを手に入れれば付いてくる。他のLinuxベンダも遠からず自社のLinuxディストリビューションへの組み込みに着手するだろう」とFriedmanは言う。

Seigoによれば、XglテクノロジのKDE 4への組み込みは難儀しながらも進行しているはずという。今やXglが手元にあるので、KDE開発チームはXglをKDE 4に組み込むための時間がたっぷりある。今年の終わり辺りを目標にしているようだ。

Xglの機能を発揮させるには高額のビデオカードが必要と思われるかもしれないが、FriedmanによればXglのビデオ要件は穏当なものである。「今日ではたいていの人が持っている。Intel、ATI、Nvidiaの普通のカードだ。Xglは、ポリゴンやテクスチャ・マッピングなどの基本的な機能があれば十分で、それほど多くを求めない。800ドルもするビデオ・カードは必要ないのだ」

Xglは旧版のXアプリケーションでもそのまま動くので、お気に入りのアプリケーションがもう使えなくなるといったことを心配しなくても済む。

興味があるなら何も今年の終わりまで待たなくても、実際にXglが動いている様子を見ることができる。Novellの提供するXglのビデオでは、透明なウィンドウやアニメーション、立方体の各面にマップされた仮想デスクトップがデモンストレートされている。運がよければ、Xglの開発が加速し、今年の終わりまでにデスクトップからさらに多くの物を得ることになるだろう。

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