トラブルを呼ぶBruce Perens氏

かつては強気な発言と実行力でコミュニティの原動力となったLinux支持者のBruce Perens氏だが、今では貢献がないどころか、悪くすればトラブルの元凶であってLinuxの成功の妨げになっているともいえる。

先週、Perens氏からNewsForgeに対して、あるブログエントリ掲載の依頼があった。ドメインレジストラがユーザの新規登録ドメインを保管できる場として、あらゆるオープンソースソフトウェアを利用したサイトを提供するというOpenSourceParking.comのアイデアを彼自身が発表したブログエントリだ。一見、立派そうなアイデアだが、実は途方もない時間とエネルギーの無駄遣いに過ぎない。

まず、この活動の背後にある動機からして疑わしい。Perens氏は次のように主張している。ドメイン登録業者Go DaddyがApacheとLinuxの環境からMicrosoftのWindows Server 2003に乗り換えた結果、Netcraftが報じる市場シェアが5%も動いた。この報告は「当然、管理職の判断に影響を与えるはずだ」と。この主張を私は疑問視している。IT系の管理職が設備の注文書にサインする前にどれだけ市場シェアの数値をチェックしているかは知らないが、購入製品の候補を挙げる際に市場シェアは大きな要因にはならないはずだ。むしろ、機能とパフォーマンス、そしてコストが購入の決め手になるだろう。

しかし、ここで問題なのは、1つの製品の市場シェアがたった1社の決定によって5%落ちたことではない。本当の問題は、Perens氏の新たなプロジェクトの検証に手を貸すくらいなら、コミュニティにはもっと有意義な時間の使い方がいくらでもある、という点だ。

OpenSourceParking.comは面白いアイデアではある。だが、ほとんど誰も利用しないだろう。ドメインパーキングのサービスは、ドメインレジストラたちの間で自然に発生する。また、エンドユーザは、自分のドメインがどのソフトウェアで保管されようとそれほど気にしない。こうして考えてみれば、ほかのどのページとも違わないただのWebページに過ぎないことがわかる。結局、このプロジェクトを成功させるには、このサイトとネームサーバを利用してもらえるようにPerens氏がレジストラを説得しなければならないのだ。だが、大多数のレジストラは、むしろ自前のサイトとネームサーバを使いたがるだろう。そのほうが管理が行き届くだけでなく、そもそもビジネスへの影響が大きなこの手の要素は、自ら管理する必要があるからだ。

彼に関する問題がこのプロジェクトだけなら、やれやれ、と首を横に振って済ませることもできたのだが、もう1つ困った事実がある。UserLinuxのことだ。2年前に私が参加した会議、Desktop Linux ConsortiumにおいてPerens氏は、Debianベースの新たなコンシューマ向けディストリビューションを開発するつもりだ、と発表していた。そのときの内容を読み、現在の彼の発言と比較していただきたい。

資金提供者について名前を伏せて言及した当時の発言と、今になって当時の自分を「独立起業家」だったと説明する矛盾は、信用問題につながる。私は、当時でさえ、むしろ優れた既存ディストリビューションの1つに向かってコミュニティがまとまる必要があるのに、また新しいディストリビューションを出す必要性がどこにあるのだろうか、と感じていた。活動が分散するのはコミュニティにとって大きな問題だ。しかし、Perens氏の言動がその問題を悪化させている。UserLinuxに関する彼の発表は、リリース前に新製品の魅力的な機能を宣伝して競合他社の売り上げを鈍化させる、というほかの企業の手口と同じものだった。

同じく最近のPerens氏のインタビュー記事を読んで驚いた。「Linuxの各種ディストリビューションは、現状のままでは営利目的の企業には向かないだろう」などと発言しているのだ。これは、Ubuntuにとっては大きな痛手だ。このディストリビューションは、まさにUserLinuxが目指そうとする企業向けの領域で成功を収めているからだ。オープンソースコミュニティで認知されているわずかな人物の1人からこうした発言が出たことは、反Linux勢力を大いに喜ばせたに違いない。たとえその誤りを正すのがどれほど容易であったとしてもだ。ちなみに、NewsForgeでは企業のLinux導入事例を毎週調査しているが、そこから導かれるのは彼の発言とは正反対の結論だ。

Perens氏との個人的な面識は私にはなく、彼に釘をさせるような立場にはない。それに、コミュニティに対するこれまでの彼の貢献の大きさは、私の比ではないのも確かだ。有能な活動推進者なのだが、最近では彼自身の存在が前面に出るばかりで活動の多くは空回りしている。とにかく、現在の彼はコミュニティに貢献しているとは言い難い状態にある。

Lee Schlesinger氏はNewsForge.comのエグゼクティブエディタを務めている。

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