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知的財産推進計画2006によせて(1)

2006年07月07日 09:00 真紀奈
最近は日経など一般紙でも取り上げられるようになってきた、著作物に関する権利の「二階建て制度」案。その立案にも関わって来られたバーチャルネット法律娘 真紀奈17歳に、解説を執筆して頂いた。

 2006年6月8日、知的財産推進計画2006が発表されました。  これは2003年以来毎年出されている、政府の知的財産戦略の目標・内容についてまとめたものですが、今年は知的財産戦略の第二期のはじめということで、「世界最先端の知財立国を目指す」ことを目標としているとのことです。

 「知的財産」というだけあって、この計画には特許から商標から、知財に関わるあらゆるものが対象とされています。なぜか日本食人口の倍増という目標もあって、「そうか、日本食も知的財産だったんだ」と真紀奈もびっくりしていたり…。言われてみればそうなんですけど。

 これから何回かに分けて今回の計画について書こうと思っていますけど、150頁を超えるものですし、とても全部は語れません。今回は、真紀奈が最も興味を持っている、コンテンツ分野を中心に書かせていただこうと思っています。

 さて、今回は第1回として真紀奈が最も興味を持っているものをとりあげましょう。多分、一般的には無視されていると思われるものですが、これが一番可能性を秘めていると真紀奈は思っています。

デジタル化時代に対応した法制度を構築する

知的財産基本法第18条第2項の趣旨に則り、2006年度中に、デジタル化・ネットワーク化時代に対応した国際的な枠組みを含めた法制度の検討を行い、コンテンツ流通の促進やクリエーターへの還元を進め、創作活動の活性化を図る。(総務省、外務省、文部科学省、経済産業省)p102

 「デジタル化・ネットワーク化時代に対応した法制度」、これは真紀奈たちが以前から主張していた、二階建て制度(後述)を実現するために使える条項なのではないかと考えています。以前からも似たような提案はあったと思いますが、真紀奈が書いた二階建て制度の初期案は、2004年に公開されたこの記事になります
 実は、今年の3月末に行われていた知財戦略に関するパブリックコメントには、複数の団体から、このような感じで著作権とは別の制度を作るという提案が提出されています。ですので、今回の知的財産推進計画2006にこのような内容が載ったのは、そのせいではないかと思っていたりもするわけです(真紀奈も出させていただきました。個人からの意見で真紀奈の名前を検索してみてください)。  最近では6月30日の日経新聞朝刊「経済教室」や、7月2日の日経新聞朝刊1面「試される司法」などで、新しい法制度の構築についてとりあげられていますが、知的財産推進計画2006にこの条文が載ったというのは、こういう議論の根拠として使えるという意味でも大きいなと思っているわけです。

 さて、それでは二階建て制度というのはいったい何をしようとしているのか、何に役に立つのかということですけど、これは簡単に言えば、著作権法とは全く別の制度を作って、商用目的のコンテンツについてはそちらで守るようにしてはどうか、というものです。  登録制にする代わりに、著作権法よりも強力な保護を与えるというものになりますね。むやみに著作権の範囲を拡大することなく、商用のコンテンツの保護をできるようにするということになります。
 まあ、実際の保護の内容については各団体毎に主張している意見がばらばらで、まだ議論の余地があるわけですけど。  ちなみに真紀奈の現在の主張としては下記のような感じでしょうか。あ、提出したものや、以前のものとは一部変わっています。

  1. 新権利は登録と同時に発生する。同時に、著作権法の保護下からははずれ、著作権との二重の保護体制にはならない。
  2. 権利期間は5年だが更新を行うことができ、更新を続ける限りにおいて守られる。
  3. 登録及び更新には費用を必要とする。登録料・更新料は別途政策的に決定(更新料は回を追う毎に増加させる)。
  4. 更新回数の上限は政策的に決定(著作権の保護期間と一致させる必要性は必ずしも無いと考えられ、別に上限は300年等でもかまわない)。
  5. 保護の範囲はデッドコピー及び複製といえる範囲、そして二次利用については   著作権法に準じた範囲を保護する。
  6. 登録の際に窓口を設定し、使用を申し込まれた場合の対応を可能にしておく。
  7. 条件が合わなかった場合、登録機関の定める一定料金(使用範囲、目的等によって増減)の供託により、使用を可能とすることに、登録者は合意しなければならない。
  8. 3-step-test(※)を満たす範囲の使用については、無償で許諾するものとする。
  9. 3-step-testを満たさなくなった場合、原権利者は二次使用者に対して、二次利用の収益から自らが得られるはずであったはずの利益を得ることが出来る。差し止めの権利は与えない。利用当初から3-step-testを満たしていない利用の場合、収益を超えて賠償を得ることが出来る。
  10. 登録により発生している権利なので、侵害については非親告罪とする。二次利用については判断が難しいため、非親告罪化しない。

 著作権法は無方式主義をとっているため、どんなコンテンツも一律で強力に守られてしまいます。権利を拡大すれば、守る必要のないコンテンツまで、一緒に強力な保護が与えられてしまうわけです。
 ただ、商業的な作品を守る必要性についてはわかりますから、このような形にしてはどうかと考えているわけです。この制度側に移ると、更新さえすれば著作権をかなりの期間守れるようになります。そして、デッドコピーについては非親告罪化されます。
 その代わり、二次利用については認めなくてはいけなくなり、差し止めではなく、報酬請求権で構成されることになるという提案です。ただ権利を強力にするわけではなく、流通の活発化等も同時にできるようにしようというわけですね。

 このような提案について、みなさんはどのように思われますでしょうか?  今年1年、このような案についての提案や議論が行われることになると、真紀奈は予測しています。というか、このようなチャンスはそんなにないのですから、今回の計画にあわせて議論を行うべきだと思っています。  現在、著作権法の改正についてのパブリックコメントが行われているところですが、そのようなところも含めて、色々と提案を出してみていただけないでしょうか。真紀奈も提案を出していきたいと思っています。

 たとえばコンテンツ分野だけではなくて、ソフトウェアについて特別法を作ろうという提案も可能だと思っています。かつてプログラム権法という提案がありましたが、その復活を目指すというのもありかな、と。  著作権ではなく、そして特許でもなく、別の制度でプログラムについて、より使いやすい形で制度を作ろうという提案も可能なのではないかと思っているわけです。

 多分、真紀奈の提案では足りないところもあるでしょうし、これでは動かないという意見もあると思います。そういう意見を真紀奈に向けるだけではなく、政府に対しても送ってほしいわけです。  だって、コップの中で議論を戦わせても、実際に法律を決める人のところに意見は行かないのですから。実際の政策担当者や、国会議員に対して意見を送り、採用されるにせよ、されないにせよ、こういう意見が存在するんだということは伝えなくてはいけないと思っています。

 さて、1回目から解説だけでなく真紀奈の説を述べまくっているわけですが(笑)、次回以降もこうなるかもしれません。  第2回では、竹中総務大臣の懇談会等でも話題になった、IP放送についてとりあげることにします。

※3-step-test 著作権の国際条約の大本であるベルヌ条約で、権利の制限を行っても良いかどうかを判断する際に利用している方法です。下記の3つの条件を満たしていれば、その利用法については、各国が権利の制限を行うことを認めるというものです。

  1. 著作物、実演またはレコードの通常の利用を妨げないこと
  2. 権利者の利益を不当に害しないこと
  3. 特別な場合(certain special cases)

日本の場合、これを満たしている利用法について、具体的な規定をつくって条文においているわけですが、そうではなくて、こういう行為であれば全般的に認められるようにしても良いのではないか、と思っていたりするわけです。フェアユースを置いてみては、ということですね。

最終更新:2007年07月01日 19:05