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FOSSのサポータは消費者運動家となるべきなのか?

2006年08月02日 11:26 Bruce-Byfield(2006年7月29日(土))
解説:極めて当然のことながら、フリーおよびオープンソースソフトウェア(FOSS)コミュニティのメンバは、自分たちが単なるソフトウェアやハードウェアの専門家の集団ではないことを自ら実証している。またこれらの人々は、己の仕事の品質に対するプライドと倫理観を共通にする仲間を代表し、自分たちの姿勢を明確化するという活動を積極的に行ってきた。いわゆるコンピュータオタクとしてステレオタイプ化されたイメージとは異なり、多くのメンバは自分たちが果たすべき責任を政治や社会活動の場に反映させてきたのだ。その一方で企業サイドの多くはFOSSに対するサポートをどうすべきかの態度を決しかねており、一部の企業はデジタル著作権管理(DRM:Digital Rights Management)などの規制テクノロジの導入に傾きかけているという現状を鑑みると、今や必然的な次の一歩を踏み出す時が到来したのかもしれない。つまりFOSSのサポータが、消費者運動家として活動し始める時期のことだ。それは、企業や組織が世に送り出している製品やそれらの活動方針に対して、FOSSの倫理観を下にした吟味を行い、その結果を公式な賞賛なり非難として表明するという活動である。

FOSSのサポータがコンピュータユーザの中で少数派であることは厳然たる事実である。中核的なサポータの数は、おそらく全コンピュータユーザの5%程度に過ぎないであろう。その他、ごく間欠的にFOSSに関わる人間を含めたとしても、その数が15%を超えることはないはずだ。ところがこうした人々の持つ影響力は、これらの数から連想されるレベルに収まるものではなく、より大きな存在となっている。そうした理由の1つは、ある程度詳しいユーザという枠組みで見てみると、彼らはその半数以上を占めているという事実に由来する。これらの人々の多くは、複数のコンピュータを所有している関係上、個人的な消費活動における購買力において平均的なコンピュータユーザを凌駕しているのだ。また企業においてITマネージャという肩書きを有す者であれ、近所の人々がホームコンピュータを設置する際の頼りになる相談者であれ、これらの人々は、新規に製品を購入する消費者に対して非常に大きな影響を及ぼす立場にいる。こうした状況を改めて見直してみると、FOSSのサポータたちは、一般の人々よりも遙かに大きな影響力を潜在的に有していることが分かるだろう。残された唯一の問題は、そうした力を実際に行使すべきか否かなのだ。

仮に行使するのであれば、今こそが自らの姿勢を示すべき絶好の機会かもしれない。世紀の移り変わりを転機として、コンピュータ産業全体が体験してきたのは、フロンティアの終焉とでも呼ぶべき時代であった。当時は無限に続くかと思われていたヨーロッパ人による西進活動は、19世紀を迎えるに至って北米大陸の全域に開拓者が定住しきることでその終焉を迎えたが、それと同様に、かつては永続するかと思われていた1985年から2000年にかけてのコンピュータ産業の一大成長期も結局は勢いを失い、今は停滞の時代に突入してしまっている。またソフトウェア製造業においても、アップグレードによってユーザを囲い込み続けるために不可欠な新機軸のアイデアが枯渇し始めているのが現状だ。ハードウェアベンダに至っては、すでに新規購入者ではなく既存ユーザによる買い換え需要に大きく依存しており、その理由は極めて簡単で、先進国の住民はもはや誰でもコンピュータを所有しており、まったく新規の購買層を見いだす余裕など残されていないのである。またかつては、Microsoftの定める仕様を中心にデザインを進めるという伝統的な戦略が成立していたが、市場の断片化が進行していることと、Microsoft自身が開発方針上の不整合性を抱えているため、現在そうしたやり方は立ちゆかなくなりつつある。今や業界全体が、決めてとなる次なる一歩の到来を期待しているのだ。あるいは、一時期熱狂的にもてはやされたドットコム企業やiPodなどは、ごく短期間ながらそうした役割を果たしていたのかもしれない。もっとも最終的にこれらが席巻できたのはごく狭い市場でしかなく、売り上げや収益の欄に記された数字も限定的なもので終わってしまった。

こうした状況下に追い込まれたソフトウェアおよびハードウェア企業は、今や自らの生き残りに役立ちそうなあらゆる可能性に目を光らせている。そこで1つの仮定だが、これからはオープンスタンダードやFOSSをむしろ積極的にサポートするようにし、非競争化を蔓延させたり個人情報を侵害するDRMなどのテクノロジを否定するようにすれば、巨大な影響力を有す消費者グループからの支援を受けることが可能であり、同時にコーポレートシティズンとしての義務も果たすことになるではないかと、どこかの企業が気づいたとしたらどうだろう? 彼らは、こうした考え方について真摯な態度で検討を行うのではなかろうか。たとえばセールス面でIntelの後塵を拝し続けているAMDのように、業界における第二集団を形成している企業群にとって、こうしたアピールは魅力的に響くに違いない。もっとも市場占有率から見た場合、こうした活動の生み出す影響はせいぜいが数パーセント程度のものでしかないだろうが、また一方でこれだけの数字は、この業界の市場において無視し得ない存在なのも確かである。FOSSとは倫理の投資信託会社とでも言うべき存在であり、その理念に即した製品が市場の大部分を占有することはないかもしれないが、1つの忠実なカスタマ集団を形成する可能性は残されているのだ。

もっともFOSSサポータの多くは、すでにある程度の消費者運動家的な活動を行っている。Slashdotに対する企業側の活動に憤る心をもった何人かの人間が、その企業のボイコットを呼びかけるかもしれないし、それを賞賛し、サポートする人間も何人かいるだろう。仮にFOSSのサポータたちが、自分たち自身で選んだオペレーティングシステムを運用することを望むのであれば、必要なドライバの見分け方すらおぼつかないのでは話にならないため、必然的に自らが賢い消費者にならなければならない。ここで私が提案しているのは、より組織化された活動の必要性であり、例えて言うならFree Software Foundationの展開するDefective By Design(発想からして欠陥)キャンペーン的なものであって、実際この活動は過去3カ月間においてデジタル著作権管理のテクノロジに反対する7,000名以上のメンバを集めている。

ここで必要になるのは、これまでと同じ路線を踏襲しつつ、若干の活動を追加することである。たとえば、特定の組織あるいは複数の団体が公式Webサイトを運営しているのであれば、そのスペースを一部割いて、Open Source Development LabsやLinux Standard Baseなどのコミュニティからのコメントを責任を持って代弁するというのはどうだろうか? あるいはプロジェクト側からの積極活動として、ラックマウントサーバのケースに貼り付ける「Recommended by the Apache Foundation」(Apache Foundationからのお墨付き)というステッカーや、「Supports Debian!」(がんばれDebian!)という文字を刻み込んだパーソナルコンピュータを用意するというのはどうだろう?

一部の人間は、FOSSサポータとは現実主義者たちの集まりであり、現状の改革や自己主張などの活動には関心が薄く、机に向かって自分の仕事に没頭しているだけの人間たちだと見なしている。そうだと言うならば、職場では連日コンピュータ画面に向かって8時間以上のルーチンワークをこなし、自宅に帰っても電子メール、プログラミング、ゲームで余暇の大半をつぶしているという人間がいったい何人存在しているのかを考えてみよう。コンピュータとは現代生活の中に非常に深く浸透しているが、だからといって人間の生活がコンピュータに牛耳られてはいけないのだ。仕事をする際の倫理観や効率性を無視するということは、勤務先の給与体系や福利厚生制度を無視することに等しく、これらはいずれも職場環境を構成する要素であり、われわれの日常生活に大きな影響を及ぼしうる存在なのである。自らの理想とする世界の到来をFOSSサポータたちが希望するのであれば、ソースコードだけに没頭するのを止めて、自分たちのみが成しえるリーダーシップを社会に対して示すべきであり、今こそはそうした時期が到来したのかもしれない。

Bruce Byfieldは、コースデザイナ兼インストラクタ。またコンピュータジャーナリストとしても活躍しており、NewsForge、Linux.com、IT Manager's Journalに定期的に寄稿している。

NewsForge.com 原文

最終更新:2007年07月01日 19:05