Appleのくびきを脱して
そうこうするうちAppleからIntelハードウェアへの切り替えがアナウンスされた訳だが、Staats氏によるとこの出来事は「Appleの陰から脱する」契機になったことを意味し、実際Terra Softの運営もPowerPCハードウェア用BSPの事業で順調に立ちゆくことができたという。「今ではMercuryやIBMなどの企業との間で取引があり、BSPの製造契約を結ぶこともあれば、技術的リソースを提供してもらうことで、こちら側の開発負担を軽減する場合もあります。これは業務を遂行する上で、双方が恩恵に与れることを意味し、より好ましいコラボレーション環境だと言って良いでしょう」。
「またMercuryおよびIBM VARの資格も取得できたので、共通のハードウェアをベースとした統合ターンキーソリューションを継続的に開発してゆけるようになり、その分だけ当方のハードウェアに関する知識も蓄積できますし、カスタマに対してもより完成度の高いOSを提供できるという状況になっています」。
それでは何故カスタマたちは、独自開発するよりもTerra Softに委託することを選ぶのだろうか? Staats氏によると、それには主として3つの理由があるという。まずは、より低コストで済むこと。「弊社との委託契約ではなく、BSPの開発スタッフを社内に抱えると、結果的に高くつくことが理解されているようです」。またOEMに関してStaats氏の説明するところによると、各社の提供するOSに対しては「どこか実績のあるLinux OSプロバイダからの完全なバックアップ」を求める傾向が見られるという。そしてYDLは1つの確立したブランド名として通じるため、それを取り込んだOEMをカスタマに売り込むのもそれほど難しくはないとのことだ。
Mercury Computer Systemsのビジネスおよびテクノロジディベロップメントの責任者を務めるRandy Dean氏は、Terra Softのサービスには非常に満足していると語る。Dean氏によると、MercuryのCellベースシステム用にBSPを提供しているのがTerra Softであるが、同社に対してはMercuryのチャンネルパートナとしての「将来的な別の可能性」も見込んでいるとのことだ。
確かにTerra Softの会社としての規模は小さいが、Dean氏によるとそうした点は問題ではなく、重要なのは提供される製品やサービスの品質であり、そうしたサービスを提供するのに必要なリソースを備えているかであるという。特にTerra Softの場合、「そうしたすべてを満たしています」とDean氏は語っている。むしろTerra Softクラスの規模の方が、Red Hatなどの大手Linux関連企業よりも迅速に行動できるというのがDean氏の意見だ。
Terra Softがオープンソース系企業としての神髄を発揮しているのは、同社のライバル会社として見られがちなPenguin Computingとの協力作業を行っている点だ。両社はHPCソリューションを提供するという点では共通しているが、Penguin ComputingはIntelおよびAMDハードウェアに集中し、Terra SoftはPowerPCのみを扱うという形で住み分けている。そしてTerra Softから提供されているY-Bioは、いずれのシステムでも動作するのだ。
これら2つの企業がY-Bioなどのソリューション開発における協力体制を敷いていられる理由だが、Staats氏の語るところでは、HPCの市場はある程度成熟し切っているため、既に大半のカスタマによるプラットフォーム選定の時期は過ぎ去っており、これまで使用してきたPowerPCないしIntel/AMDソリューションから他方に乗り換えるという事態は起こりにくい、という状況が挙げられている。
Penguin Computingにてセールス部門の責任者を務めるMatt Jacobs氏も、同じ意見の持ち主だ。同氏は、「この件に関するKaiの意見は、100パーセント正鵠を得ていますね。既にカスタマはどのプラットフォームを用いるかを選択し終えていますから……、Terra Softの選択は賢明なものと言えるでしょう」として、カバーするプラットフォームは異なるものの、HPC分野の競合プロバイダとの提携関係を結んだTerra Softの判断を支持している。
Yellow Dogの将来的な展望
Yellow Dogのサポータたちにとっての朗報は、決して稼ぎ頭とは言えないYellow Dog Linuxの開発をTerra Softは現在も活発に継続しており、一方的にクラスタシステムのみに傾倒しているのではないという状況だ。
実際Staats氏によると、Terra Softは今後もYDLの開発を継続するが、その理由は、同社の他の事業部門を牽引する1つのツールであるからだとされている。「これまでにもYellow Dog Linuxが主要な収益を占めたことはなく、その点は他のLinux OSベンダとは異なっています。この製品の位置づけは、過去および現在そして将来においても、サービス契約を呼び込むための看板商品なのであり、ユーザコミュニティとの絆という重要な資産を維持するために存在しているのです」。
Staats氏の説明によると、Fedora CoreをベースとしたYDL 5.0は「現在開発中」であり、「サポートするハードウェアは、Apple G5および、IBM OpenPower 710、JS20、750 eval、Maple-Dおよび、Mercury XR9など、特定のものに限定される」とのことである。
「あくまで先行するFedoraを後追いするという形ですが、デスクトップ用Yellow Dog Linuxは今後も改良してゆく予定であり、弊社独自の変更としては、メニューやテーマの再編成、パーティションのリサイズ用ツールとの統合、PBボタン(サウンド、ブライトネス、キーボードバックライト)のサポート、設定済みオーディオ機能の組み込み、デュアルヘッドグラフィックへの対応などを行うことになるでしょう」。
Staats氏の予測によると、Appleの撤退後もPowerPCベースのワークステーション市場には将来的な展望が開けているということだ。「IBMからはp5 185が提供されています。分類上はサーバ用となっていますが、ワークステーションに使っても問題ないでしょう。またGenesiからは、デュアル970ワークステーションのアナウンスがされています。IBMの省電力型970シリーズを始め、PA Semiからは革新的な新規CPUのリリースが2007年に予定されており、様々な分野での使用が期待されているPowerチップの将来は明るいと見ていいでしょう」。
