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Geekcorps:第三世界でコンピュータユーザを養成する平和部隊

2006年11月02日 10:23 Lisa-Hoover(2006年10月30日(月)) 1 2
フリーランスのソフトウェアコンサルタント業を営むRenaud Gaudin氏がかねてより考えていたのは、自分が抱くフリー/オープンソース系ソフトウェアへの情熱を生かして、発展途上国がITテクノロジを活用する手助けをできないか、ということだった。そしてこの3月、同氏はGeekcorpsに参加した。現在も同氏は、現地コミュニティに情報通信技術(ICT)を普及させるための活動を継続しており、地元のユーザを相手に必要なハードウェアとソフトウェアを用意するためのサポートを施し、彼らが手にした装備を長期にわたり持続的に運用するためのスキルを教え続けている。

Gaudin氏を含めた3,000名以上のボランティアが活動するGeekcorpsとは、首都ワシントンに本拠を置く非営利組織であり、その目標としては、世界中に散らばるIT分野のエキスパートの知識を糾合して、開発途上国の技術レベルを高めるという理想を掲げている。

Geekcorpsへの参加以来Gaudin氏が駐在してきたのは西アフリカ地域に広がる不毛のマリ砂漠であり、そこで同氏はLinuxシステムの管理者兼開発者として活動している。この地域でGeekcorpsが推進しているのは、Linuxを活用した様々なプロジェクトであり、同氏が行っているのもそうしたプロジェクトの1つである。「私が現在進めているプロジェクト(の1つ)では、Ubuntu Linuxを容量1.8GBのフラッシュ式ハードドライブに収まるようカスタマイズして、200KB/日を上限としたネットワークを運用することを目指しています」と同氏は語る。「それには、システムサイズを減量させ、適切なパッケージを厳選し、ディスクへの書き込み量を制限し、ネットワークトラフィックの規制、モニタリング、最適化を施すことなどが必要です」。

Geekcorpsがマリを舞台としたボランティア活動を開始するまで、同国におけるITテクノロジの普及率は極めて低かった。「これまでの私たちのマリにおける使命は、現地のコミュニティで利用できる情報の質と量を向上させることでした」と、マリでのGeekcorpsプログラムのコーディネータを務めるMatt Berg氏は語る。「そのため初期段階の活動では、USAIDがスポンサーとなっている地域ラジオ局や、バマコ大学などの現地組織との協力関係の形成に主眼を置いていました。その段階が過ぎた今は、村落単位で基本的なICTサービスを普及させることを目指しており、それを(USBキーを利用した)持続可能な経済的方法で行おうとしています」。

マリにおけるGeekcorpsチームが、砂漠地域で運用するという必要性から作成したのが、自己完結的な運用を可能とし、空冷ファンを不要化した上で入念なシールドを施したDesert PCと呼ばれるシステムである。これはLinuxをベースとした革新的なユニットであり、60ワットの電球を灯すだけの電力で充分に動作するため、「地球上で最も緊急に援助を必要とする問題に応える革新的なテクノロジ」であると認められ、Tech Museumの受賞候補にも上っている。

マリの現地コミュニティの人々が必要とするテクノロジを取得できるよう、そのためのサポートを進めているボランティアチームの活動にとって、砂漠地帯という過酷な環境や遠隔地ゆえの不便性は、様々な障害となって立ちはだかっている。「ごくありふれたIT機器を入手するだけでも、ここでは一苦労です」とBerg氏は語る。「機器の大半は外から輸入するしかありません。RAMにしろ電源にしろ、必要な時にBest BuyやFry'sといったショップまでひとっ走りして買ってくるなんて贅沢な真似は不可能ですから。でもほら、よく言われるでしょう、“必要は発明の母”だって。物資が不足しているなら、現地で入手可能な材料を活用して技術的な解決手段を編み出せばいいということで、例えば空き瓶を利用したWiFiアンテナなんてものも作ってしまいました」。

「(楽しいのは)仲間のボランティアや地元のチームの人間たちと一緒になって生まれたアイデアを具体的な形にすることで、それが実際に人々の生活の向上につながってくれるといいんですが。それとまた別の楽しみとしては、私たちメンバと共に働いた現地のスタッフやパートナたちの能力的なキャパシティが向上してゆく様子を見守ることがあります。おそらくは、こうした技術移転のあり方こそが一番重要なのであって、私たちのプログラムがマリという国の発展に対して継続的な影響を及ぼすことにつながるんでしょうね」。

Gaudin氏も同様の感想を抱いている。「何かのソリューションを構築して得られる達成感というのは、あくまで最初のステップに過ぎず、本来の目的はその成果を人々に笑顔で活用してもらうことであり、そうした様子を自分の目で確かめることで本当の喜びが得られるものなんです」。

道具に拘泥しない技術伝道の道

このように、国籍も文化も異なる社会におけるITテクノロジの普及促進に向けて熱心なサポート活動を続けているGeekcorpsのボランティアたちであるが、どのプラットフォームこそが地域コミュニティの必要性に最も則しているかという問題になると、常に決まって、それは分からないという答えが返されてくる。マリという社会はこれまでオープンソース系ソリューションという理念やその有用性に対してかなり高い受容性を示しているが、同組織の責任者を務めるWayan Vota氏の説明では、こうした態度が過去に活動してきたすべての国々で見られるとは限らないと言う。つまりGeekcorpsが現地でセットアップするオペレーティングシステムの90%はLinuxベースのものが占めているのだが、ボランティアたちはしばしば「Microsoftの名前が冠されたものは無条件で優れた製品である」という偏見と闘う必要もあるのだと。

実際にGeekcorpsのボランティアたちの経験した事例として、オープンソース系のスキルのみを教えた場合、そのコミュニティのメンバが職を求めようとしても、ガーナ、レバノン、ブラジルなどのMicrosoft認証を特別に重要視する国々では受け付けてもらえない、というケースが存在している。「これらの国々では、自分にはLinuxの知識がありますと売り込んでも、採用者側はまず取り合ってくれません。その代わりMicrosoft系のスキルがあると言えば、即採用です」とVota氏は語っている。「これらの地域ではブランド志向が強いこともありますが、Microsoftが“これさえ持っていれば世界の一流企業であると認められますよ”という殺し文句でマーケッティングに励んでいる効果もありますね。Microsoftのマーケッティング戦略を鵜呑みにしている国もあるということです」。

Gaudin氏の場合、マリでその種の抵抗に遭遇したことはないと言う。「正直な話、私が相手にした人たちの大多数は、コンピュータにまったく馴染みがないため、事実上Linuxが最初のコンピュータ体験というケースがほとんどです。もっとも一部には、非常に限られた範囲内でコンピュータの使用経験を持つ人たちもいますが、そうした人々もたいていはオープンソース系ソフトウェアを喜んで使用していますし、それは必要な要件を満たしていることと、私たちが整備したソリューションにオープンソースソフトウェアが最初からパッケージされているのがその理由でしょう」。

Vota氏の言葉を借りるなら、いずれにせよGeekcorpsの使命とはサポートするコミュニティの目的達成を支援することであり、何を目的とするかは当事者次第ということになる。「私たちがやるべきことは、状況に即した最適のソリューションを用意することです。Geekcorpsの意図として、プラットフォームやソリューションの善し悪しを論評する気はありません。意識しているのは、何を使えば最適な仕事ができるかであり、用いるオペレーティングシステムの選択もその方針に従っています」。

最終更新:2007年07月01日 19:05