実際Art Teamのメンバは、新規リリースまでの数カ月を費やし、チーム内部の意見やUbuntuコミュニティから提供された作品を整理して、デザイン用の新規マテリアルをすべて用意し終わっていた。ところが10月12日にUbuntuの創設者であるMark Shuttleworth氏が新規パッケージに却下の判断を下したため、収録するアートワークはDapper Drake段階のものに戻されることとなったのである。Shuttleworth氏は、その決断に至った理由をubuntu-artメーリングリストで説明したが、同メーリングリストのメンバやUbuntuフォーラムの参加者からは否定的な反応が返されており、その多くは今回のShuttleworth氏の決断について、最終的な決定はArt Teamの手に委ねるとした同氏の以前の約束を反故にする行為だと見なしていた。
Ubuntuコミュニティで巻き起こった不満は、当事者不在の状態でくすぶり続けていた。つまり、コミュニティの間に広がったデザイン変更に対する批判意見は様々な論争を巻き起こしていたのだが、そうした状況をよそに、最大の当事者であるShuttleworth氏はArt Teamの主要スタッフ3名と協議し、Dapperのアートワークパッケージを一部変更して若干の洗練を加えることでEdgyのリリースに間に合わせるよう作業を進めさせていたのである。注意しなければならないのは、この種の論争においては感情が高ぶりすぎて状況を客観的に把握できなくなるという事態に陥りがちなことだ。そしてEdgyのリリースから1週間の期間を開けた後、Ubuntuプロジェクトのチーフアーティストを務めるFrank Schoep氏は、世間に広まっていたArt Teamと管理サイドの間に衝突があったのではという誤解をはらすべく、今回の問題に対する自身の見解を述べることに同意したのである。
EdgyのアートワークがDapper版に戻された経緯
ボランティアコミュニティの一部で広まっていた噂の1つを信じれば、Shuttleworth氏またはUbuntu管理サイドがArt Teamによるスケジューリングないしコミュニケーション力に不満を抱いていたことになるが、Schoep氏の語るところでは、同チームの提案したアートワークが却下された本質的な理由はデザイン上の観点に帰するものであり、またマーケッティングチームからは商標関連の問題が指摘されていたとのことである。
その他の不満として、Shuttleworth氏がArt Teamの作品を拒絶したのはコミュニティの総意に反するのではないかという声が上がっていたが、その点についてSchoep氏は、Art Teamが“デザイン事務所”であるとすればUbuntuというスポンサーは“クライアント”の立場にあるのであって、そのことを同チームは常に心得ており、プロフェッショナルなデザイナの役割とは自分たちの我意を通すのではなく、クライアントの意向に添う形で仕事をすることがその本質であると説明している。「実のところ、当方の進めていた作業の方向性が、私が思っていた程はクライアントの意向に沿っていなかったのです」とSchoep氏は語る。「MarkはEdgy用のアートワークについて明確なビジョンを抱いていましたが、私どものチームが行ったアートワークの作成方針が最終的にそのビジョンに一致していなかった訳です」。
そうした食い違いが生じた理由であるが、アーティスト側の抱いていたEdgyのデザインをより斬新なものに改めようという思惑がある程度寄与していたのは間違いないようである。「私たちはゼロから作り直してDapperを超えた出来にするつもりでしたが、MarkにとってはDapperこそが理想に近かったのでしょう」。
問題となったアートワークは現在も公開されており、その目玉の1つはビジュアルエフェクトの採用であったのだが、feature freeze(機能の凍結)の期限が近づいた段階においても、カラーパレットとの不整合など技術上の未解決問題がいくつか残されたままという状態であった。そしてShuttleworth氏によるデザインの差し戻しがアナウンスされた後、Schoep、Jonathan Austin、Jozsef Makの3氏は、整合性を取るのに必要な作業をDapperのアートワークパッケージに施し、エフェクト的な変更は光沢効果を加える程度に限定したのである。
