米メロン財団が創設2年目の技術賞のノミネート受付を開始

 アンドリュー・メロン財団(Andrew W. Mellon Foundation)の情報技術研究(Research in Information Technology:RIT)プログラムが2007年メロン賞テクノロジコラボレーション部門(Mellon Awards for Technology Collaboration:MATC)のノミネート受付を開始した。50,000~100,000ドルの賞金は、12月に受賞者に贈られる。教育関係や非営利のベンチャー事業を支えるオープンソースプロジェクトであれば、どんなプロジェクトにもノミネートの資格があり、自己推薦も可能だ。昨年の第1回MATC賞では、50万ドルを超える賞金総額が受賞プロジェクトに贈呈された。

 ノミネートの具体的な資格要件は、メロン財団のWebサイトにまとめられている。ノミネートを受けるためには、オープンソースプロジェクトを公開しており、その結果として同財団を構成する非営利的の活動内容に「明確で大きな恩恵」を与えていること、相応の活動実績を示すことが必要である。また、規定により、賞金はプロジェクトのさらなる発展のために使うこととされている。

 メロン財団はこの賞に関係する以上の関与をオープンソースソフトウェアの世界にはあまりしていないが、同財団のRITプログラムは経営層向け研修、教育、ソフトウェア開発への財政投資を通じて非営利セクタにおけるオープンソースの利用を促進している。RITのChristopher J. Mackie氏は、次のように語る。「私の知る限り、オープンソース開発に対する私設慈善基金としては我々の組織が世界最大です。政府機関にはもう少し助成金が多いところがあったり、一部のベンチャー投資家には営利のOSSベンチャーに巨額の資金を投じているところがあったりしますが、私設の慈善基金であって受益者が非営利組織であるという点では、我々の規模が間違いなく最大でしょう」

 メロン財団内に発足してから6年、RITプログラムは、各教育団体が持つソフトウェア開発の経験を理由に、主として教育団体との連携に注力してきたとMackie氏は言う。「この領域では大いに成功を収め、きわめて重要な多くのニーズを満たし、協調によってOSSプロジェクトをうまく機能させる方法について十分な知見を得ました。メロン財団のその他の所属組織である図書館、博物館、芸術団体、自然保護団体のためにも活動を始められる準備ができたと感じています」

 「RITの影響力を確実なものにするために、なるべく大きな社会的利益を生み出すものに活動を集中するよう、理事会は我々に求めています。その結果としてRITが探し求めているのが、『地殻変動的』プロジェクトと私が呼んでいるものです。それは、成功した暁には、対象領域における非営利組織のよりどころを変えてしまうようなプロジェクトのことです」

 「本来認められている」RITプロジェクトは、共通の問題を抱えるさまざまな社会団体(通常は5つほど ― この件数を大きく超えると調整コストが急増する)に関与しています。新しい講座管理システムを必要としている団体の場合もあれば、ニーズに応じたカスタマイズに別料金が必要な証券市場向け金融システムに大金を払うのにうんざりしている団体の場合もあります。こうした「コア」となる諸団体が、RITプロジェクトのリソースの大部分を提供し、プロジェクトの管理統制チームになっています。メロン財団およびRITは、2種類のコストを賄うために追加資金の供給を行っています。1つはコラボレーションのコスト、もう1つは結果として生み出されるソフトウェアをほかの団体でも使えるように仕上げるコストです」

 RITは、助成制度を通じて、また昨年思いがけず生まれたMATC賞を通じてソフトウェアプロジェクトに資金を供給している。そのためか、MATC賞にノミネートすることによって今後の継続助成を申請しようとしたオープンソースプロジェクトがいくつかあった。

 今年はこの2つのプロセスを明確に区別したい、とMackie氏は考えている。「MATCサイトでは、助成金の申し込みを受け付けず、また助成金の担当者への「取り次ぎ」も行いません。その一方で、ITやOSSの興味深いアイデアについて人々と話し合うのは我々の仕事なので、プロジェクト化にふさわしい優れたアイデアを持っていると思う人には相談しにきて欲しいと思っています。新しいプロジェクトのネタになるアイデアをお持ちの人は、rit.mellon.orgをご覧になり、そこに記された手順に従って我々に連絡を取ってください。同様に、MATC賞をねらっている人は、我々に直接連絡を取ろうとせず、MATCサイトに行ってください」

2007年MATC賞の選考プロセス

 Mackie氏の説明によると、2006年MATC賞の選考過程は大成功をおさめたという。ノミネートにより、それまでRITが注目していなかった多数のプロジェクトと連絡をとることができ、そのなかには後にMATC賞とは無関係にRITが支援を行ったプロジェクトもあったのだ。「おそらくもっと重要なのは、我々の手によって結び付けることができたプロジェクトどうしが現在、連携して活動を行っていることです。いくつかのノミネートプロジェクトには話をしたことですが、賞選考委員会のメンバーは、ITの世界で大きな成功を収めた影響力のある人々であると同時に、世界中で最も話し好きな人々の部類に入ります。彼らは皆、多大な時間を費やして興味深いプロジェクトやアイデアのことをほかの人々に伝えているので、受賞したプロジェクトや、賞は逃したものの選考委員に感銘を与えたプロジェクトに関しては、数多くのコネができているようです」

 今年の選考委員の顔ぶれは昨年と同じだが、選考過程は少し変更される。ノミネートされたプロジェクトのリストが一般に公開され、ノミネート期間が4月16日までに延長されるのだ。

 MATCサイトでは、一般の人々からのコメントや推薦状の投稿が可能になり、ノミネートされたプロジェクトはコミュニティに投稿を呼びかけてもよい。ただし、受賞者を選ぶ権利は、昨年と同じく委員会にしかない。「今年、我々が一般の人々に心から望んでいるのは、プロジェクト関する知識を提供してほしい、という点です。自分の知っているプロジェクトに対してコメントや推薦の言葉を追加してもらいたいのです。もし、利害関係の絡むノミネート(多分MATCの基準を満たしません)を目にした場合は、コメントを通じて我々に知らせてもらえれば、間違った選考をせずに済みます。次回の賞では、OSSコミュニティの英知を結集することで受賞プロジェクトの決定に大きな影響を与えることができますが、OSSに関する知識を我々に提供してくれなければ、その内容が選考委員会に伝わることもありません。もちろん、すべてはノミネートから始まります。たとえ史上最優秀のプロジェクトでも、ノミネートする人がいなければ賞を獲ることはできないのです」

 ノミネートの書式と手続きは、matc.mellon.orgで確認できる。受賞プロジェクトの予備選考と通知は今年夏過ぎに委員会によって行われ、最終プレゼンテーションは12月に実施される予定だ。

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