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オープンアクセスとオープンソースを融合させたPublic Knowledge Project

2007年04月04日 10:26 Bruce-Byfield(2007年3月23日(金))
 Public Knowledge Project(PKP)は、テクノロジにおける2つの思想的トレンド ― 言わずと知れたフリーおよびオープンソースソフトウェア運動と、学術研究成果への無料オンラインアクセスの提供を目指すオープンアクセス運動 ― を融合したものである。その目的の達成に必要なソフトウェアツール群と支持活動とを結び付けることで、創設後9年で同プロジェクトはオンライン学術出版業界の一大勢力へと発展した。

 PKPは、ブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia)の言語学およびリテラシー教育学科(Department of Language and Literacy Education)のJohn Willinsky教授によって1998年に創設された。多くの学術研究者と同じく、Willinsky氏は逐次刊行物の危機を痛感していた。学術機関による定期出版物の管理は、論文誌の数および個々の発行にかかるコストの増加により、ますます困難になっていたのだ。

 このプロジェクト誕生の直接のきっかけになったのは、研究に関するWillinsky氏の2つの関心事だった。その1つは、ヨーロッパ帝国主義終焉後の開発途上国を研究の対象とするポストコロニアリズムである。『Learning to divide the world: Education at Empire's end』と題したポストコロニアルの研究書を出したばかりのWillinsky氏は次のように語る。「これはまさしく、私に何ができるのかを主題にしたものだった。ポストコロニアルの立場と偏見を記録して後世に残すこともできた。だが、周辺層をもっと中心部にシフトさせるために、具体的に私ができたことは何だろうか」。つまり、開発途上国にいる研究者の学術的議論への参加をどうすれば従来よりも容易にすることができただろうか、というわけだ。

 Willinsky氏のもう1つの関心は、一般の人々がもっと容易に研究の内容を参照できるようにすることだった。Vancouver Sun紙とブリティッシュコロンビア州教職員連盟(British Columbia Teachers' Federation)による共同実験から、Willinsky氏はこう結論付けた。「限られた研究例しか提供できておらず、利用できない場合は教員が大学の図書館に問い合わせる必要があった。研究内容の共有に関する自らの無力さに愕然としたものだ」

 PKPは、このような関心事から誕生したのだった。プロジェクトの最初の2年で、こうした動機は、オープンアクセス運動の高まりによって一層強まった。PKPの常勤開発者Alec Smecher氏は、「オープンアクセス運動は、少数の出版社に握られている論文誌の管理権を解放しようとするものだ」と説明する。この運動もまた、Willinsky氏と同じように、定期刊行物のコスト増大と開発途上国における学術情報の利用に懸念を抱いているのだ。

 当初からPKPに関わっているプログラマの1人Kevin Jamieson氏は、Willinsky氏をはじめとするプロジェクトのメンバーにオープンソースソフトウェアの概念を紹介した。Willinsky氏にしてみれば、オープンソースの掲げる理想は、彼自身の関心事にぴったり合うように思えただけでなく、自らが解決を試みていたいくつかの問題を、特に論文誌とその読者の双方のコストを削減することによって、部分的に解決する方法の提供を約束してくれるものでもあった。

 当初、ブリティッシュコロンビア大学の教育学部内で進められていたこのプロジェクトは、今や同学とサイモンフレーザー大学との共同プロジェクトになっている。プロジェクトはAfrican Journals Onlineプログラムに参加しており、先月にはカナダ技術革新基金(Canadian Foundation for Innovation)から580万ドルの補助金を受けている。プロジェクトには常勤の開発者が1名、パートタイムの開発者が2、3名いるが、現在、別の開発者とサポート専門家を1名ずつ募集中である。また、プロジェクトメンバーは、サイモンフレーザー大学図書館のスタッフから図書館の標準規格、データフォーマット、学術出版についてのアドバイスを受けている。

成長するコミュニティ

 ほとんどのオープンソースプロジェクトと同様、PKPでもユーザの正式登録は行っていない。しかし、Smecher氏の推定では、Open Journal Systemsだけでも、世界中のインストール件数は1,000を超えるという。

 これまではプロジェクトへのボランティアの参加が制限されていたが、Smecher氏はこの状況の変化を予期している。プロジェクトのフォーラムはあらゆるレベルのユーザの参加によってますます活発化し、Open Journal Systemsではフランス語を除くすべての翻訳でボランティアが貢献している。また、Smecher氏は「Googleの検索によって、外部にも別の言語による完全なコミュニティが存在することが偶然わかった」と語る。現在は、メインプロジェクトの活動にも寄与するこうしたコードのフォークが奨励されている。

 各種の貢献をさらに促進するために、PKPのソフトウェアの最新版では、「Drupalのプラグインシステムに大まかなヒントを得た」プラグインシステムが用意される、とSmecher氏は言う。また、「我々の目標はできるだけ修正を容易にすることにある。その結果、人々は、既存のコードに手を加えなくてもソフトウェアに機能を追加できるようになる」とも話している。今のところ、プラグインのほとんどは具体的なニーズを満たすための各種インポート/エクスポートフィルタである。ただし、テキストエディタを使ったユーザによるフィールドへの情報入力を可能にするJavaScriptプログラム、TinyMCEを利用できるものもある。Smecher氏は、プロジェクトが拡大するにつれ、こうしたプラグインシステムがプロジェクトに関わる人々の増加につながることを期待している。

成否の評価

 Willinsky氏の見積もりによると、今日の学術分野の定期刊行物で自由に参照可能なものは全体の10~15%に過ぎないという。PKPはオープンアクセス運動の一端を担っているが、同プロジェクトの成功は部分的なものでしかないとWillinsky氏は判断している。

 「我々は、9年間で学術出版業界全体を改革するには到らなかった。だが一方で、ソフトウェアの成功は私が期待した以上だった。また、開発途上国に限らず、編集方針への介入を理由に解雇されてきた編集者や、これまでは組織できなかったような斬新なグループの中で、新たな論文誌の創刊を支援できる充実感も然りだ。学問上の自由と編集の自立性に関するこうした問題に対しては、我々が予期しなかったほどの成果を得ている」(Willinsky氏)

 PKPのようなオープンアクセスへの取り組みで重要なのは、思想的な目標への到達手段としてソフトウェアがどれほど役に立つかという点だ、とWillinsky氏は指摘する。「我々は自分たちのソフトウェアに対して一種の責任を負っている。ソフトウェアが役に立つのは、文献を参照する新しい形の環境や新たな種類の状況を創造したり、Wikipediaのような以前は考えられなかったことを可能にしたりする部分だ。そのテクノロジの構造ゆえに、人々は想像もできなかったような方法で百科事典の作成に貢献しつつある。我々の仕事は、ちょうど本がそれまで何物も成し得なかったような形でリテラシーを向上させたように、オープンアクセスのクオリティをさらに高めることだ。我々が支持を続ければ、論文誌をオープンにするだけでは十分でない、というところまで行き着くだろう。我々は学術論文誌のための新しい環境を提供する必要がある」。Open Conference SystemsとOpen Journal Systemsを通じて、PKPが試みているのは、まさにそういうことなのだ。

コラム:Open Conference SystemsとOpen Journal Systems

 PKPは、Open Conference SystemsおよびOpen Journal Systemsの最初のバージョンをそれぞれ2000年、2001年にリリースしている。また、2006年7月にはOpen Journal Systemsのバージョン2.1.1がリリースされ、Open Conference Systemsのバージョン2.0も2007年前半にリリースが予定されている。

 MySQLまたはPostgreSQLを利用する両PKPアプリケーションは、PHPで書かれており、GNU GPL(一般公衆利用許諾契約書)の下でライセンスされている。基本的には、どちらのソフトウェアも、学術論文の投稿、査読、公開を支援するためのカスタマイズが施されたコンテンツ管理システムである。Open Conference Systemsはイベントへの参加登録を処理することもでき、次期バージョンではオンラインでの参加費の支払いまで可能になる。Open Journal Systemsは、管理者や編集者、査読者、著者からレイアウト編集者や校正者にいたるまでの具体的な役割ごとにログオン処理を分割し、それぞれに個別のタスク群を許可している点で注目に値する。こうした構成は、標準的な論文誌の制作スタッフのワークフローがモデルになっている。

 どちらのアプリケーションも、Webサーバとデータベースの知識がある人には比較的わかりやすいインストール手順になっている。しかし、その機能を体験できる一番簡単な方法は、同プロジェクトのサイトにあるオンラインデモにログインすることだ。

 Open Conference Systemsのドキュメントは大部分がFAQによって提供されているが、Open Journal Systemsには広い範囲にわたるオンラインマニュアルが用意されている。

 また、必要であれば、専門的なホスティングおよびサポートのサービスをサイモンフレーザー大学図書館(Simon Fraser University Library)を通じて受けることもできる。

Bruce Byfieldは、NewsForge、Linux.com、IT Manager's Journalに定期的に寄稿しているコンピュータジャーナリスト。

NewsForge.com 原文

最終更新:2007年07月01日 19:05