Writerを使ったDTP
Writerをワードプロセッサ、つまりMicrosoft WordのOpenOffice.org版だと思っている人は多い。しかしWriterには、OpenOffice.orgのコードがまだプロプライエタリでありドイツのStarDivision社に所有されていた当時、同社の文書作成者たちが使用することができるように作成されたプログラムであったという経緯がある。そしてその結果Writerは、大量の大規模な文書の編集についても安定しており、さらに大規模なプロジェクトに向いたツールを多く備えたものにもなっている。
とは言えWriterは小規模な文書のレイアウトに向いていないわけではない。向いてないどころかWriterにはDrawと同じ機能があるだけでなく、それらの機能はWriteのものの方がDrawのものよりも精度が高く使いやすいことが多い。例えばWriterではページのスタイルはFormat(書式)→Styles and Formatting(スタイルと書式)の中に他のスタイルとともにまとめられていて、フッタ/ヘッダや複数段組のデザインのための詳細設定など、Drawよりもずっと多くのオプションが含まれている。同様にフレームのスタイルに関しても、オブジェクトにテキストを自動的に回り込ませるための6種類の異なるスタイルが提供されており、またテキスト間の空白の調節を行なうこともできる。さらに重要な点として、テキストフレームを追加する際には、オプションタグを利用してフレームのテキストを別のフレームのテキストと連結させることもできる。また、Tools(ツール)→Options(オプション)→OpenOffice.org→Autocaption(オートキャプション)でオブジェクトのタイプを選択することにより、カスタマイズしたキャプションを自動的に追加することもできる。なおページ内での特殊な位置決めが特に必要ではないテキストフレームは、「セクション」に変更することもできる。セクションとは、メインのテキストフレームの一部の指定された領域で、固有の書式を使うことができる。
表に関して言うと、Writerでは表をまったく苦労なく挿入することができ、枠やテキストの配置などについての幅広いオプションを利用することができる。Writerでは表のスタイルというもの自体は存在せず、その代わりにAutoformat(オートフォーマット)を定義することができる。Autoformat(オートフォーマット)は、表のスタイルと同じくらい便利だが表の行数や段数の変更についての柔軟性がいくらか低い。
Writerのまた別の便利な機能の一つとして、リストのスタイルがある。リストのスタイルでは精密なデザインや位置決めができるだけでなく、リストのスタイルはそれぞれが独立したスタイルであるために一度定義すれば多様な段落のスタイルで利用することもできるという長所もある。
とは言えWriterが真価を発揮するのは、大部分がテキストからなる長い文書を扱うときだ。Tools(ツール)→Footnotes(脚注)からは、脚注と文末脚注についての空白や番号付けなどを詳細に調整することができる。またInsert(挿入)→Indexes and Tables(目次と索引)では、目次、インデックス、参考文献などについてと、それらを作成するためのテキストへのタグ付けに関する、同様に詳細なオプションなどの設定を行なうことができる。なおそのような各要素に専用の文字/段落スタイルを作成したい場合にはF11を入力してStyles and Formatting(スタイルと書式)ウィンドウを開けば、デザインをさらにカスタマイズすることができるようになっている。
Writerでは書籍レベルの長さの原稿のために、複数のファイルからなる「マスター文書」を使用するためのオプションが提供されている。全原稿が入った一つのファイルではなく複数のファイルに分けて扱うと、通常、ファイルの読み込み/保存やフィールドの更新などの際のOpenOffice.orgの速度を上げることができる。また何よりもWriterのマスター文書は、Microsoft Wordの同名の悪名高い機能とは異なり、安定していて、ファイルが壊れることがない。ただしWriterのマスター文書が抱える唯一の落とし穴は、マスター文書とサブ文書とが同じテンプレートを使用しているように気を配らなければならないという点だ。そうしなければ、マスター文書を印刷のために開くと、再整形が行なわれ非常にうんざりすることになるだろう。
いろいろな意味でWriterは、Microsoft WordやCorel WordPerfectのようなワードプロセッサというよりは、FrameMakerのような文書プロセッサにより近いプログラムだ。もちろんWriterを使用してメモや5ページ程度の文書を作成することもできるが、Writerの有り難さを痛切に感じることができるのは、マニュアルや書籍や論文の作成に使用したときだ。一方、Drawと同様にWriterにも限界はある。特に、テキストフレームをページスタイルの一部にすることができないということと、クロスリファレンスのシステムが使いにくいということがある。とは言え、プリントアウトした原稿がずっしりと重いときには、Writerのおかげで作業が楽だったと感謝することができるだろう。
まとめ
DrawにもWriterにも限界や不十分な点はあるとは言え、デスクトップ・パブリッシングの作業の多くにとっては十分すぎるほどの機能が備わっている。実際、No Starch Press社など数社の出版社では、Writerをレイアウトプログラムとして使用する試みが始まっている。この試みは時間を節約するために行なわれているもので、ライターが標準のテンプレートを使用して作業を行なうことができるので、書籍を印刷に回す前にデザイナーが再整形する必要をなくすことができるのだという。
しかしそういうことであればOpenOffice.orgのデスクトップ・パブリッシングの機能はなぜもっと広く知られていないのだろうか。おそらくそれは、「見えると思っていたものしか見えない」という人間の持つ一般的な傾向が大きな理由だと思われる。つまり「Writer」という名前を聞けば、それは単なるワードプロセッサだとほとんどの人が考えるのは当然のことなのだ。同じようにDrawが単なる画像プログラムだと思われているのも当然のことだ。WriterとDrawにどれほど多くのことができるのかを知るには時間と経験が必要だ。そしてどうやらOpenOffice.orgが誕生してからの6年間という期間程度では、ほんの一部のユーザ以外にはその全機能を把握するのに十分な長さではなかったということなのだろう。
しかしそういった「OpenOffice.orgのアプリケーションを使ってできること」は、一度把握してしまえば重宝するようになるはずだ。また欠落している一部の機能をカバーするために必要な対処策も、非常に簡単で分かりやすいため大きな問題とはならない。さらに、一つのOpenOffice.orgのアプリケーションで学んだことの多くは、別のOpenOffice.orgのアプリケーションでも直接的に活用することができる。DrawとWriterは、適度に揃った機能群を持つ安定していて完成度の高いアプリケーションなので、デスクトップ・パブリッシングを行なうにはこの2つのプログラムさえあれば事足りることも多いだろう。
Bruce Byfieldは、NewsForge、Linux.com、IT Manager's Journalへ定期的に寄稿するコンピュータジャーナリスト。
