携帯電話上のLinux
OLS 3日目の次のセッションは、Motorola社モバイルデバイス部門/CE Linux ForumのScott E. Preece氏による「Linux携帯電話BoF」だった。Preece氏はまず自己紹介とテーマの紹介から始め、Linux搭載ハンドヘルドは2012年には約2億400万台が販売される見込みだと述べた。なおMotorolaは、同社のハンドヘルド製品のほとんどにLinuxを搭載する予定だという。
Linuxは実験するのに優れたプラットフォームであり、またそのような理由から優秀な人材が集まってくるとのことだ。現在、多くの人々がLinuxを学びたいと考えていて、その数はSymbianやWindows向けの開発を学ぶことに興味のある人の人数よりも多いのだという。Preece氏によるとLinuxは、大規模なシステムのための能力を保持しながらも小規模なシステム用に調整することが可能(適宜必要に応じて変更することができる)になっていて、堅実な技術とのことだ。
最近、Linuxをハンドヘルドに採用する企業が団結して提携関係を築くためのイニシアティブを数多く設立しているという。Preece氏は主要な4つのイニシアティブとしてLinux Foundation、Consumer Electronic Linux Forum、Linux Phone Standards Forum、Linux in Mobile Foundationを挙げた。
またLinuxハンドヘルドに取り組んでいるオープンソースプロジェクトも挙げ、携帯電話についてのコミュニティとしての取り組みがあるGNOMEプロジェクトや、(チップにハードコードされるGSMスタック以外については)完全にフリーな携帯電話用スタックの作成を目指しているOpenMokoプロジェクトなどを紹介した。なおOpenMokoプロジェクトは、会社組織に基づく、コミュニティスタイルのコード中心のプロジェクトとのことだ。
Preece氏は様々なLinuxハンドヘルドのための組織をかなり詳しく説明したが、その後同氏の雇用主であるMotorolaがGPL違反をしているらしいということから セション部屋にはピリピリとした空気が流れ始めた。セッションに参加していた何人かの聴衆によると、MotorolaはLinuxベースのハンドヘルドをすでにリリースしているにも関わらずそのデバイスのソースコードを公開していないので、GPL違反に該当するという。
Access LinuxのDavid Schlesinger氏は興奮気味に、同氏の会社では、デバイス自体のリリースよりも遅くなることなく、すべてのコードを公開するようにしていると述べた。
Preece氏は、MotorolaがGPLについての苦情を真摯に受け止めるよう再確認して、問題に取り組むことを約束した。
One Laptop Per Child
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| Andrew Clunis氏 |
3日目の最後に私が出席したセッションは、OLPC(One Laptop Per Child)プロジェクトについてのBoFで、OLPCのボランティアであるAndrew Clunis氏が司会を務めていた。
Clunis氏は、OLPC創設者のNicholas Negroponte氏による「OPLCはラップトッププロジェクトではなく教育プロジェクトだ」という言葉を引用してセッションを開始した。そして、健全な社会を育てるためには質の高い教育が重要であり、世界中のすべての子供達に低価格のラップトップコンピュータを与えることは、そのための優れた方法の一つだと続けた。
子供は、自分でやってみることから学ぶ。子供は5才頃までは、自分が知りたいと興味を持ったことのみを学ぶが、その後、幼稚園以降は「授業/宿題」の繰り返しという近代的な学習方法が始まるのだという。しかしOLPCプロジェクトは、子供が自分でやってみたり他の子供と協働作業したりすることを通して学ぶことの手助けをするとのことだ。
OLPCでは、協働作業が最も重要だという。Clunis氏は、ネットワーク接続ができなくなれば、OLPCのノートPCはただの生暖かいブロックになってしまうと表現した。OLPCのノートPCでは、協働作業ということを非常に重視したヒューマン・インターフェースになっていて、ヒューマン・インターフェースの中にネットワークが統合されている。
OLPCのノートPCはファームウェアスタックからアプリケーションまで、すべてがフリーソフトウェアで実現されている。Clunis氏の説明によると、その理由は柔軟性が要求されるためだという。また、OLPCは西洋諸国の消費者向けノートPCには関心がないとのことだ。
OLPCのノートPCは、できるだけ設備には依存しないようになっている。OLPCのノートPCでは、ネットワーク接続に802.11s(ESSメッシュネットワーク)が使用されている。メッシュネットワークでは、直接的には圏外であるアクセスポイントであっても到達することができるように、各ノートPCが他のノートPCのためのデータをリレーすることができる。なおアクセスポイント自体については、ほとんどが衛星経由でインターネットに接続されることになる可能性が高いとのことだ。
OLPCのノートPCの充電機構には、電力を生成できるものであればほぼ何でも使用することができるが、プロトタイプで使用されていた取っ手型の発電器は、引っ張ることのできる紐型の発電器に取り替えられたとのことだ。Clunis氏によるとその方が、比較的弱い手首の筋肉ではなく強力な上腕の筋肉を使うことができるからだという。電力はこのような方法でまかなわれるため、電源管理は非常に重要だ。Clunis氏はOLPCのノートPCの電力消費は最近の典型的なノートPCが消費する20ワットから30ワットよりも「一桁少ない」と述べた。
OLPCのノートPCには、466MHz AMD Geode LX-700プロセッサ、256MBのRAM、1GBのフラッシュメモリドライブ(ただしjffs2を使用して圧縮されるので2GB分程度の容量が使用可能)、独自仕様のLCD、高速なNANDアクセス用の「CaFE」ASIC、カメラ、SDメモリカードスロットが搭載されている。ノートPC本体には、いくつかのUSBポートやプラグ差し込み口があるが、機械的に動作する部分はない。ただし、可動部分はあり、はね上げ式のワイヤレスアンテナと、底を中心に回転するモニタが付いている。
セッションの間、聴衆にはOLPCのノートPCが回覧されたのだが、大きめのお皿ほどのこの小さなマシンに魅了されてしまった人のところで長い間止まってしまうことが頻繁にあった。
聴衆の一人が、この秋にOLPCのノートPCの最初の出荷が行なわれることに触れた。その際には120万台のOLPCのノートPCがリビアに向けて出荷される予定だという。
Clunis氏によると、ノートPCの枠は、やみ市場や盗難の追跡をしやすくするために色分けされているという。またノートPC自体も比較的盗難の対象になりにくいように設計されていて、各ノートPCの親アクセスポイントの圏外では役に立たず、またマシンを使用するために何らかの形のキーが必要となっているとのことだ。
セッションでは、OLPCのノートPCが配られるような地域におけるOLPCのノートPCの価値について、冷ややかな見方もかなり多くあった。そのような地域の子供たちは食べるものにも困っているので、子供たちの親がOLPCのノートPCを売ることで得られるお金で買える少しばかりの食糧でも、その方がOLPCのノートPCが与える教育よりも価値があって本当にありがたいと思うのではないだろうかというものだ。
また同様に、犯罪率が高すぎて物を所有することが困難であるような最貧困国の国々の多くの地域において、子供たちがOPLCのノートPCを盗まれることなく持ち続けることは難しそうだと感じる人もいた。Clunis氏は、このような懸念に対する明確な答えは持ち合わせていなかった。
OLSの3日目は、会場の2階と3階の間の階段を私のノートPCが転げ落ちるというハプニングで幕を閉じた。8年もののDellは、PCとして使うことはもう無理のようで、大きな壊れた紙ばさみとしてしか使い道がなさそうだ。明日OLS 4日目は最終日だ。カーネルのSCSIメンテナであるJames Bottomley氏の講演でコンファレンスが締めくくられる予定だ。
