顧客であるITマネージャたちはその理由をこう説明するだろう。すなわち、あなたが売り込みをかけていた相手はNASAのスペースシャトル打ち上げチームと同じくらい激しいレベルのマルチタスクを行なう必要のある職業の人たちだったのだと。彼らは慢性的に忙しく、机に座っていることも滅多になく、組織のITインフラの機能を維持することに明けても暮れても全力で取り組んでいるのだ。彼らは、机に座っているときには予定外の邪魔が入るのを嫌う。しかし机に座っていないときにはあなたの話を聞く時間はない。さらには彼らを運良く捕まえることができたとしても、彼らの目線はあなたの頭上を越えたところでさまよい、彼らの親指はBlackBerryやTreoを忙しく触っていることにやがてあなたは気付くことだろう。
製品を売ることのできる確率を最大限に高めるためには、ITマネージャの身になって考える必要がある。つまり、効率良く的を射た説明をして、IT部門の限りあるリソースを尊重するということだ。
製品を売り込む際には、ずばり核心をつくようにしよう。ITマネージャは、差し迫った危機や多発する中断ということが日常的な世界に住んでいて、実際にあなたの話に興味がある場合であっても、製品デモを見るということだけでも、彼らのその日の仕事を増えてしまっているということなのだ。ウィスコンシン大学ミルウォーキー校でウェブサービス/電子リソースを担当するJohn Hubbard氏は「製品が何行のコードから出来ているとか、会社が何年に設立されたとかいうことはどうでもいい。そのようなことは、最新機能のデモや正確なコストを知る上で邪魔になるだけだ」と言う。
したがって製品そのものを使って訴えるようにし、凝ったスライドショーは控え目にするようにしよう。IT担当者は、購入を検討している製品をいじったり体験したりすることを好む。彼らは早く製品をこじ開けて中がどうなっているのかを覗き見したいので、あなたが早く帰ってくれないかと思っているのだ。この記事では匿名を希望したITマネージャによると「PowerPointのプレゼンテーションは見たくない……。技術的な質問をしたり、(教えてもらいながら)私が実際に操作することのできるデモをその場で見たりしたい。こんなこともできるという派手な例は見せてもらっても良いが、それが終わったら少し私自身に使わせて欲しい」とのことだ。
スミソニアン協会図書館(Smithsonian Institution Libraries)の新メディア・オフィス/保存サービス部門を率いるMartin Kalfatovi氏は、細部に注意を払うべきだとする。同氏のようなITマネージャの仕事というものは、タイプミスで追加されたたった一つのバックスラッシュが大きな支障を来たす類いのものなのだ。「(正しくはSmithsonian Institutionとすべきところを誤って)宛名が『Smithsonian Institute』になっている書類を数えきれないほど受け取る。確かに小さな間違いなのだが、この程度のディテールを正しく扱えないのなら他にどのような間違いを犯すことだろうかと考えずにはいられない」。別の女性のITマネージャは、あなたが「IT担当っぽい人」を探しているときにちょうど横を通りすぎて行った女性が実はIT部門のトップだったということがないようにとも助言した。
ITマネージャの上司に製品を売り込むことは避けるようにしよう。Equinox Software社社長のBrad LaJeunesse氏は、同氏がジョージア州立図書館に勤務していた頃を思い出して、同図書館の中央自動化ソフトウェアを動かす150万ドルのサーバに、自社のシステムを採用してもらおうとしていたベンダの話をしてくれた。同氏の表現によると「すごい売り込み様だった……本当に強力な売り込みだった」とのことだ。「ベンダの人たちは群れをなしてやって来た。ところが彼らのお偉方向けのミーティングには(より上層の)経営陣が招かれ、私は招かれなかった。確かに私は取るに足らない小者だったのだが、しかし実際にはIT関連の購入物の決定権は私にあったのだ」。LaJeunesse氏によるとそのベンダのサーバは購入されず、州立図書館はLaJeunesse氏の指揮の下に、低コストのLinuxサーバ上で稼動する、独自のオープンソースの図書管理ソフトウェア「Evergreen」の開発を開始した。
またもう一つ、ITマネージャの上司に製品を売り込むことは避けるようにしようという観点から言っておくと、「ノー」と言われたら「ノー」なのであり、購入決定者に製品の購入を拒否されたからと言って、その上司に訴えるのも良くないということを忘れないようにしよう。LaJeunesse氏によると「IT担当者が優秀であるならば、その上司はあなたではなくIT担当者の意見を聞く可能性が高い」という。セントラル・ミズーリ大学の電子サービス司書であるJenny Emanuel氏は、同氏が製品を購入しないことを決めた後、「私が彼らの製品を検討するのを怠けてきちんと業務をこなしていないと大学の学部長に訴えた」ベンダがいたと述べた。学部長がベンダを追い払うと、ベンダは今度は教授陣から製品を売り込んでもらおうとしたという。その結果、同図書館が再びそのベンダから何かを購入するようになるまでには、しばらくの時間がかかりそうだということになった(そしてそのためには明らかに、別の販売員が必要となるだろう)。
営業電話が有効である業界もあるかもしれないが、この記事のために意見を聞いたITマネージャたちは全員が、営業電話には良い印象を持っていないという点で意見が一致した。ITマネージャが机に座っているとき、彼らはベンダからの電話を待っているわけではない。彼らが机に座っているのは、ミーティング、システムの緊急事態、サーバ業務といった通常の仕事のあれこれの合間に、たまった書類を処理しようとしているからなのだ。そのため机に座ることのできる数分間は、彼らにとっては貴重な時間だ。みだりに邪魔をしないようにしよう。コネチカット州ダンベリー市立図書館で図書管理自動化を担当するKate Sheehan氏は「向うから突然電話をかけてきて、忙しいと言っても離してくれない人たちには、敵意を感じてしまう」と述べた。通常は、郵便や電子メールや予約したうえでの電話の方が印象が良く、またその方が、ITマネージャが製品についてと製品が彼らの組織にとってどう役立つのかという点に集中できるようになる。
同様に、訪問についても必ず予約を行なうようにし、突然立ち寄るのはやめるようにしよう。ITマネージャとは、コンピュータ関連の予期せぬ危機を山ほど抱えることが仕事だと言っても良いほどであり、予約なしの訪問はその仕事にさらに負担をかけるだけだ。当然ながらあなたも、あなた自身やあなたの製品のことを負担だとは思って欲しくはないだろう。カリフォルニア州サンマテオ郡立図書館の情報/ウェブサービスマネージャであるSarah Houghton-Jan氏は、「仕事場に突然現われて新製品を宣伝したいと言い、会話を終わらせて帰ってもらう努力をこちらがどれほどしても貴重な1時間を私から奪おうとするのなら……私がその製品を買うことはないだろう」と述べた。
