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FOSSコミュニティによく似た、学術分野における「オープンアクセス運動」

2007年08月07日 09:11 Bruce-Byfield(2007年8月2日(木)) 1 2
 FOSS(フリー/オープンソースソフトウェア)は、学術的な自由という理念と、何ものにも妨げられることのない情報交換という理念とに端を発するものであり、もともと学界からの影響を色濃く受けた考え方だが、この5年間に渡り逆にFOSSから学界に影響を与えているという。FOSSは今や、学界における「オープンアクセス運動」のモデルにもなっているのだという。オープンアクセス運動は、研究者に対しても一般大衆に対しても学術的な資料を制限なく閲覧可能にすることを促進することを目的とした運動だ。

 民主的ですべての人に優しい改革を社会のあらゆるレベルにおいて促進することを目的とする私設財団Open Society Instituteでオープンアクセス運動のプログラムマネージャを務めるMelissa Hagemann氏は、「考え方が非常によく似ているため、オープンソースの成功を知って以来、オープンソースはわれわれのお手本になっている」という。オープンアクセスがFOSSに似ているのは考え方だけではない。その他にも共通点として、それぞれの運動の歴史、新たなビジネスモデルを構築する必要性、ユーザの権利向上の実現、発展途上国における影響、それぞれの運動に対する抵抗勢力の存在などがある。

 オープンアクセス運動が可能になったのは、すべての人々が情報にアクセスすることのできる機会がインターネット文化のおかげで増えたためだ。とは言えオープンアクセス運動が誕生するきっかけとなったのは、第二次世界大戦以降存在している学術誌の出版が置かれた状況だ。ブリティッシュコロンビア大学教育学部言語教育学科のJohn Willinsky教授によると、この60年の間に学術誌の出版は、大学や学会に託されるのではなく、商業化されるようになってきたのだという。――これは、1980年代初期のソフトウェアのコモディティ化にそっくりの状況変化だ。Willinsky教授によると「このような変化は両刃の剣だった。出版の機会は増えたが、コストがかかるため流通の機会は減った」とのことだ。

 学術出版は少数の企業にほぼ独占されるようになったうえ、講読料も高騰し、10年足らずで400%も上昇した。そしてこのような高騰の結果、「定期刊行物の危機」として知られている状況が生まれた。講読料の上昇にともなって、経済状況の厳しい学術機関は購読を継続すべき学会誌の取捨選択を頻繁に行なわなければならなくなった。そしてその結果として図書館の書架から学会誌が消えていけば、図書館に学会誌が揃っていないとして、その図書館が付属している学術機関の評判に直接的な打撃を与える可能性もある。さらに言えば、大手の学術出版社はそれでも複数の学会誌をバンドル販売することができるので、「定期刊行物の危機」のために入手が困難になるのは小規模な出版社の学会誌や独立系の出版社の学会誌であることが多い。

 「定期刊行物の危機」は特に、学会誌のための予算が北米やヨーロッパよりもさらに厳しい状況である発展途上国において深刻だ。発展途上国では、プロプライエタリのソフトウェアで技術インフラを構築することが経済的に困難であるのとまったく同様に、自国の研究者たちが国際的な研究者コミュニティに余すところなく参加することを支援することが経済的に困難となっている。

オープンアクセスの創設

 2001年頃になると、以上のような問題の解決手段として、いくつかの学術グループがインターネットに注目し始めた。2001年12月、そのようなグループを代表する13名がブダペストに集まり、組織を作り、Budapest Open Access Initiative(ブダペスト・オープンアクセス運動)と呼ばれる文書を作成した。この文書は「かつてない公益を実現するため、古き良き伝統と新たな技術とが融合した」という文から始まるもので、すべての学術記事をオンラインで閲覧可能にすることを呼び掛けている。その後2003年4月にBethesda Statement on Open Access Publishing(オープンアクセス出版に関するベセズダ声明)が、そして2003年10月にはBerlin Declaration on Open Access to Knowledge in the Sciences and Humanities(自然科学と人文科学の知識に対するオープンアクセスについてのベルリン宣言)が発表された。どちらもオープンアクセスを実現する方法を提案するものだ。以上の3つの声明は、まとめて「BBB宣言」としても知られているものであり、オープンアクセスの発展において実際的な面と哲学的な面における基礎となっている。

 FOSSの場合と同様に、オープンアクセスに対する当初の反応は嘲笑的なものだった。『ブダペスト・オープンアクセス運動』の最初の署名者の一人であるHagemann氏は「人々はわれわれのことを笑っていた。私は様々な国においてプレゼンテーションを行なったが、プレゼンテーションでは嘲笑の声が聞かれた」という。当初、オープンアクセス運動の代表者たちは学協会出版社協会(ALPSP)のメンバーになることさえ一苦労した。ALPSPはオープンアクセスを痛烈に非難する声明まで発表していたのだ。またFOSSの場合とちょうど同じようにそのような非難には、オープンアクセスにはビジネスモデルが存在せず、持続不可能であるという点が含まれていた。その他の非難には、オープンアクセスは結局のところ自費出版に等しいものになるという点や、ピアレビューされなくなるという点も含まれていたが、実際にはどちらも根拠のない非難であることが明らかになっている。

 もう一つFOSSに似ている点として、オープンアクセスが広がるにつれて、抵抗勢力が政府に対するロビー活動を拡大し、訴訟の脅迫が行なわれるケースまで出てきたということがある。Hagemann氏によると、例えば米国立衛生研究所は、出版社のロビー活動グループの主張に従う上院/下院議員の介入の結果、オープンアクセスの導入を延期したとのことだ。また同様にHagemann氏によると米国出版社協会は最近、オープンアクセスに反対するキャンペーン活動を行なうためにワシントンのロビイストを採用したという。

 トロント大学の上級講師であり、オンライン出版社Bioline創設者の一人であり、『ブダペスト・オープンアクセス運動』の最初の署名者でもあるLeslie Chan氏は、「人々はわれわれのことを笑っていたが、今ではわれわれのことを非常に真剣に受け取っていて、政治的に対抗しようと活動している」という。Chan氏は、FOSS界でもよく引き合いに出されるガンジーの言葉を述べた。「彼等はまず無視し、次にあざ笑い、次に挑みかかってくるだろう。そしてわれわれが勝つのだ」。

 抵抗勢力に対抗するためオープンアクセスの支持者たちは、患者関連団体、図書館関連団体、その他の関連グループからなる連合体であるAlliance for Taxpayer Access(納税者のためのアクセス同盟)を設立し、公的援助を受けた研究は誰でもが無料で閲覧可能になるべきだと主張している。

最終更新:2007年10月07日 17:07