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新しいP2Pネットワークでは帯域幅を通貨として使用する

2007年09月25日 10:29 Mayank-Sharma(2007年9月20日(木))
 伝統的なピアツーピアネットワークにおいてピア間で行われる実質的な交換はファイルの転送に限られている。Triblerは、ソーシャルネットワーキングの概念を取り入れることでユーザ間のやりとりを向上させようとする新しいP2Pネットワークである。新しいアルゴリズムとプロトコルを使用することにより、Triblerユーザは気前よくアップロードすることで、より高速にダウンロードできるようにもなる。

 Triblerソフトウェアは、もともとDelft University of Technology(デルフト工科大学)とVrije Universiteit Amsterdamの研究者たちによって開発されたものである。Sven Seukenはハーバード大学のSchool of Engineering and Applied SciencesのコンピュータサイエンスPhDコースの2年生だが、彼は次のように言う。「今年、我々はTriblerソフトウェアに経済学的な方法論を取り入れるべく、TriblerグループとHarvard Economics and Computer Science研究グループの間で研究協力を始めた」。Seukenの指導教授であるハーバードのDavid ParkesとデルフトのJohan Pouwelse博士が“仮想帯域幅通貨(virtual bandwidth currency)”という概念を開発した。

 Seukenによると、仮想通貨システムはAzureusなどで使われるBitTorrentプロトコルの欠点を克服して、システムの能率を高めることができるそうだ。「クラシックなBitTorrentプロトコルは“お返し(tit-for-tat)”メカニズムの制約を受けている。つまり、ユーザはファイルピースをダウンロードしたいとき、通常は別のファイルピースをアップロードしなければならない」。多くのインターネット接続が非対称で、ダウンロード速度とアップロード速度が4:1にもなるようなら、事態はいっそう悪化する。ユーザが“お返し”メカニズムに基づいてファイルをダウンロードするとき、このことが問題になる、とSeukenは言う。要するに、ユーザのアップロード能力が低いために、ダウンロード能力をフルに利用できないのだ。

 しかも、このシステムにはダウンロードを終えてしまったユーザにさらにアップロードを促すような誘因がないので、多くのユーザは目的を達したところでファイル共有クライアントをオフにしてしまう。Triblerでは仮想通貨を導入することで、この問題を軽減できると期待している。ユーザはアップロードで通貨を得ることができ、後でその通貨を遣って高速なダウンロードを享受できる。どのユーザも他のピアとの交換インタラクションを記録し、BarterCastアルゴリズムを使って、この情報をシステム内の他のピアに転送する。「そのうち、システムのすべてのユーザが仮想通貨で交換できるような非集中化された信頼グラフが現れるだろう」

 Triblerはファイルのダウンロードを促進するために、ユーザどうしを仮想的な友達の輪で結び付けるというソーシャルネットワーキングの概念も使用している。ファイルをダウンロードするとき、同じファイルを共有していて互いに結び付けられたユーザのグループが“スウォーム”の一部となる。このスウォームに属するユーザが友人たちに助けを求めると、友人たちは彼が現在相手にしているスウォームと欠けているファイルピースについての情報を取得する。Seukenは次のように言う。「このようにして、彼らは同じファイルをダウンロードすることで彼と同じスウォームに参加し、ダウンロードしたファイルピースを彼に“無料で”転送することにより、事実上、アップロード帯域幅を寄贈することができる」

提供されているLinuxクライアント

 Triblerには、Windows、Mac OS X、およびLinux用のクライアントがある。インターネット接続が対称か非対称かに応じて、それぞれ2種類のTriblerクライアントが用意されている(機能は変わらない)。UbuntuユーザはバイナリパッケージによってTriblerをインストールするが、それ以外のLinuxユーザはソースからインストールしなければならない。TriblerはPython-wxGTK2.6、Python-m2crypto、VLC media player、ffmpeg、およびTorに依存している。Ubuntuクライアントには、ネットワーク上で見つかったファイルの表示を妨げるようなバグがあるが、対策が公開されている

 TriblerはP2Pクライアントとしてだけでなく、通常のBitTorrentクライアントとしても使用できる。Triblerでトレントを自動的に見つけ出すこともできるし、トレントWebサイトからトレントファイルをダウンロードすることもできる。通貨の概念はトレントファイルがどこにあろうと有効である。ただし、Triblerユーザどうしか、BarterCastアルゴリズムとGive-to-Getアルゴリズムを使用している互換クライアントのユーザとの間でしか有効でない。

 Triblerにはコンテンツフィルタ機能がない。「TriblerはオープンなP2Pシステムであり、ユーザはBitTorrentと同じプライバシーレベル(内)で望みのものを頒布できる」とSeukenは言う。

進行中の研究

 Triblerには、友達をつくる以外にも、ソーシャルネットワーキングの概念からとった機能がいくつか含まれている。このプロジェクトでは、どんなユーザがP2Pシステムに最もコントリビュートしているかをユーザーに知らしめるトップ10のアップローダリストを開始したばかりである。

 Seukenによると、開発者たちは同時に数多くの重要な研究トピックに取り組んでおり、ソフトウェアリリースのたびに新しい機能が実装されるとのことだ。「影響が最も大きい機能は完全に非集中化された信頼システムであろう。我々はBarterCastアルゴリズムに加え、仮想通貨による交換を安全なものにして、詐欺や攻撃を防ぐためのプロトコルと取り組んでいる。実際に運用できるようになれば、すべてのユーザがTriblerクライアントを採用するか互換プロトコルを使用する限り、P2Pファイル共有システムでのダウンロード速度を2~3倍にすることが可能だ」。Triblerチームでは、Triblerユーザどうしがコミュニケーションできるチャット機能など、新たなソーシャルネットワークテクノロジを次のバージョンに組み込もうと作業を進めている。

 Triblerプロジェクトは面白いアプローチをとっており、ソーシャルネットワーキングの概念とピアの力で動作するダウンロードネットワークをミックスしている。ネットワーク上には既に多くのコンテンツが存在する。まだ開発中のものも含め、ユニークな機能がいくつもあるという点で、TriblerはP2Pネットワークを再定義する要素をすべて備えていると言える。

Linux.com 原文

最終更新:2009年06月30日 18:06