調和とは複数のものを同時に最適化することである ― IT分野における重要な命題の1つに、活動やプロジェクトには多数の技術的および組織的な選択が伴うが、そのいずれにも確かな正解は存在しない、というものがある。同時最適化をはかるということは、これまでとはまた違った最適な技術的設計を導入する場合に対象となる組織の状況や課題の理解に心を砕かなければならないことを意味する。ITシステム設計の従来の手法は、想定上の“考えられる最高のシステム”を与えられた予算の範囲内で考え出したうえでその実装を進めることである。確かにGeorgeは“大惨事”が起こる直前までこのやり方に従っていた。だが残念ながら、ITに関する教訓集はこうした技術指向のプロジェクトに起こった同じような悲劇であふれている。経験から明らかに言えるのは、ITの活動やプロジェクトの成功は技術面と社会面の双方に対するさまざまな配慮のバランスをうまくとることによって成し遂げられることが多いということだ。このことは、社会的な側面においては、全方位的なコミュニケーションを採用すること、早いうちから継続的にユーザの意見を意思決定に反映させること、最終的な目的と用途に向けて設計と実装を一致させることを意味する。たとえば、高度な情報技術を医療現場に導入するためには、当然ながら医療関係者(特に強い発言力を持った医師)の意見や賛同が必要になる。でなければ、医療スタッフがその技術を“気に入ってくれる”ことにベンダがどれほど自信を持っていても、その試みは失敗するだろう。
組織には個性があり、1つの方法がすべての組織で通用するわけではない ― 表面的に見れば、ITの標準化には多大な価値とコスト削減効果があるように思える。実際、その通りであることが多い。しかし、たいていの場合は組織ごとに(同一組織内の別グループにも)かなりの独自色がある。しかし、絶対的な必要性によって複数の組織をまとめて扱うことになったり、あるいはシステムの適合性、方針、使命、目的、スタッフ配置、求められる入力または出力の多様性など、実装にとって重要な意味を持つ多数の違いからテクノロジが機能しない、または最大限の努力が無駄に終わるといった事態に見舞われたりする可能性がある。ITマネージャの役割は、適度で十分に考慮された組織の個性を活かした選択を十分な情報に基づいて行えるように意思決定者を手助けすることである。逆に、そうした個性に対応するために、ハードウェアやソフトウェアの選択肢を数多く用意することは避けること。そうした選択肢は、相互運用性の低下を招くとともに結局は問題をシステム全体に広げてしまうおそれがある。特にしてはならないのが、深く考えずによそからITの新技術をコピーしてきて自らのシステムに取り込むことだ。なぜなら、その技術は“そこでうまく機能するように作られた”ものだからである。こうした行為により、トロイの木馬の失敗を自らが味わう破目になる可能性がある。こうした問題の最適な解決策になり得るのは、やはり全方位的なコミュニケーションとユーザの十分な参画である。しかし結局、組織の独自性の問題への対処は、十分な情報を手にしたうえで難しい選択を行う意思決定者に委ねられることになるだろう。
システムの有効性と効率性はユーザの満足度と関係がある ― あらゆる手を尽くしてもユーザがITシステムに満足しない場合、あなたが加えた改良はいずれも十分に活かされていないか、適切に使われていないか、あるいは巧妙に妨害されている可能性が高い。以前から知られていることだが、ユーザたちはプロジェクトに反抗して政治的な影響力を行使することによって、疑うことを知らないITマネージャを悩ませることさえある。ここでも、ITシステムまたは手続きの変更によって大きな影響を受ける人々から意見を集めたり、参画を求めたりすることが重要になる。ユーザをIT活動やプロジェクトに参加させるときには、進行中の新たな試みに対する継続的な改良の情報を収集する手立てだけでなく、その過程でユーザの満足度を絶えずサンプリング評価する方法も用意しておく必要がある。ユーザとの濃密なコミュニケーション、ユーザによる参加およびフィードバックの活動により、当初は懐疑的だったユーザを将来のIT改良プロジェクトを声高に支持する人々に変えることも不可能ではない。
計画に基づく変更はITマネージャに成功をもたらす ― ITに関する活動とプロジェクトのほぼすべては、それまでの組織の社会的側面に対する変更の組み合わせである。ITマネージャの仕事は、こうした計画に基づく変更が一見でたらめな形をとりながらも全体として適切に見えるように働きかけることである。幸いにして、ITプロジェクトを発展させるとともに、組織に対する計画された変更を誰にとっても魅力的なものに変える革新的な方法がいくつか存在する。
ITマネージャの活躍の舞台は、複雑で技術の改良と変更が果てしなく続く世界である。有能な技術者であるあなたは、そうした難題に際して真っ先に現場に呼び出されるかもしれない。しかし、すでにおわかりだろうが、ITマネージャには技術者やテクノロジをただ管理する以外にも多くの仕事がある。短期的にも長期的にもITの改良プロジェクトが順調に進みやすいのは、ITに関する変更が組織にもたらされる際に生じる技術的側面と社会的側面の双方の問題を同時に検討している場合である。
Ken Myers博士は米海軍を退役してノースウエスト航空常勤副社長を務めた後、応用組織科学の研究者およびコンサルタントとして長い間活躍。現在はオンライン大学Touro University Internationalで経営管理およびIT管理のコアプロセッサを務める。
Robert LambはBooz, Allen, Hamiltonのシニアコンサルタント。現在、米空軍の暗号刷新プロジェクトに参加している。オンライン大学Touro University InternationalでIT管理の修士号を取得予定。
