ゲームのプレイモード
NERO 1.xで行えた対戦はデスマッチ形式のバトルだけであり、これはマップ上で両陣営が戦闘して、敵軍をすべて殲滅させるか、あるいは制限時間内により多数の敵兵を倒した方が勝利するというゲームである。
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| NERO 2の“テリトリーコントロール”対戦モード。手前にそびえ立っているのが陣地を示すコントロールポイント |
そしてNERO 2.0では新たに“テリトリーコントロール”という対戦モードが導入された。テリトリーコントロールの対戦では、戦場に配置された多数の陣地を占領することが両軍にとっての目的となる。コントロールポイントのデザインは鋼鉄製の街路灯とでもいった姿になっているが、これらはロボット部隊の集結地かつ量産拠点として機能する。つまり占領したコントロールポイントの数が多いほど、1度に配備できる兵員数が増えることになる。
プレーヤとしての熱の入り方で比べると、先のデスマッチバトルよりもこのテリトリーコントロールの方に軍配が上がるだろう。デスマッチバトルでプレーヤにできるのは事前のトレーニングがすべてであり、その後の戦闘ではトレーニングの成果を戦場で確認するだけの傍観者としてしか参加できないからだ。それに対してテリトリーコントロールの対戦では、事前にトレーニングしたロボット部隊を量産するごとに、どのコントロールポイントを攻撃目標とするかを指示できるようになっており、プレーヤはリアルタイムでの判断を迫られることになる。
プレーヤが傍観者とでしか参戦できないNERO 1.xのデスマッチバトルを拍子抜けだと感じたユーザであっても、このテリトリーコントロールなら楽しめるのではないだろうか。逆に、人工知能の自律判断による対戦を目的としているユーザにとっては、不完全な人間の判断が介在するテリトリーコントロールなどは意に染まない対戦モードかもしれない。よくよく考えてみるとこのソフトウェアは、人間の代わりにロボット部隊に自らの行動を決めさせて対戦させることが目的のゲームであったはずである。
新出した問題点
私はこの新バージョンについて、テリトリーコントロールの対戦に関するヒントを解説できるほどやり込んではいない。もっとも、今回新たに発生した問題点についていくつか確認しているので、その点を説明しておこう。
その1番目だが、NERO 1.xにおいては対戦画面上で敵と味方を区別しやすくするため、両軍のロボットを異なるモデルで描画する、攻撃時の砲煙を異なる色で表現する、各ロボットごとに明るいリングを表示させ移動時にも追跡するようにしておくという3種類の措置が取られていた(いずれの表示も、各陣営ごとにブルー系とレッド系の配色で統一)。
NERO 2.0では、各個体を目立たせるためのリング表示が廃止されたため、対戦時の識別が行いにくくなっており、目を凝らさないと見分けが付かないくらいだ。この問題から生じるフラストレーションは、テリトリーコントロールの対戦においては倍増することになる。それというのも、ロボットの量産はコントロールポイントのクリックで実行できるのだが、どちらの陣営が占領しているかはズームインしないと確認できず、またコントロールポイントを操作するには再度ズームアウトさせる必要があるからだ。いずれにせよ個体識別用のリング表示は、ユーザ設定可能なオプションにしてもらいたいところである。
2番目の問題は、カメラコントロールに柔軟性がない点である。視点移動は一般的なw-a-s-dキーに割り当てられているが、これは水平方向の移動だけで、上および下方向の移動はできない。もっともmキーを押してマウスビューに切り替えれば、上と下方向からの俯瞰とwおよびsキーによる移動ができるようになる。実際、移動するだけならマウスモードの方が楽なのだが、このモードではオブジェクトにアクセスできないため、テリトリーコントロールモードでの対戦で使うには非常に不便である。
こうした不備はトレーニングモードでも顕在化している。ここでもオブジェクトが区別しにくいためズームインする必要があり、また見下ろす位置によっては一部のトレーニング情報にアクセスできなくなるのだ。例えば、現在のトレーニング成績はID番号別で示され、各ロボットのID番号はスペースバーを押すことで表示させることができるのだが、こうしたID番号もある程度ズームインしないと識別できないため、トレーニングの進捗を確認するには頻繁にポーズをかけてズームインとズームアウトを繰り返すことになる。
オープンソース化に向けての動き
こうしたID番号表示の問題は純然たるバグであって、デザイン上の仕様などではないだろう。こうした問題も仮にNEROのコードがオープンソース化されていれば、次のリリースまで待つことなく即座に改善されていたはずである。この件に関しては、明るい展望を予感させるニュースが流れている。
NEROの人工知能部を司っているアルゴリズムについては現状でもソースコードが入手可能であり、同ゲームの残り部分についても、開発陣は以前よりオープンソース化を歓迎するという発言をしている。それを妨げている最大の障壁は、同ゲームの根幹を成しているプロプライエタリ系のTorqueエンジンの存在である。
そしてこの夏にNERO開発陣の一部グループが手がけ始めたのが、NERO 2.0のオープンソース版クローン作成であり、これは非公式にOpenNEROと呼ばれている。現状での進捗状況はソースコードを一般公開できるレベルまでは進んでいないそうだが、今後OpenNEROが目指す方向についての概略はリリースされている。
初期目標として掲げられているのは、オープンソース版のゲームエンジンを用意して既存NEROのクローンを作成することである。その次の目標はゲームの人工知能部を入れ換え可能にして、異なる学習モジュール間での競争を実現することだとされている。
プログラマの1人であるIgor Karpov氏は「最初のステップはNERO 2.0の主要なコア機能の再構成をすることですが、その次はより一般化を進めて、現行のNERO/NEATだけではなく様々なAIメソッドを搭載したバリエーションを作成できるようにしたいですね」と説明している。もう1人のプログラマであるJohn Sheblak氏がNEROフォーラムのコミュニティで語っているのは、対戦モードをユーザレベルでデザインできるようにしたいという構想である。
NEROファン待望のこうしたオープンソース版ゲームのリリースは、実現するとしてもしばらく先の話になるだろう。同ゲームの開発陣は、その多くが現役の大学生であるが、現在この構想を実現するために鋭意作業を進めているところである。またゲームのソースコードが公開された暁には、外部から多量の支援を得られることになるのは間違いないはずだ。
当座は、NERO 2.0で新たな対戦モードが追加されたことが、Linux用ゲームのプレーヤにとっての恩恵でもあることに満足しておこう。
NEROのようなタイプの対戦ゲームのいったい何が面白いのかさっぱり理解できないという方もおられるかもしれないが、これ以上の思考力を要求される対戦ゲームというのもざらには存在しないはずである。自分は一線級の戦略家であると自認しているゲーマであれば、NERO上でその腕前を試してみることで、このゲームの完成度を実感できるはずだ。
