Sun Report Builder:OpenOffice.org用の優れたレポート作成機能

 OpenOffice.org Baseが強力なデータベースアプリケーションであることは確かだが、そこに組み込まれているレポーティングエンジンについては“非力”とか“時代遅れ”といった印象が拭えない。幸いなことに、もはやこうした現状に甘んじる必要はない。Sun Report Builder(SRB)というエクステンション(拡張機能)を利用すれば、Pentahoのレポーティングエンジンをベースにしたすばらしいレポーティング機能を追加できるからだ。ただし、一切のヘルプ情報なしに使いこなせるとしての話だが。

 Pentahoはオープンソースの非常に優れた情報分析およびレポーティングツールを手掛けている。今回紹介するSun Report BuilderはSunとPentahoの協力から生まれた最初の成果であり、数か月前にアナウンスされたものだ。Pentaho独自のレポーティングツールほど強力ではないが、それでもOpenOffice.orgの既存のレポーティング機能に比べれば格段の進歩を遂げている。ただ残念なのはこのSun Report BuilderがOpenOffice.orgの2.3以降でしか動作しないことで、古いバージョンのユーザがこの新しいツールを利用するにはOpenOffice.orgをアップグレードしなければならない。

 SRBは.oxtパッケージとして提供されているため、従来のOpenOffice.orgエクステンションと同じようにインストールすればよい。インストールを行うには、最新のsun-report-builder_x.x.x.oxtパッケージをダウンロードし、OpenOffice.orgを起動して「ツール」→「拡張機能マネージャ」を選択する。続いて、「マイ拡張機能」セクションを選択した状態で「追加」ボタンを押す。そこで先ほどダウンロードしたパッケージを選択して「OK」を押し、最後にOpenOffice.orgを再起動すればよい。

 ほかのエクステンションとは異なり、SRBをインストールしてもメニューの項目は増えない。OpenOffice.org Baseにダイレクトに組み込まれるからだ。SRBを開くには、Baseのメインウィンドウを「レポート」セクションに切り替え、「デザイン表示でレポートを作成」というリンクをクリックする。

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Sun Report Builder

 SRBの外観と動作はBaseのフォームビルダによく似ているので、フォームの作成を行ったことがあれば、SRBのインタフェースと基本機能についてはすぐに理解できるだろう。デフォルトでは、ブランク状態のレポートウィンドウが「ページヘッダー」、「詳細」、「ページフッター」の3つのセクションに分かれている。ヘッダーおよびフッターのセクションは、通常、レポート名、日付、ページ番号といった項目用に使われる。レポートがデータベースから動的に参照するコンテンツは、「詳細」セクションに表示される。右側の「プロパティ」ウィンドウには、選択中の要素で利用可能なすべてのオプションが表示され、「レポートコントロール」をはじめとするツールバーを使えば各種レポートデザインツールに素早くアクセスできる。

 レポートのデザインは、適当なページセクションにフィールドを追加し、フィールドのプロパティを指定することによって行う。ただし、フィールドを追加する前に、レポートで使用する表を指定する必要がある。具体的には、まずメインツールバーの「レポートナビゲータ」ボタン(またはF5キー)を押して一番上の「レポート」という項目を選択する。続いて「プロパティ」ウィンドウの「データ」タブをクリックし、「内容の種類」ドロップダウンリストから「テーブル」を選択して、「内容」リストから使いたいテーブルを選択すればよい。

 次に、レポートにフィールドを追加するには、「レポートコントロール」ツールバー上の適当なボタン(たとえば「テキストボックス」)を押し、フィールドを表示したい場所を矩形で指定する。さらに、「プロパティ」ウィンドウの「データ」タブで、追加するフィールドを選択すれば完了だ。

 レポート内のデータの並べ替えやグループ化もまた、同じくらいにわかりやすい。「表示」→「並べ替えとグループ化」を選択し、グループまたはソートキーとして使用するフィールドを選択して、利用可能なプロパティの指定を行えばよい。また、並び替えまたはグループ化の基準を追加すると、新しいページヘッダーが挿入されるので、そこに好きなグループ化または並び替え処理のタイトルを追加することができる。

 簡単なテキストフィールド以外にも、SRBでは関数と呼ばれる計算フィールドも作成できる。関数を作成するには、「レポートナビゲータ」内にある「関数」という項目を右クリックして、「新機能」を選択する。「プロパティ」ウィンドウの「数式」フィールドで必要な計算式を指定し、「名前」フィールドに関数名を入力する。作成した関数は、レポート内のフィールドにバインドすることができる。

 関数の作成は特に込み入った作業ではないが、数式の正しい記述方法を理解するところが難しい。SRBにはマニュアルが用意されていないので、どんなオペレータやフォーマットがサポートされているのかは謎に包まれたままなのだ。

 実は、これがSRB現行リリース版の最大の弱点になっている。便利な機能がいくらか備わっていても、オンラインヘルプやドキュメント類がなければほとんど無意味なのは明らかだ。SRBのWikiには初期段階のメモが何点か含まれているが、どう考えてもマニュアルには見えない。

 全体として見れば、Sunによるこのレポーティングツールの初回リリースは立派な成果だといえる。しかし、適切なドキュメントが用意されない限り、高度な機能の大半は普通のユーザには使いこなせないだろう。

Dmitri Popovはロシア、英国、米国、ドイツ、デンマークの各コンピュータ誌に寄稿しているフリーランスのライター。

Linux.com 原文