基調講演
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| 基調講演を行うBeetle氏 |
土曜朝のToorCon 9の幕開けを飾ったのは“ファック”という用語が連発されて上品とは言い難い口調で語られた「Wolverine, Yo' Mama, Spooks, and Osama」という基調講演であり、その演者はBeetleと名乗るセキュリティ関係のエンジニアで、同氏自身が自分は予定演者がキャンセルしたせいで呼び出された土壇場の代替要員だと説明していた。しかしながら同氏の講演が終了した際に受けた感想は、聴衆の中に今回の演者交代の結果に不満を覚えた人間はいなかったろう、というものであった。
この基調講演におけるBeetle氏の舌鋒は、ありとあらゆる人間に矛先が及んでいた。Marvel Comicsのストーリは誰が決めているのかを手始めとして、SlashdotやGoogleのあり方、あるいはワシントンの政治家やアメリカ国民の姿勢、果てはハッカーコミュニティそのものに至るまで容赦ない不満をぶちまけていたのである。
Beetle氏はここ数年間に出版されたコミックブックのストーリ展開に対して脱構築理論を用いた辛辣な批評と批判を加えた後、聴衆の一部に彼らの意見を尋ねだし、私がこの講演はいったい何処に向かっているのかと不安を感じ始めた頃、同氏の話はSlashdotとGoogleに関する話題に切り替わったのである。その際に示されたのがSlashdotに掲載された各種のニュースに対するコメント数を集計した一連のグラフであり、Slashdotの世界では、関係するすべての事実が明らかになる前の段階において、オタクやブロガー連中の展開する根拠の乏しい見解だけでオピニオンが形成されては、単なる推測が内輪的に事実化扱いされるということを論証していた。
またBeetle氏は、先に触れたJohnny Cache氏とDavid Maynor氏の出来事を事例の1つに取り上げていた。最終的に実際に何が起こっていたかは、昨年Maynor氏が機密保持義務から解放された段階で明らかにされたのだが、その時点でこの件についての興味は失われてしまっていたのである。
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| spook(スパイ)とGoogleにはどちらも2つの"O"が含まれている。偶然? |
次に話題はGoogleに移ったが、その冒頭で語られたのは、NSAがネット上で展開しているはずのスパイ(spook)活動やデータマイニングがアメリカ国民に対しても行われているであろうという疑惑であった。そしてGoogleもこれと同様の行為を行っており、ユーザによる検索実行時に収集したデータを利用して、ターゲット型広告のセールスを展開しているというのである。
Beetle氏はまた、中国に対するアメリカ国民の意識に対しても警鐘を鳴らしていた。つまりワシントンの政治家に煽られる形で、中国製玩具の塗装に鉛が含まれていることが世間では問題視されているが、それよりもアメリカ軍や政府機関のネットワークに中国がスパムやクラッキングを仕掛けているのはどうなのかと。これが大した話題になっていないということは、そんなものはアメリカ国民にっとって些細な出来事に過ぎないのだろうと皮肉っていた。
こうしたBeetle氏の講演終了後の反応だが、上品とは言い難い“ファック”の連発は話にアクセントを加えた程度でしかなく、むしろ全聴衆が同氏の語りに魅了され、その辛辣な意見に朝の眠気を吹き飛ばされていたようである。コンベンションの開幕イベントとしては、称賛すべき出来であったと評していいだろう。
2つ目の基調講演「Black Ops 2007: Design Reviewing the Web」の演者を務めたのはDan Kaminsky氏であり、順番的にBeetle氏の次に配置されていたことは多少不運であったかもしれないが、いずれにせよ同講演の終了をもって本コンベンションは正式に開幕されたのである。
