Ubuntu 7.10は秀逸なリリース

 Canonicalが今月Ubuntu 7.10(コードネームGutsy Gibbon)をリリースした。前リリースのFeisty Fawnと同様に、Gutsyは新機能と最新フリーソフトウェアアプリケーションを重視した最先端ディストリビューションだ。今回試してみたところ、いくつかの小さな不具合があるものの、Gutsy Gibbonは素晴らしい新機能を持つ高速なオペレーティングシステムだと分かった。

 Ubuntuには大きく分けて3つのバージョンがある。つまり、デスクトップ環境にGNOMEを搭載したUbuntuと、KDEを搭載したKubuntuと、Xfceを搭載したXubuntuだ。その他にもUbuntuには派生物があり、フリーソフトウェアのみを含んでいてクローズドソースのコンポーネントを含まないGobuntu解説記事)や、教室での使用に向いているEdubuntu解説記事)などがある。

 Ubuntu、Kubuntu、Xubuntuはどれも、以前のバージョンと同じインストール方法を使用している。Ubuntuは、グラフィカルなインストーラがあるライブCDとしてブートすることもできるし、あるいはインストールCD経由でセットアップすることもできる。インストールCDを使うと、テキストモードのインストールの際に詳細なオプションを設定することができる。Ubuntu 7.10では、インストールCDを使用してインストールする際に、ハードディスクを暗号化するためのオプションが増えた。ライブCDのインストーラはおそらく、私が使ったことのあるオペレーティングシステム用インストーラの中で、最も簡単に使うことができた。

 今回テストマシンとして使用したのは、AMD Athlon 64 X2 3800+ プロセッサと、Nvidia 7300GTビデオカードと、2GBのRAMを搭載したマシンだ。ただしGutsyを動かすためには、256MB程度のメモリを搭載した標準的なハードウェアを使用すればまったく問題ないだろう。

 今回は、Gutsyの64ビット版をインストールした。ハードウェアアクセラレーションを有効にするためのバイナリのビデオカード用ドライバは、前リリースと同様に、たやすくインストールすることができた。最初にUbuntuを起動すると、Restricted Driver Managerがバイナリドライバが利用可能かどうかを知らせてきて、希望すればインストールすることができるようになっていた。Ubuntuは私のマシンのNvidia GeForce 7300GTをすぐに検知した。ドライバを有効にしてマシンを再起動すると、ビデオカードの機能をフルに利用することができるようになった。

 Ubuntu 7.10では、システムにインストールされているビデオカードがハードウェアアクセラレーションをすぐに利用できる状態になっていれば、3D画面効果を可能にするCompiz Fusionが自動的に有効になる。そうでない場合には、次回バイナリドライバをインストールした状態でコンピュータを起動したときに、自動的に3D効果が有効になる。3D効果には2つのレベルがあり、デフォルトの「Normal」レベルでは、使用する資源を最小限に抑えるために一部の効果(コンポジティング、陰影、アニメーション最小化など)のみが有効になる。一方「Extra」レベルでは、ほとんどの効果(はためくウィンドウ、作業画面切り替えのアニメーション化、透過など)が有効になる。Compiz Fusionにはマウスホイールを使って作業画面をスクロールすることができるなどユーザビリティに関する改善点もいくつかあるが、システム資源にさらに負担をかけるほどのメリットはないと感じたので私は通常はそれらの効果を無効にしたままにしている。もっとも、驚くべきことに私のシステムの場合これらのデスクトップ効果を有効にしたまま3Dゲームをしたときにもパフォーマンスの低下は見られないようだった。

 ゲームについて言えば、Neverball、Frozen Bubble、Tux Racer、Chromium、Doom 3をインストールしたところ、どれも期待通りに動いた。なおDoom 3はFeisty上よりもGutsyでの方が実際にやや高速だった。

 今回のUbuntu 7.10のコアインストールにはユーザ切り替えツールが含まれていて、タスクバー上に表示されるようになっていた。この機能はシステムを複数人で使用する場合に便利だ。2、3回のクリックとパスワードの入力を行なうだけで、現在使用しているユーザがログオフすることなく、別のユーザがマシンを使用することができるようになる。また、高速検索のためにファイルをインデックス化するTracker検索ツールもデフォルトで含まれている。

Ubuntu 7.10シリーズの機能のまとめ

 Ubuntu/Kubuntu/Xubuntu 7.10には共通して、2.6.22カーネル、Xorg 7.3、OpenOffice 2.3、Firefox 2.0.0.6、AppArmorが含まれている。それらに加えて各バージョンには、それぞれを特徴付ける機能もいくつか含まれている。

Ubuntu

GNOME 2.20、Pidgin 2.2.1、GIMP 2.4.0-rc3

高速ユーザ切り替え機能、APT経由のFirefoxアドオンサポート、Tracker検索ツール、Compiz Fusion 3D効果

Kubuntu

KDE 3.5.8、Kopete 0.12.7、Konqueror 3.5.8、Amarok 1.4.7、Kaffeine 0.8.5

デフォルトのファイルマネージャとしてDolphinを採用、Restricted Driver Manager、Strigiデスクトップ検索、GDebi(.debインストーラ)

Xubuntu

Xfce 4.4.1、Pidgin 2.2.1、GIMP 2.4.0-rc3

新テーマ「Murrina Storm Cloud」、APT経由のFirefoxアドオンサポート、Totemメディアプレイヤ、Brasero CD/DVD作成ソフトウェア

 UbuntuにインストールされているFirefoxにはいくつかの新機能が追加されていて、特にアドオンやプラグインを簡単にインストールできるようにするための機能などがあった。Flashプラグインをインストールしていない状態でFlashを使用したウェブサイトを閲覧しようとしたところ、Ubuntuがダウンロードとインストールをオファーしてきた。これまでのバージョンでは、いくつかの標準的なプラグインが利用できるようになっていない64ビット版を使用している場合、プラグインのダウンロードやインストールは手動で行なう必要があった。なおFirefoxはFlashプラグインをインストールしただけでなく、32ビットのFlashプラグインを64ビット用のブラウザ内で動かすためのラッパーであるnspluginwrapperもインストールした。以上はすべて問題なく動き、数回マウスをクリックするだけで数分のうちに64ビットのFirefoxと32ビットのFlashプラグインとを動かすことができるようになった。さらに言えば、FirefoxのAdd-on(アドオン)ウィンドウには、Get Ubuntu Addons(Ubuntuアドオンを取得)という新しいオプションが追加されていた。この新機能を利用すれば、AdblockやTabextensionsといったよく使われるプラグインをFirefox内からAPTを使用してダウンロードすることができるようになる。

 Ubuntu 7.10には、GNOMEの最新版であるGNOME 2.20が含まれている。GNOME 2.20の新機能としては、Evolutionのバックアップ機能、画面をロックしている状態のときにgnome-screensaverにユーザ宛てのメッセージを残すことができる機能、geditの新しい構文ハイライト機能、様々なテーマのオプションを整理統合したAppearanceという新しいアプレットなどがある。なおGNOME 2.20は私が使ったことのある中では最も高速なバージョンだった。

 今回のリリースではセキュリティも強化されている。Ubuntu/Kubuntu/Xubuntuにはすべて、コンピュータをより安全にするためのセキュリティフレームワークを実装したAppArmorが含まれるようになった。AppArmor開発者の目標は、AppArmorフレームワークをユーザに対して透過的にすることとのことだが、私はAppArmorの存在に気付かなかったので、どうやらその目標は達成しているようだ。AppArmorは目立たないように動作して、何らかのアプリケーションが乗っ取られた場合に備えて、オペレーティングシステムの特定のコンポーネントに対するアプリケーションからのアクセスを制限する。

残念な点

 残念ながらUbuntu 7.10にもそれなりに不具合はあって、細かいものもあれば深刻なものもあった。例えば、Rhythmboxで音楽を再生しているときに時折雑音が混じったり、特に原因が見あたらないのに片方あるいは両方のスピーカが機能しなくなることもあった。ただしAmaroKではこの問題は起こらなかった。このバグはGutsyがリリースされる前に報告されていたのだが、最終版にもまだ存在していた。なおこのバグについては、メインの音量調節バーを100%以外の位置に設定するという、推奨されている「対処法」があるものの、私の場合はうまく行かなかった。

 私が遭遇した別の細かい問題点には、GNOMEデスクトップ上にランチャを作成する度に、ホームディレクトリに余分なフォルダが保存されるというものもあった。フォルダは「file:」という名前で、存在する目的は特にないようだった。私はこのバグをGutsyがリリースされる前に報告したのだが、今回新しくインストールしたシステムでもやはりこの問題は残っていた。

 さらに、数回リブートした後には、ユーザ切り替えツールが正常に起動することができなくなってしまい、様々なエラーメッセージが表示されるのを止めるためにユーザ切り替えツールを削除せざるを得なくなった。この問題は、ビデオカードのためにバイナリドライバをインストールした後に現われるようになったようだ。

 最後に、オフィシャルのUbuntuフォーラムには、偶発的に起こるフリーズに悩まされているというメッセージがNvidiaカードを使用しているユーザから数多く寄せられている。このバグはクローズドソースのドライバのバグであるため、Ubuntu開発者の手落ちではない。しかしそれでもこの不具合によって、それ以外の点では堅固なリリースであるUbuntu 7.10の評判が傷付くことになっているのは事実なので、Nvidiaがこのバグに対処するまでは、Ubuntu開発者は旧版のドライバを採用するようにしておいた方が良かったのではないかと感じた。Gutsyのインストールを考えているなら、手持ちのカードに関する既知の問題点がないかどうかをまずオフィシャルのフォーラムで確認しておくと良いだろう。

 確かにいくつかの不具合を経験することにはなったものの、私にとってUbuntu 7.10の新機能はそのような不具合を上回るものだった。Ubuntu 7.10は完璧なリリースだというわけではなく、確かにやや性急にリリースされた印象もあるが、正しい方向へ一歩進んだリリースであり、最終的には来春リリースされるLTS版の安定化にもつながるリリースだ。有名なディストリビューションUbuntuの新版であるUbuntu 7.10は、私のマシン上ではこれまでのどのリリースよりも高速で走り、初心者ユーザも上級者ユーザもどちらも確実に楽しむことができる新機能も満載で、非常に頼もしく動いている。

Jeremy LaCroixは時間がある時に記事を執筆しているIT技術者。

Linux.com 原文