描画に関するまとめ
思いも寄らないほどハイエンドなグラフィックアプリケーションを使っていた人からすれば、ないと困りそうな機能のいくつかがGoghには欠けている。たとえば、レイヤ名だ。ほとんどのグラフィックエディタではレイヤに名前を付けられるが、Goghではできない。しかし、Goghはスケッチや描画だけを想定して作られており、たとえばWebサイトのモックアップや写真のレタッチは想定されていない。それに、レイヤマネージャでのサムネイル表示があればレイヤの区別は容易につく。
とはいえ、いくつかの点については改良の余地がある。たとえば、Goghのレイヤは常に透明であり、それはそれでよいのだが、作品をJPEGやPNGにエクスポートすると必ず背景が白になってしまう。複数の色を使った背景を自作してレイヤとして追加することは可能だが、画像に透明な背景を付けてエクスポートすることはできない。
Goghのようなシンプルさを意識したエディタの場合は、不用意な補助ツールの追加が裏目に出るおそれがあることは承知しているが、もう少し追加の機能があってもよいのではないかと思うことがある。たとえば、別のレイヤに移すために絵の一部を切り取れる部分選択のツールなどだ。
唯一バグではないかと思われたのは、ファイル保存時の挙動である。Goghは必ず、Goghを立ち上げたフォルダに描画結果を保存しようとする。最初のうちはそれでも問題なさそうだが、ユーザ自らが別の保存用フォルダを選択したあとは次回のファイル保存時にもその場所を覚えておくべきだろう。
Goghの開発者Aleksey Nelipa氏によると、今後は追加ツールやレイヤ間のより複雑な制御も含め、もっとリリースを増やすという。一方で彼は、Goghを使う簡単さと楽しさはそのままにしておきたい、またできる限り純粋なPythonプログラムとして開発を続けたいとも語っている。プロプライエタリなナチュラルメディア(従来のアナログ的な描画の意)アプリケーションをずっと利用してきたNelipa氏が、初めてLinuxとPythonを使って開発に着手したのがこのGoghだった。そのため、Goghの開発は彼にとって学びの機会でもある。それでも「アイデア、提案、機能の要望は大歓迎だ」と彼は言っている。
もちろんGoghは、GIMP、Krita、Inkscape(いずれもペンタブレット入力に対応している)のような堅牢で十分に成熟した画像エディタの代わりにはならない。しかし、小さくまとまって直観的にわかりやすいアプリケーションとしての存在意義はある。Goghは描画を楽しめるツールであり、結局はそこが大事なのではないだろうか。
