仮想世界と今後の展望とその他
Second Life(SL)の運営企業であるLinden LabのLiana Holmberg氏は、2007年1月に行われたSLビュワーのソースコードのリリースに始まる、同社とオープンソースとの関わりの歴史を簡単に説明した。その後もSLをめぐる開発者コミュニティは成長を続け、Lindenサイドもコミュニティ側の要望に応えるための活動を継続的に行うようになったとのことだ。その結果、メーリングリストやソースコードリポジトリなどのインフラストラクチャが整備された他、Lindenのオフィシャルアプリケーションに対して外部プログラマがパッチを提供した場合に双方の権利を守るための共同作業に関する行動規範などが定められたそうである。
既に昨年8月、Lindenはコミュニティからの貢献に対しInnovation Awardsという形で謝意を示しているが、これは開発ペースがあまりに高速に進行したため、目に見える形の誠意を何ら示さないまま1年間も放置しておく訳にはいかないための措置であった。Holmberg氏によると、Lindenのオフィシャルクライアントから派生したSLビュワープロジェクトが現在8から10件進行中だとのことだ。このオフィシャルクライアントについては各種のLinuxディストリビューションに対する移植やパッケージ化が進められており、また同社はメインのSLグリッドで使われている情報、World内オブジェクト、ユーザアイデンティティを他のオンライン仮想世界との間で交換するプロトコルを定めるため、昨年9月にSecond Life Grid Open Architecture Working Groupミーティングを開催している。
もっともこうしたソースコードのフローは、完全に一方通行化されている訳ではない。Holmberg氏によると、Lindenからはeventletおよびmulibなどの内部開発されたPythonユーティリティがリリースされており、OpenJPGおよびOpenALといったアップストリーム側プロジェクトへの貢献も行っているとのことだ。これら2つのライブラリはSLビュワー本体でも使われており、また同時にビュワー開発コミュニティにおいてもプロプライエタリ系コンポーネントをオープンソースの同等品に置き換えるために大いに利用されているものである。
Holmberg氏は、こうした活動に興味のある者に対して開発活動への参加や、SLを使い込んで新機能の実装に貢献することも呼びかけていたが、長期的な観点における最優先課題は、商用、フリー、パブリック形態ないしは特定企業の運営する他の仮想世界とSLとを接続するオープンな規格やプロトコルを構築することであると語っていた。Lindenとしては、SLのようなインタラクティブ型3D空間こそがオンライン世界の将来を握っていると認識しており、その構築を誰もがアクセスできるオープンな形態で進めることに貢献したいとのことである。
夕方の時間帯は参加者主催の各種BOFセッションであらかた占められていたが、話題の中心となっていたのは主としてオープンソース系のプロジェクトやアプリケーションに関してである。例えば私が顔を出したInkscapeのBOFでは、その開発者であるTed GouldおよびJosh Andlerの両氏が、数週間以内にリリース予定のInkscape 0.46に装備される新規の機能セットをデモンストレーションしていた。そうした新機能の中には、マウスないしタブレットのカーソル操作による描画オブジェクトの変形操作を簡単に実行可能とするライブ動作型のパスエフェクトおよび調整ツールが含まれていた。前バージョンのInkscapeではSVG仕様に準拠した最初のフィルタであるBlurが装備されていたが、メジャーなアップグレードとしてはこうしたSVG Filter関連の強化も予定されており、新たなバージョン0.46ではSVG Filter仕様の大部分が実装され、また複雑なフィルタ操作をユーザ登録して複数オブジェクトへの繰り返し実行を可能とするフィルタパイプラインエディタが利用可能となるはずである。
Gould氏とAndler氏は聴衆側から出された質問に答え、プロジェクトの今後についても語り、詳細なロードマップは提示されなかったもののバージョン0.46後のInkscapeについては初夏頃までに次回のポイントリリースが行われるかもしれないとしていた。InkscapeはGoogle主催のSummer of Code(SoC)にて多くの学生が取り上げているプロジェクトでもあり、このスケジュールどおりに進めば、今年度の2008 SoCにおける参加者はアップデート後の安定版リリースを使って作業できるようになるかもしれない。
