2つのユーティリティの比較
本稿で取り上げた2つのツールは、いずれも各種の入出力フォーマットに対応した上で豊富なオプションが指定可能であるため、処理速度を基準にした比較はそれ程意味をなさないであろう。実際のコンバージョン処理にどれだけの時間を要するかは、ハードウェアのスペックおよびツール上で指定したビデオの品質レベルが、最大の要因となるはずだからである。
むしろ自分が使うビデオコンバータとしてどちらを選択するべきかは、操作性と柔軟性を基準とすべきだろう。例えばポータブルデバイスに多数のコンテンツを転送するというタイプの用途であれば、クリック一発で必要な出力設定が指定できる機能を重宝するはずだ。そうした観点で見た場合、WinFFおよびRippedWire/HandBrakeGTKは、的確な設定の施された豊富なプリセットを利用できる点で至高の存在だと言えるかもしれない。
単純なプリセット数だけで言えばWinFFの方に軍配が上がるが、この数は基本設定の派生タイプ(16:9か4:3か、NTSCかPALかなど)が多い分だけ上げ底されている点を差し引かなくてはいけない。逆にプリセットを用いずにユーザが変換オプションをゼロからカスタマイズする場合は、RippedWire/HandBrakeGTKのGUI画面の方がWinFFよりも扱いやすいはずだ。またどのような変換オプションが利用可能であるかは個々のコーデックごとに異なる話だが、WinFFの変換設定を自力でカスタマイズする場合は、その際に用いるコーデックに関する知識だけでなくFFmpegのコマンド構文も把握しておかなくてはならない。
FFmpegは強力な変換ツールだが、それ故にWinFFにおけるFFmpegへの依存性の高さが、一部のユーザにとっての難易度を高くしている点も否めない。またFFmpegプロジェクトは、いつまで待っても安定したリリースを出さないということで悪評高く、そのためFFmpegパッケージを同梱するディストリビューションは、いずれもSVNリポジトリからコードを取得して独自にテストを施すことを余儀なくされている。よってディストリビューションが異なればFFmpegのバージョンも異なっているはずであり、回帰テストの結果や新機能の装備状況も統一されていないのが実状である。また仮にユーザが自力でプロジェクトのSVNリポジトリからコードを取得してFFmpegを独自ビルドするとしても、その結果の安定性に関しては何の保証も得られないことを覚悟しておかなくてはならない。
これと対照的なのがHandBrakeプロジェクトであり、こちらは安定版リリースのテストとパッケージ化を定期的に実施している。特定バージョンで問題が発生した場合は、開発者に報告するかユーザフォーラムで相談してみればいいだろう。
このようにどちらのコンバータも長所と短所を有している。一番お手軽な選択肢は両方のツールをインストールしておき、実際に自分が使用するポータブルデバイスなど、必要な出力フォーマットがどちらかにプリセットされていないかを確認することであろう。そうしたものがデフォルトで用意されていなかった場合は、RippedWireの操作性に優れたGUIツールを介して必要な設定を見つけ出せばいいが、こちらのユーティリティで自力で理想に近い設定が得られなくても、インターネットを検索することで他のFFmpegユーザが会得した設定上のヒントを探し出せるかもしれない。いずれにせよ自力で対処可能なオプションが豊富に用意されているツールというのは、称えるべき存在ではないだろうか。
