次のステップは悪いユーザインタフェースのお手本のようだった。このアップグレード用スクリプトでは、アプリケーションがインストールされる度に新たなウィンドウ(Timidityのインストール時に表示されたものと同類のもの)が開くようになっていた。有難いことに当該アプリケーションのインストールが終わればウィンドウは閉じるのだが、その後、作業中のあらゆる画面の中で一番上にその次のアプリケーションのウィンドウがポップアップする。そのためアップデート中にコンピュータを使おうとするのは、まるで戦いだった。というのも何かを入力しようとする度にウィンドウがポップアップして、作業中の別のアプリケーションからフォーカスを奪ってしまうのだ。さらには、別の何かをクリックしようとしたときにマウスのカーソルの下にウィンドウが現われたので誤ってキャンセルをクリックしてしまいそうになってしまったことまであった。この問題の他にも、推定残り時間やインストールが完了したパッケージ数やインストールすべき残りのパッケージ数など、アップグレード作業の全体的な進捗状況を示すものが全くないという問題もあった。
アップグレード開始から約10分後には、また別のユーザビリティ上の問題点に遭遇した。Debianベースのシステムを使用したことのあるユーザなら、アップグレードの際には全パッケージがいったんすべてダウンロードされた後に適切な順序で一度にまとめてインストールが行われるということをご存じのことと思う。ところがUEのアップグレードはそういう方法では行われず、アプリケーションごとにダウンロードとインストールが交互に行われた。そのためアップグレード作業の間中何度も、異なるライセンスやインストールの確認や設定についての質問に対応するように求められた。通常のDebianのアップグレードでは、このような質問は一度にまとめて行われる。確認はインストール開始前に、設定についての質問はインストール作業の最後に行われるため、アップグレードの間にユーザは別の作業にも取り組める。ところがUEでは、予測不可能な間隔でポップアップする質問に応えるためにコンピュータに張り付いていなければならなかった。このことと、使用中のアプリケーションの上に新たなウィンドウがポップアップすることから、約45分間のアップグレード作業はひどく苦痛だった。
アップグレードの最後で要求されたリブートの後も、Adobe Flashプレイヤについてはウェブサイトにある手順に従って手動でインストールしなければならなかった。これほど多くの時間をかけて「アップグレード」したというのに、実は不必要なアプリケーションを多数インストールしただけで、ほぼ毎日使う主要機能の一つをさらに手動でインストールしなければならないということは、もはや信じ難かった。UEでは3つの異なるピアツーピアクライアントが同時にインストールされるのだが、私にとってそれらは役に立たない。しかしFlashは役に立つ。OpenOffice.orgのスペルチェッカーが利用可能であることも同様に役に立つのだが、この機能もデフォルトでは欠けていた。便利さを売りにしているディストリビューションとしては、便利なプログラムが明らかに欠けていた。また実のところ、使うことのないアプリケーションをUEのスクリプトを使って「自動的に」インストールする方が、よく使うアプリケーションを手動でインストールするよりも時間も手間もかかった。
ここまででとりあえずは最初のアップグレードがすべて完了したので、音楽でも聞いて休むことにした。私の大量のMP3コレクションを迅速に扱うことができるのはXMMSだけなので、まずはXMMSを起動しようとした――が、メニューには含まれていなかった。そこで端末を開いてxmmsを実行しようとした――がだめだった。XMMSはインストールされていなかったのだ。こうなってくるとUEのアップグレード用スクリプトには一体どういう基準で選んだプログラムが含まれているのか不思議になってしまった。単に開発者の個人的な好みなのだろうか。
APT経由でXMMSをインストールしようとしたが、UEがデフォルトで使用するcustomソフトウェアリポジトリには含まれていなかった。そこでデスクトップにあるUpgrade(アップグレード)ショートカットのCustomオプション経由でインストールしようと思いCancel(キャンセル)ボタンをクリックしたところ、スクリプトが「Distribution Upgrade Scriptを実行中」と表示して新たなウィンドウがいくつかポップアップした。つまり驚いたことにCancel(キャンセル)がOKの動作をしたのだ。そこでしぶしぶXMMSのソースコードをダウンロードすることにした。ところが今度は、APT経由で必要なライブラリをインストールしたのにも関わらず、XMMSのconfigureスクリプトを実行するとそれらがインストールされていないと表示された。結局XMMSについては、Ubuntu上でコンパイルするためのオンラインのチュートリアルの手順に従ってコンパイルした。
それではUEには一体何がインストールされていて便利だというのだろうか。6つの統合開発環境、3つのBitTorrentクライアント、3つのIMクライアント、2つのIRCクライアント、そしてWindowsのNotepadがWine経由でインストールされていた。コンピュータを使うときには、FlashやJavaやスペルチェッカーよりもNotepadの方が絶対に不可欠だとでもいうのだろうか。ちなみにスペルチェッカーについて言えば、問題の原因は、カナダの辞書を使用するように設定してあったのにも関わらず、その辞書が存在しなかったことだったと分かった。デフォルトで利用可能な辞書を使うようにするのが当然だと思うのだが、どうやらそうではない考え方もあるということのようだ。
UEに豊富に揃っているものの一つはゲームだ。customアップグレードスクリプトで用意されているほとんどのアプリケーションはゲームだ。Linux用ゲームに興味のあるユーザなら、これほど揃っていることは嬉しいかもしれない。あまりに豊富なのでここでは挙げ切れないが、メジャーなものをいくつか挙げれば、America's Army、Wolfenstein: Enemy Territory、Open Arena(Quake III ArenaのOSSコンテンツパッケージ)、Nexuiz、Glest、Legendsなどが用意されていた。
Linuxを使い始めたばかりで、手動で何かをインストールする方法がまったく分からないという場合などには、数多くのインストール用スクリプトの存在が便利である場合もあるかもしれない。しかしそれ以外のほとんどの場合には、純粋なUbuntuを利用してaptのソースにcustomリポジトリを追加する方が「Ultimate Edition」と称するディストリビューションをダウロードするよりもおそらくいいだろう。
Preston St. Pierreはブリティッシュコロンビア(カナダ)のフレイザー・ヴァレー大でコンピュータ情報システムを学ぶ学生。
