Phoronix Test SuiteによるLinuxデスクトップのベンチマーク実行

 オープンソースのテストツールにはさまざまなものがあるが、最近になるまで2台のLinuxマシンで簡単にパフォーマンスの測定と比較ができるものはなかった。だがこの問題は6月にリリースされた Phoronix Test Suite (PTS)によって見事に解決された。このテストスイートを使えば、複数のLinuxマシンの評価と比較により、Webサーバのホスティングやゲームのプレイといった特定のタスクに適した環境設定を見つけ出すことができる。

 PTSを開発したのは、Linux搭載ハードウェアのレビューや分析で有名なPhoronix.comというサイトの運営も行っているPhoronix Mediaである。PTSを利用する場合は、ソースのtarballのほか、Debian/Ubuntu用のコンパイル済みバイナリもダウンロードできる。依存関係は最小限に抑えられており、詳細なインストール手順も付属する。

 このツールには、論理的なグループ化によって23のスイートに分けられた57種類のテストが用意されている。たとえば、encode-oggテストを実行してシステムでのOggエンコーディングのパフォーマンスをベンチマーク評価したり、audio-encodingのテストスイートを使ってmp3、Ogg、FLAC、APE、WavPackエンコーディングのベンチマークを実行したりできる。PTSに用意されたテストおよびテストスイートにより、生物情報科学、ゲーム、GUIツールキット、オーディオおよびビデオのエンコーディング、Apacheの構築、PHPの実行、Linuxカーネルのコンパイルといったタスクにおけるマシンのパフォーマンス評価が可能だ。PTSはPhoronixのレビューにも利用されているため、パッケージには、デスクトップおよびサーバマシンのグラフィック機能やマザーボードをテストするいくつかのPhoronix Certification and Qualification Suites(Phoronixが自社のレビュー用に設計したもの)が含まれている。

 PTSはコマンドラインツールだが、十分なドキュメントがあって使いやすい。インストールが済んだら、たとえば「benchmark gaming」と入力して、ゲーム実行時のマシンのパフォーマンスを評価してみる。すると、ゲーム評価用スイートにあるすべてのテストの取得、コンパイル、インストールが自動的に行われ、テストが実施される。マシンのCPUパワーが別の処理に割かれることがないように、テスト実行中はPTSによって電源管理やスクリーンセーバといった周辺サービスが一時的に停止される。

 PTSで実行されるすべてのテストには、個々のテストを識別するユニークなグローバル識別子が必要になる。テストが完了すると、大量のテスト結果データがコマンドラインインタフェース上に表示される。シンプルな棒グラフのほうがよければ、そうした結果をブラウザに表示させることも可能だ。ベンチマークに関する情報(テストの種類と数値の意味)の表示のほか、テストを実行したハードウェア(プロセッサ、マザーボード、チップセット、メモリ、ディスク領域、グラフィック、画面解像度)やソフトウェア(OS、カーネル、X.Orgサーバ、OpenGL、コンパイラ、ファイルシステム)の詳細情報や、テスト実施日時、実行ユーザ、テスト時に動作していたほかのアプリケーションといった情報の記録や表示もPTS側で行われる。

 おそらくPTSの最もすばらしい点は、PTS Globalというオンラインサービスが存在することだろう。これは、世界中のPTSユーザによって実行されたテスト結果のリポジトリである。自分のテストが終わるたびにその結果をPTS Globalにアップロードする機能も用意されている。PTS Globalでは、アップロードされた日時順にテスト結果が表示される。また、簡単な検索インタフェースを使って、特定のマザーボード、プロセッサ、グラフィックチップセットで実行されたテスト結果や、マシンで実行しているディストリビューションやカーネル、コンパイラを指定して条件に合う結果を探し出すこともできる。

 しかし、PTS Globalは単にテスト結果を集めただけのものではない。PTSを使って自分のマシンでテストを実行し、その結果をPTS GlobalのWebサイトにある特定のベンチマークと比較できるのだ。つまり、Fedoraが動作している自分のマシンと、同等スペックの(プロセッサやメモリ容量、マザーボード、チップセットが同じ)Ubuntuマシンの間でLinuxカーネルコンパイル時のパフォーマンスを比較したければ、PTS Globalの検索インタフェースを使ってそうしたマシンのテスト結果を見つけ、そのグローバル識別子を使って同じテストを自分のマシンで実行すれば比較可能なデータが得られる。たとえば「root-9170-30463-10839」というグローバル識別子を持つマシンのテスト結果と比較する場合は「phoronix-test-suite benchmark root-9170-30463-10839」というコマンドを実行するだけでよい。すると、該当するテストの取得、コンパイル、実行が自分のマシンで行われ、その結果がPTS Globalから読み込まれたデータと比較表示される。

 PTSはあらゆるタイプのLinuxユーザにとって便利で使いやすいアプリケーションであり、ドキュメント類も揃っている。日常的にレビューを実施している私の場合、大量のテスト結果のバックアップに使えそうだ。仮想化環境におけるFedoraとUbuntuのパフォーマンス調査を私が進めている間に、次のページにあるMichael Larabel氏(Phoronixのオーナーであり、PTSの主任開発者)のインタビュー記事も参照しておくとよいだろう。そちらには、彼がプロジェクトを立ち上げたきっかけ、ハードウェアおよびソフトウェアベンダから寄せられる関心、今後の開発予定が記されている。

Linux.com 原文