FSFの懸念
「確かに、ACTAに対するFSFの姿勢は、取り越し苦労の面もあります。(上記の論文が)書かれた経緯からして、厳密な評価を下すのは難しいですね。ACTAはフリーソフトウェアを傷つけるかもしれないし、傷つけないかもしれない。ただし、いずれにせよ、フリーソフトウェアのユーザにとって潜在的に危険なものになると私は考えています」(Matt Lee氏)
こういった危険の多くの根源は、論文で提案されている立法化にある。DRMに法的な根拠が与えられるというだけでも、フリーソフトウェアの生き残りには越えがたい障害となるだろう。
実際のACTAがこの論文ほどの厳罰主義ではないと仮定しても、その重大性はなお深刻である。論文の記述を見る限り、この提案に基づく条約や法律において、明らかなファイル共有の例(GNU/LinuxディストリビューションのDVDイメージのダウンロードなど)とプロプライエタリのソフトウェアや音楽の違法ダウンロードが区別されるという確証はまったくない。同じことは、バックアップの作成などの正当な目的でDRMを迂回するケースにも当てはまる。このような区別が存在しないとしたら、BitTorrentクライアントがインストールされているだけでも十分にコンピュータ押収の理由となるだろう。
同じように深刻な問題は、ACTA関連法が十分な知識のない人々によって執行される可能性が高いことである、とLee氏は指摘する。フリーソフトウェアやフリーフォーマット、場合によっては非標準のハードウェア(非iPodミュージック・プレーヤーなど)の使用がトラブルをもたらす恐れがある。特に、条約調印国の税関を通る際に。
「コンピュータを調べた職員が、『おい、WindowsもOS Xも入ってないぞ。あんたが使っているこのGNUオペレーティングシステムってのは、いったいなんだ?』と言うかもしれません。あるいは、グラフィカル・インタフェースを使っていなかったり、少しばかり違うシステムを使っていたりしたら、職員はパニックになるでしょう。Dvorak配列のキーボードを持っているだけで別室に連れて行かれることもあり得ます。このような種類の判断を、デバイスが問題かどうかを判定するだけの技術スキルを持たない人々に委ねることになるのです。それまでに見たことのあるものを根拠に、彼らは仕事をするのですから」
