このように多様な処理が行えるincronだが、現行バージョンでは対処できない処理もいくつか存在している。例えば私が試した限り、新規に作成したファイルをGeditで開かせるという処理はすべて失敗してしまった。その際に設定したエントリは「/home/linuxlala IN_CLOSE_WRITE gedit $@/$#」というものである。これと同様の、指定イベントをトリガにしてincronにアプリケーションを起動させるという処理は、すべてのグラフィカルアプリケーションで失敗している。つまりファイルの新規作成あるいは削除や移動時に、Gedit、Akregator、gnome-terminalなどを起動させるエントリを各種記述してみたのだが、これらのアプリケーションは一向に起動してくれないのだ。
次に少し発想を変えて、homeディレクトリでの新規ディレクトリ作成時にGeditを介して当該ディレクトリ中にquotes.txtというファイルを作成させる「/home/linuxlala IN_CREATE gedit /home/linuxlala/quotes.txt」というエントリをincronに処理させることにしてみた。ところが結局のところ、この処理もうまく動作しなかったのである。同様に/usr/bin/geditといったグラフィカルアプリケーションのフルパスを指定しても結果は改善されなかった。その一方でincronを介した各種スクリプトの呼び出し、コマンドに対するファイル名の引き渡し、mplayerによるオーディオ/mp3ファイルの演奏開始などは、すべて問題なく処理されているのである。このようにグラフィカルアプリケーションを上手く扱えない理由については、開発者に問い合わせてみたものの今のところ返事はもらえていない。
incronは小型ながらも大きな将来性を期待させるユーティリティなのだが、現行バージョンではグラフィカルアプリケーションに未対応であったり再帰的な処理ができないなど、若干の問題点が残されている。しかもincronがディレクトリ階層を再帰的に監視できない点については、かなり以前からTO-DOリストに掲載されたままになっているのだ。こうした現行のincronに対する私個人の評価は、コンセプト的には優れているものの、メインストリームのツールとなるには今一歩の開発努力が必要というものである。
Shashank Sharmaは、フリー/オープンソース系ソフトウェアの初心者向け記事の執筆およびLinux.comフォーラムボードの管理を行なっており、Apress社から刊行されている『Beginning Fedora』の共著者でもある。
