SMPlayer:MPlayerのラッパーとなる高機能なマルチメディア・プレイヤー

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 ソフトウェア用語では、別のオブジェクトに対するインタフェースを提供するものをラッパーと呼ぶ。SMPlayerは、MPlayerのラッパーとなる高性能なマルチメディア・プレーヤーだ。使いやすい強力なフロントエンドでMPlayerを操作できる。その用途は、DVDやVCDの視聴、Web上の動画のストリーミング再生、オーディオCDやMP3の再生など、多種多様だ。

 SMPlayerのバージョン0.6.2が8月に登場した。ライセンスはGPLv2だ。KDEの基盤としても使われているQtライブラリを使用していることから、KDEデスクトップとの親和性が非常に高い。LinuxのみならずWindowsでも使用できる。

 SMPlayerをインストールするためには、まずMPlayerをインストールしておく必要がある。ただし実際には、ほとんどのディストリビューションには、MPlayerが同梱されているか、利用可能になっているはずだ。また、最新版のSMPlayerはQt4.4.1を使用するため、libqt4ライブラリも必須だ。SMPlayerのインストールでは、使用しているディストリビューション用の標準のパッケージ・アプリケーションを利用できることが多い。私の場合は、Smart翻訳記事)を使用し、「sudo smart install smplayer」でインストールできた。ダウンロード・ページでは、いくつかのディストリビューションの専用バージョンや、最新の開発版もダウンロードできる。ただし開発版は不安定な場合があるので注意が必要だ。コンパイルは、ダウンロード・ファイルに同梱のinstall.txtに従って行う。

試用記

 SMPlayerの最初の起動時には、CDやDVDに使用するドライブを指定する必要がある。この設定を後で変更するには、[オプション]→[環境設定]→[ドライブ]を使用する。またSMPlayerは、英語のほか、ヨーロッパやアジアの複数の言語に対応している。言語の設定は、同じく[環境設定]ウィンドウで可能だ。[インターフェイス]オプションをクリックして[自動検出]を選択すると、環境に応じた言語が自動で選択される。また、手動で言語を選択することも可能だ。さらに、[詳細設定]オプションで、モニタの縦横比を設定する。私の場合は1400×900なので、16:10だ。

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SMPlayerの画面

 外観に関する設定項目もある。デフォルトのアイコンの変更や、画面上の時間情報の表示についての設定が可能だ。また、好みに応じて、インタフェースを簡素化した“ミニGUI”も利用できる。こちらは、SMPlayerの再起動後に設定が有効になる。

 設定オプションは他にもたくさんある。たとえば、キーボードやマウスのショートカットはすべて自由に変更可能だ。マウスのホイール操作には、動画の早送りや巻き戻し、ボリューム変更、ズーム率の変更、再生速度の変更などの機能を割り当てられる。設定可能なキーボード・ショートカットの数は150以上に及ぶ。

 MPlayerのオプションも直接指定でき、その機能をフルに活用できる。また、映像や音声のオプション(および画面上のイコライザー)を使って、使用環境に合った最適なパフォーマンスを引き出せるようにSMPlayerを調整することも可能だ。

 SMPlayerはリソースの浪費もない。私が以前どこかで目にした報告では、MPlayerで動画の全画面再生を行うとかなりのCPUリソースを食うとの話だった。だが私の環境(CPUは1.8GHzのデュアルコアPentium、OSはopenSUSE 10.3)で試したところ、CPU使用率は高くても10%程度だった。私がふだん動画再生に使っているKaffeineと比べてみても、結果は同程度だった。

 SMPlayerの特徴的な機能の1つが、再生を中断した状態でSMPlayerを終了した場合でも、次回その続きを同じ場所から再開できるという機能だ。もう1つが、複数の動画を順番に再生できるプレイリストの作成機能だ。必要に応じて順番を並べ替えたり、ランダムな順番にシャッフルすることも可能だ。また、ループ再生を行うリピート機能もある。

 SMPlayerでは字幕も非常に柔軟に制御できる。あらゆるフォーマットに対応しているうえ、設定項目も数多い。[環境設定]ウィンドウでは、字幕のフォント、色、サイズの設定や、SSA/ASSライブラリを使って表示スタイルを向上させる設定が可能だ。(字幕のスタイルについて詳しくは、オンラインのヒントを参照してほしい。ヒントではこの他にも、ツールバーの設定やオーディオ・イコライザーの使用など、さまざまな話題について役立つ情報が紹介されている。[ヘルプ]→[ヒント]から参照可能だ)。映画を再生するときには、字幕をその場で変更できる。クローズド・キャプションへの対応や、字幕位置の上下移動、サイズ変更も可能だ。映像と字幕の同期がうまく取れていない場合には、字幕のタイミングを前後に調整できる機能もある。さらに、字幕が付いていない場合には、www.subtitles.orgで目的の字幕を探したり、字幕をアップロードすることもできる。

 普段はKaffeineで動画を再生している私だが、SMPlayerは設定項目も豊富で、すばらしいアプリケーションだと思った。完全乗り換えも選択肢として十分に考えられる。

Federico Kerekiはウルグアイ在住のシステムエンジニア。20年以上にわたり、システムの開発、コンサルティング活動、大学での教育指導を続けている。

Linux.com 原文(2008年9月11日)