CDをセットするだけで使えるLinux、PC/OS

 PC/OSは、箱から取り出してすぐに、そして簡単に使えることを目指しているLinuxディストリビューションだ。Ubuntu系として利用者への優しさで先行しているだけでなく、Ubuntuの範疇を超えて、サードパーティー製の非GPLソフトウェアであっても一般に使われているものを同梱することで使いやすさを実現している。

 PC/OSディストリビューションには、OpenServer、OpenWorkstation、OpenDesktopという3つのフレーバーがある。いずれも700MBほどで、ちょうどCD1枚に収まる。サーバー・エディションには、Webminなど、サーバーの管理を容易にするためのGUIユーティリティーが、ワークステーション・エディションにはマルチメディア制作ツール、ソフトウェア開発ツール、オフィス・ツールが搭載されている。これらに対して、今回試用したデスクトップ・エディションは日々の利用を想定したものだ。

 多くのディストリビューション同様、PC/OSもライブCDイメージの形で提供されており、ライブCDを作ってインストールなしでも使えるし、ブート時にハードドライブにインストールすることもできる。インストールは容易だ。使用するユーザー名とパスワードを入力し、ディスクのパーティションを自分で切るかPC/OSに任せるかを選ぶ。これで、CD上のソフトウェアはすべて自動的にインストールされる。ソフトウェアの選択はできない。同じシステムにLinuxがインストールされていれば、PC/OSのインストールが終わる前に既存のLinuxからユーザーをインポートすることができる。ただし、今回の試用ではインポートはしなかった。試用に使った512MBのRAMを搭載したAMD Sempron 2800+のPCの場合、インストールはおよそ25分で完了した。リブートして動作を確認すると、すべてのハードウェアが正常に検出され、Nvidiaドライバーをインストールするポップアップが表示された。

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PC/OSのデスクトップ

 PC/OS OpenDesktop CDイメージにはXfceデスクトップのほか、そこで行うさまざまな作業のためのプログラムが含まれている。オフィス・アプリケーションはAbiwordGnumericの2つだけだが、メニューのOfficeセクションにGoogle Docsへのリンクが用意されている。ネットワーク系では、ブラウザーはFirefox、電子メールにはThunderbird、IMにはPidgin、VoIPにはSkype、BitTorrentにはTransmission、そしてダイアルアップで接続する利用者のためにGnome PPPが用意されている。

 また、マルチメディア系では、CDリッピング用にAsunder、CD制作用にBrasero、音楽の再生用にExaile、ビデオの再生用にVLCが用意されている。イメージ編集用に同梱されているのはスタンドアロンのThe GIMPだけだ。しかし、ゲームは豊富だ。Solitaire、FreeCell、BlackJackなどのカード・ゲームのほか、チェス、麻雀、Mines、Gnometrisなどがある。Wineが搭載されているので、Windowsアプリケーションも動かすことができる。デフォルトでインストールされていないプログラムは、Synapticを使って追加すればよい。あらかじめ、Ubuntu Hardyリポジトリーと、さまざまな小規模リポジトリーが設定されている。

 そのほか、PC/OSの特徴として、Java Runtime Environment、Adobe Flash Player、プロプライエタリーのマルチメディア・コーデックが搭載されている。「利用者に優しい」を自称するディストリビューションはほかにもあるが、その多くは理念への固執や法律上の制約で、こうしたソフトウェアを搭載していない。しかし、自分でインストールできない小規模利用者にとって、それが大きな悩みの種になることがある。

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PC/OSのアプリケーションメニュー

 しかし、PC/OS OpenDesktopの「利用者に優しい」という看板にいつわりはない。完璧ではないかもしれないが、コンピューターに馴染みのない人でも一人でインストールし使うことができるだろう。最新のWindowsオペレーティング・システムでもこれほどではあるまい。その上、大概のディストリビューションはより多くのソフトウェアを搭載しようとDVDに切り替えている中、PC/OSは1枚のCDに収まるのだ。PC/OSは利用者が本当に必要とするプログラムだけを搭載することでスリム化を果たしている。簡潔性は、利用者に優しいソフトウェアを設計する際の健全なる原理である。

 PC/OSは、試用中、淡々と動いた。Webの閲覧、インスタント・メッセージング、文書作成、マルチメディアの再生などといった日常的な作業を行ってみたが、障害もなければ問題もない。追加の設定作業もソフトウェアのインストールも必要なかった。試用中に発生した問題はなかったが、PC/OSについて質問することのできるフォーラムもある。

 PC/OSには注目すべき新しいソフトウェアは何も含まれていない。しかし、それはPC/OSの目標ではない。これまでLinuxを使ったことのない人が試しに使ってみようと思ったときの優れた最初の一歩となることこそがPC/OSの目標なのだ。PC/OSは、そうした人たちに、Linuxがどれほど簡単に使えるかを見せてくれるだろう。

Preston St. Pierre フレーザーバレー大学(カナダ・ブリティッシュコロンビア州)でコンピューター情報システムを専攻する学生

Linux.com 原文(2008年12月5日)