一般市民の参加プロセスとしての意義
こうしたサービスの展開に関しては、既存のインフラストラクチャやニーズとの統合という、技術的な側面以外における重要性も有している。つまり、先に取り上げたアプリケーションはいずれも納税者に対するアピールを主目的に開発されたものではなく、具体的な行政上の問題に対処するためのソリューションないしは、手作業にて行っていた既存の行政サービスをデジタル化したというだけの存在に過ぎないとも言えるのだ。
特に注目すべきは、これらのWebサイトに共通する“公的なGISデータの構築ないし提供”という手法であり、例えばアレッツォのケースが“住民参加によるプランニング”と呼ばれているように、先の事例では行政の活動内容およびその場所と方法の決定に関係する情報提供を、地域住民に対して求めているのである。これらの場合、公的なGISデータベースに対する情報追加が行政機関に属さない一般住民の手によって直接実行可能とされており、しかも座標や地形の情報にせよその他の地理データにせよ、将来的な再利用を容易にするため、専用の変換処理を必要としない汎用フォーマットにて扱うようにされている。つまりここで取り上げたケースにおいてオープン化されているのは、データ管理のプロセスであって、そのためのソフトウェアではないのだ。
確かにOpenStreetMapといった構想の成功例や、Yahoo!およびGoogle MapsのAPI群公開という状況を考え合わせると、行政機構が関与しない形でこの種のサービスおよびプラスアルファを独自作成することも可能だと思われるかもしれない。しかしながら、デジタルマップを始めとする各種の地理データ群を一般市民の手で最大限に活用するのであれば、これまで行政機関が道路の敷設や都市計画その他の用途に用いてきた地図やデータベースとの緊密な連携を、公的な形式にて行うことが不可欠となるのだ。
具体的な応用例としては、バス停、トレッキングエリア、郵便局といった公共サービスを新規に設置する場合に、この種のWebサイトを介して住民からのリクエストを提出することも可能だろう。あるいは、違法な建築物、公共財の破損、不法投棄などに関する通知システムとして利用したり、住民が望むバス路線を、市議会のWebサイトに用意された地図上に直接描画するという制度を実現できるかもしれない。
しかしながらこうしたシステムが機能する上では、行政側がデータの所有権にまつわる諸問題を事前に明確化しておく必要があるはずだ。それは例えば、一般市民がその自由意思にて直接提供したデータは誰にその所有権が帰属するのか、またそうした1次データや2次データに対してはどのようなライセンスを適用するのかという点である。ただしこれは、オープンソースというソフトウェアの形態に関係するものではなく、全くの別系統にて扱われるべき問題だろう。
いずれにせよこの分野におけるオープンソース系ソフトウェアの完成度は、公的かつミッションクリティカルなGISサイトやサービスを賄えるだけのレベルに到達しているのだ。あるいは本稿で見たオープンソースベースのGISシステムに関するより重要なポイントは、公的なデータや公共財の管理に対して一般市民の直接参加が可能であることを示す実例となっている点かもしれない。むしろ直接参加型の活動を現実化する上では、こうした方式こそが唯一可能な実効性のあるアプローチなのではなかろうか?
Marco Fiorettiは『The Family Guide to Digital Freedom』の著者であり、Linux.comを始めとする各種のIT関連マガジンに寄稿している。
