Oggオーディオの編集に便利なOGMtools

 ビデオを制作する際、オーディオは大概Oggでエンコードしている。音質を損なわずにサイズを小さくできるからだ。しかし、決まって必要になるオーディオの反復や接続などといった加工はOggではちょっと難しい。だから、そうした作業では、大概、 OGMtools スイートを使う。

 OGMtoolsスイートはOgg Media Stream(OGM)ファイルを操作するためのユーティリティー群で、ビデオのリッピング・ソフトウェアと共に使うことを前提に設計されたDVDムービーをエンコードするためのツールだ。しかし、使い道はそれだけではない。

 ツールの一つ、ogminfoはOggファイルの情報を表示する。たとえば、「ogminfo -s audio.ogg」とすると、ファイル・サイズ、ビットレート、パケット数、再生時間など指定したオーディオ・ファイルの概要が表示され、オーディオに合わせてカットすべきビデオの長さがすぐにわかる。-vオプションで、表示する情報を増やすこともできる。

 ogmcatは、ナレーションの断片をつないだり、背景に流すオーディを反復させたりするときに便利だ。たとえば、「ogmcat -o audio.ogg track1.ogg track2.ogg track3.ogg」とすると、track1、track2、track3のオーディオが連結されaudio.oggに出力される。

 つないだオーディオがすべてキチンと鳴るように、入力するオーディオは厳しく適合性がチェックされる。具体的なチェック項目は、ogmcatのmanページにある制限事項の欄にすべて記載されているので、こちらを見てほしい。問題があればエラーが表示され処理は中断されるが、同じソフトウェアを使って同じように作られたファイルをつなぐのであれば問題はないはずだ。重要ではないチェック項目については、-nオプションで解除することができる。

 オーディオ・ファイルの反復は、「ogmcat -o audio.ogg track.ogg track.ogg track.ogg」のように入力ファイルを繰り返せばよい。

音入れと音の切り出し

 スクリーンキャストを作るときは、通常、画面をrecordmydesktopで録画、ナレーションをAudacityで録音し、ogmmergeで絵と音を合わせる。録音したOgg Vorbisオーディオ・トラックを録画したOgg Theoraビデオ・ファイルに視覚的に同期させるわけだが、OGMtoolsはOgg Theoraをサポートしていないため、Theoraビデオをxvidに変換しておく。コマンドは「ogmmerge -o final.ogm -A video.avi audio.ogg」などとする。-Aオプションは、ビデオ・ファイルのオーディオは無視するという意味だ。

 合成したファイルは、通常、FFmpegを使ってDV Digital Videoに変換する。Kinoで扱えるようにするためだ。しかし、スクリーン・キャプチャーだけで編集を要しない場合は、ogmcatを使ってすべての素材をまとめる。筆者は、こうした処理を自動化し変換も簡単にできるように、シェル・スクリプトを何本か用意している。

 ogmsplitはogmmergeの逆操作をするツールで、OGMを時間やファイル・サイズで分割する。たとえば、「ogmspit -t 300 -o split.ogg video.ogg」とするとvideo.oggを300秒ごとに分割する。出力ファイルの名前はsplit-XXXXX.oggとなる。ここで、XXXXXは00001から始まる連番だ。同様に、「ogmspit -s 50MiB -o split.ogg video.ogg」は50MBごとに分割する(MiB=1024×1024B)。

 ogmdemuxはOGMファイルからストリームを切り出すツールで、オーディオとビデオのストリームを別々のファイルに分離するときに便利だ。たとえば、「ogmdemux -o video -na video.ogm」とするとvideo.ogmからビデオ・ストリームだけを、video-v1.aviに書き出す。-na(no audio)オプションは、ビデオだけを取り出すことを意味する。なお、-oオプションは出力ファイル名の基本部分を指定するもので、拡張子はオプションによって変わる。同様に、「ogmdemux -o audio -nv video.ogm」はvideo.ogmからオーディオ・ストリームだけを取り出し、audio-v1.oggに書き出す。

 また、切り出すオーディオ、ビデオ、テキストのストリームを指定することもできる。指定がなければ、いずれも最初のストリームが切り出される。詳細は、manページを見てほしい。

 OGMtoolsは本来ビデオのリッピングとエンコードのスタックの中で使うことを目的に作られたツールだ。しかし、以上のように、使い道はそれだけにとどまらない。

Chad Files ソフトウェア開発者、ライター。10年以上にわたりソフトウェア・アプリケーションを開発してきた。多くのオープンソース・プロジェクトにも開発者として参加している。

Linux.com 原文(2008年6月3日)