ITジェネラリストの時代?
このようにしてただでさえダブつき気味なこの分野のジョブマーケットに、不況が追い打ちをかけた。ウェブ関連よりも、業務プロセスの自動化のような、企業内の業務効率を改善して人件費等のコストを減らすためのテクノロジーの設計や実装のほうが重視されるようになってきてしまったのだ。また、不況ゆえに企業の合併や買収も盛んとなり、組織の統合に絡んで、ITアーキテクチャやプロジェクトマネジメントといった、社内システムや組織の設計や運用、管理に関するいわば技術とビジネスの境界面にあるような総合的なITスキルが重視されるようになったのである。
まあ、SOAにしても元々技術的基盤としてウェブサービスを取り込んでいるので、ウェブ開発のスキルが全く不要かと言えばそんなことはないはずだが、少なくともマネージメント側からあまり重視されなくなってきたということは言えるのだろう。その結果、ウェブ開発のような特定の技術をディープに極めたエキスパートよりも、技術知識としては広く浅くしか持ち合わせていないかもしれないが、業務全体を見渡して分析し具体的なプロセスの改善につなげられるような、よりジェネラリスト的な人材が求められるようになってきたということのようである。
私が思うに、結局のところこれはソフトウェア開発の分野が成熟期を迎えたということに呼応しているのではないか。今までは、The Next Big Thingが何か、次の破壊的イノベーションは何か、ということが重視されてきたため、多くの失敗をも織り込んだ形で、あまり結果を厳しく問わずに様々な実験が行われてきた。その主戦場になっていたのがここ数年はウェブサービスの分野で、結果としてウェブ開発を得意とするような発想力豊かで尖った人材がITエンジニアの花形となったというわけだ。
それがこのところ、イノベーションという面でそろそろ出尽くした、あるいは既存の技術が実際の世界では消化不良のまま放置されているという状況に陥ってきた。しかも、好況時には「実験」程度でもお金を出してくれる人がいたが、不況となるとどうしても財布のひもは普段以上にきつくなるわけで、そのぶん金主たる相手に何を貢献できるかということがよりシビアに測られるようになってくる。リスクを取って新しいことに取り組む余裕はないので、とりあえず社内のやり方を見直してコストを削って何とかしようという機運が強くなるわけだ。その一つの現れが、ウェブ開発の需要減、そして漸進的改善というか、どちらかと言えば地味で組織力を生かした諸分野の復権なのではないかと私は考えている。
