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フリーソフトウェア/オープンソースに最も貢献した10人

2009年04月20日 15:00 八田真行 1 2

5位から1位

5位: アンドリュー・トリジェル(Andrew Tridgell 1967-)

この辺から説明不要のビッグネームが増えてくる。オーストラリア出身。Sambaの開発者。

情報系の博士論文というのは、そこから何か直接的に有用な実装が出てくるというのはあまり無いような気がするのだが、この人の博論は、実のところrsyncの実装だった。もちろんrsyncは、現在でも最も広く使われているフリーソフトウェアの一つである。

4位: エリック・レイモンド (Eric S. Raymond 1957-)

1998年、オープンソースの名付け親の一人。「伽藍とバザール」の著者。近年のあまりプログラミングと関係ない分野における、率直に言ってずいぶんと間抜けな言動で思い切り評価を下げてしまった感もあるが(たとえばこれ)、フリーソフトウェアを巡る様々なアイデアを巧みに交通整理して、「オープンソース」という一般ウケするキャッチ―な概念に仕立て直してくれたのは大きな功績だ。個人的には、長年に渡って放置されていたJargon Fileを拾ってせっせと編集していた人という印象が今も強いのだが。

ところで、フリーソフトウェアの支持者にとってオープンソースは愛憎相半ばするという感じの存在だが、私が思うにオープンソースの存在は、長期的に見ればフリーソフトウェアにとって様々な意味で大変大きなプラスだったと考えられる。自らを映す鏡があるということは、成長にとって常に重要だからだ。実のところ、フリーソフトウェア、オープンソース、プロプライエタリの三者は相互依存関係というか、三つ揃っていることに意味があると私は思っているのだが、その話はまた今度。

3位: アンドリュー・モートン(Andrew Morton 1959-)

オーストラリア出身。アラン・コックスと並ぶリーナスの右腕、Linuxカーネル開発の立役者の一人。現在はGoogleに在籍。この人も説明不要だろう。なぜかメールクライアントに日本産のSylpheedを使っている。

1位: リチャード・ストールマン (Richard M. Stallman 1953-)

どういうわけかこのリストには2位がいないのだが、おそらく誤植ではないと思う。恐ろしいのであまり深くは追究しないことにするが、とりあえず一人目の1位はストールマン御大である。GNU Emacsを始めとする膨大なGNUソフトウェアの作者であり、FSFGNUプロジェクトの創始者、GNU GPLの起草者、フリーソフトウェアという概念の考案者でもあり、20年以上に渡って斯界をリードしてきた偉い人である。偉いのだから、そろそろホームレスは止めて自宅を買うなり借りるなりしたほうが良いのではないかと思うのだが。

あまりに偉いので何となくからかいたくなってしまうのだが、しかし個人的には、100年後も名が残っているのは、このリストの中ではストールマンだけではないかと思う。なにクレイジーなことを言ってやがると思われていたのが、数年後、あるいは数十年後になって初めて正しさがじわじわ理解されてくるという、何かそういったタイプの、極めて射程の長い考え方をする人物だ。偉いのに普段はあのていたらくというのも、我々凡人に希望を与えてくれるではないか。

1位: リーナス・トーヴァルズ (Linus Torvalds 1969-)

何となく万年青年というイメージのあったリーナスももう不惑である。Linuxカーネルや分散バージョン管理システムGitを書き上げて今まで面倒を見てきたというプログラマとしての実績も重要だが、過激なフリーソフトウェア原理主義と唯々諾々としたプロプライエタリへの迎合の間を揺れ動くFLOSS界において、ストールマンと共にある種のバランサーとして機能してきたことのほうが、あるいはハッカーとしての功績を上回る重要な役割だったかもしれない。しかし、ストールマンもそうだが、リーナスも恐ろしいほど強情な人だ。どうやら強情はイノベーターの第一条件のようである。

といった10人である。ラリー・ウォールが落ちているだのブルース・ペレンスがいないだのまつもとゆきひろはどうしただのといろいろ突っ込みどころはあるけれども、まあそういうことを言うときりがないので、皆さんも自分なりに同じようなリストを作ってみると面白いかもしれない。個人的には、意外とアメリカ人が少ないのに驚いた。あと、みんなもう結構良い歳ですね。

日本OSS貢献者賞

そういえば、IPAの日本OSS貢献者賞というのがある。あまり世間的には報われることのないFLOSS開発者になにがしかの箔をつけるというのは重要なことで、発想としては大変良い試みだと思うのだが、5年もやっているのに結局大した権威も知名度も獲得していないのは残念なことだ。選考や審査にまるで権威がないとか賞金が出ないとかいろいろ仕組み的な問題はあるのだが、そもそも偉い人の功績を顕彰するという文化が日本にあまり無く、そのためのノウハウがIPAに限らずどこにも蓄積されていないということが大きいのではないかと思う。ノーベル賞に対抗する(はずだった)京都賞が今ひとつぱっとしないのと同じである。ようするに、自己宣伝や他者宣伝が下手なのだ。希少な経済的価値を持つ物の一つとして名声(reputation)が扱われるようになる、reputation-based economyが重要性を増すであろう今後の世界において、いかにまがい物を排除しつつ本物に箔付けをしていくかというのは、これから非常に大事なテーマになっていくと思うのだが。

最終更新:2009年06月20日 17:08
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