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アーティストのビジネスモデル

2009年11月02日 12:20PM 1 2
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このところ、私的録音録画制度の見直しを巡るあれやこれやに少々足を突っ込んでいる。なかなかややこしい話なので中身についてはあまり触れないが、この問題に限らず結局著作権を巡る諸問題の本質にあるのは、どうすれば今後才能あるアーティストがアーティストとして食っていけるか、ということである。

そんなことは本人たちが考えればいいことだろうというのは確かに道理ではあるのだが、今までそれなりに彼らを(そして若干の寄生虫をも)食わせてきた仕組みが音を立てて崩れつつあり、それが主に彼らとは無関係の外的な要因によってもたらされたものであるというのは否定できない。ある意味で、彼らは被害者みたいなものなのだ。現在は、そうした彼らの問題意識が仕組みをいびつな形で再建する方向に向かってしまっている。それよりは、アーティスト本位の立場で次の方向性を考えたほうが、私たち皆にとって生産的だと思うのである。

音楽のみならず、これからの時代、文章や映像といったコンテンツの生産で食べていくにはどうしたら良いのだろう。CDや本を出してミリオンセラー、というのは、全くの不可能ではないせよ、相当限られたジャンルでないとどうも無理そうである。創作は趣味と割り切ってバイトや副業で食いつなぐというのも一つの答えではあるが、ここでは一応創作専門で、という縛りをかけてみたい。

こうした議論において、Wired誌の創立者、ケヴィン・ケリーが昨年出した文章「1,000 True Fans」はある意味当たり前の話とは言えなかなか示唆的だった。彼の結論を先に言えば、1000人のハードコアなファンがいればアーティストは食っていけるとしたのである。こうした忠実なファンは、もちろんいわゆる「一見さん」ではないが、そのアーティストが出すものは食べ残しのパンの耳から便器のふたに至るまで買うというほどの狂的なファンでもない。ケリーの言に従えば、自分のために年に100ドル、1万円ほど使ってくれる程度のファンである。ライヴ・チケットなら3回分、CDなら4枚分。本なら5冊分といったところか。平均的なファンの支出額よりは相当多いだろうけれども、しかしべらぼうというほど大きな額ではない。

1000人から1万円をもらえば当然年収は1000万円だ。もちろんこれだけでスタジアム・ロックをやるのは無理だろうが、多くのソロ・アーティストにとっては、諸経費を出しても生活費くらいは残る程度の額ではなかろうか。そして、そのようなハードコアなファンは平均的なファンを外から引っ張ってきてくれる可能性が高い。才能があって運が良ければそうした平均的なファンがハードコアなファンになってくれるかもしれないし、そううまくは運ばなかったとしても一回の収入としてはプラスアルファにはなるわけだ。さらに、現在は得体の知れない人々がずいぶん「中抜き」をしているわけで、手売りやウェブサイトからの販売などでファンとの直接取引を心がければ、さらに取り分は上がる可能性がある(もちろんアーティストがやるべき仕事も増えるが、そういう雑用を引き受けてくれるマネージャなりエージェントなりへの需要も増すことだろう)。そんなわけで、これからのアーティストは、ベストセラーというショートヘッドでも気まぐれなロングテールでもない。いわばミディアムボディとでも言うべき部分のしっかりとした確保を狙うべきだ、というのがケリーの主張だった。

八田真行
2010年01月02日 05:07PM 更新