さて、ドーガティというのは面白い人で、まあ寄付を集めるための方策ということもあったのだろうが、結構何でもデータを公開してしまう。例えば、Chi-Town Daily Newsに一記事載せるのにかかるコストは、長さにもよるが取材、執筆、編集等込みで250ドルから1000ドルであり、平均すると359ドルだった(Chi-Town Daily Discloses Costs for Donations)。では、Chi-Town Daily Newsのようなシカゴ程度の大都市をカバーする規模の地方紙を運営するには、結局いくらかかるのだろう。
とあるシンポジウムでドーガティが出した答えは、年200万ドルだった。200万ドルあれば、Chicago Tribuneのような大手地方紙と同等の内容をカバーする、オンライン・ベースの報道機関を運営することが出来ると主張したのである。その内訳を示そう。
| 役職 | 人数 | 給料 | 計 |
| 記者(高等教育担当) | 1 | 41,000ドル | 41,000ドル |
| 記者(公共教育担当) | 1 | 41,000ドル | 41,000ドル |
| 記者(公衆衛生/医療行政担当) | 1 | 41,000ドル | 41,000ドル |
| 記者(公営住宅問題担当) | 1 | 41,000ドル | 41,000ドル |
| 記者(労働問題担当) | 1 | 41,000ドル | 41,000ドル |
| 記者(環境問題/水道問題担当) | 1 | 41,000ドル | 41,000ドル |
| 記者(市役所担当) | 1 | 41,000ドル | 41,000ドル |
| 記者(地方行政担当) | 1 | 41,000ドル | 41,000ドル |
| 記者(民事裁判担当) | 1 | 41,000ドル | 41,000ドル |
| 記者(刑事裁判担当) | 1 | 41,000ドル | 41,000ドル |
| 記者(連邦裁判所担当) | 1 | 41,000ドル | 41,000ドル |
| 記者(交通問題担当) | 1 | 41,000ドル | 41,000ドル |
| 記者(警察担当) | 2 | 41,000ドル | 82,000ドル |
| 記者(経済問題担当) | 1 | 41,000ドル | 41,000ドル |
| 記者(遊軍) | 2 | 41,000ドル | 82,000ドル |
| カメラマン(含むビデオ撮影) | 2 | 41,000ドル | 82,000ドル |
| デスク | 1 | 55,000ドル | 55,000ドル |
| 副デスク | 4 | 55,000ドル | 220,000ドル |
| 編集長 | 1 | 65,000ドル | 65,000ドル |
| Web 担当者 | 1 | 45,000ドル | 45,000ドル |
| 総計 | 26 | 1,164,000ドル |
ということで、締めて116万ドル強ということになる。もちろんこれらは人件費だけで、事務所の家賃や保険、その他諸経費もあるだろうから、それらを足して200万ドル、ということになるわけだ。日本円にすれば約2億円。個人のレベルではなかなかの金額だが、企業として考えれば、これは中小企業はおろか零細企業のレベルと言っても過言ではない。
まあ、当たり前といえば当たり前の話なのだが、こうして具体的に列挙してみると、確かにこの程度の人数と金額しか要らなさそうなことに気付く。担当分野が併記されていることからも分かるように、記者は基本的にその分野に特化したエキスパートとして想定されているのだが、率直に言って、まともな調査報道が出来るだけのきちんとした専門知識を備えた記者をこれだけの人数抱える地方紙は(場合によっては全国紙さえも)、日米問わずあまり無いのではないか。しかも、ドーガティのモデルは「理想」論である。理想論といっても、実現不可能なことを空想するということではない。これくらいあればやりたいことが出来るのに、というドーガティ自身の理想だということだ。すなわち、現実のChi-Town Daily Newsは、これよりもさらに少ない人員と予算で回されていたのである。
