Linuxカーネル3.5リリース、ファイルシステムやネットワーク、ドライバ関連で多くの強化が行われる

 Linus Torvalds氏は7月21日、Linuxカーネル3.5 をリリースした。ext4ファイルシステムにおけるメタデータチェックサムサポートやユーザースペースにおけるパフォーマンスプロファイリング機構、システムコールをフィルタリングできるサンドボックス化機構など、多くの新機能や機能強化が含まれている。

 Linuxカーネル3.5は5月22日にリリースされたLinux 3.4に続くLinuxカーネルの最新版。7回のリリース候補(RC)版リリースを経ての公開となった。

 大きな変更点として、まずext4ファイルシステムにおいてメタデータに対するチェックサムを格納できるようになった。tune2fsコマンドやmkfsコマンドで「-O metadata_csum」オプションを付加することでこの機能が有効になる。

 また、Linuxには「Kprobes」という、実行中のLinuxカーネル中に動的にブレークポイントを設定し、任意の時点でのレジスタやメモリの情報を確認する機能があるが、これのユーザースペース版と言える「Uprobes」という機能が新たに追加された。この機能を使用することで、実行中のユーザーアプリケーションにおける任意の個所で非破壊的に実行時情報を取得できる。

 Linuxカーネル2.6.12で導入されたサンドボックス化のための機構「Seccomp」の強化も行われている。Seccompは特定のシステムコールについてその実行を禁止することでサンドボックス化を行う機能だが、Linuxカーネル3.5では制限するシステムコールをフィルタとして任意に指定できるようになった。すでにsystemdのinitデーモンがこの機能をサポートしているという。

 そのほか、「CoDel」と呼ばれるネットワークバッファ管理アルゴリズムの導入や、外部ホストからTCPコネクションを停止/再起動させる機能、TCP Early Retransmit(RFC 5827)サポート、Androidで使用されているサスペンドAPI風APIの導入、BtrfsにおけるI/Oエラー、CRCエラーなどを収集する統計機能の実装、SCSI over FireWireやSCSI over USBドライバの導入なども行われている。

 グラフィックドライバでも多くの機能強化が図られている。Radeonグラフィックドライバでは、ビデオメモリにデータを格納する方法を変更することで性能を改善している。「Radeon HD 6000」シリーズなど一部GPUでのHDMI経由でのオーディオ出力についてもサポートを強化した。「PRIME」と呼ばれる、DMA-BUFインターフェイスレイヤ機構も多くのドライバでサポートされた。

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