ハイブリッドスリープやBtrfs強化を特徴とするLinuxカーネル3.6がリリース

 9月30日、Linuxカーネル3.6がリリースされた。Btrfsへの新機能追加やハイバネーション機能の実装、ネットワーク機能の改善などが特徴となる。

 7月後半に公開されたカーネル3.5から約2か月を置いての最新版リリースとなる。開発者であるLinus Torvalds氏は本リリースについて、「アーキテクチャやファイルシステムに大きな変更はないが、全体として『着実な進歩』を遂げたリリースである」と形容している。

 本リリースで大きな特徴となるのが、「ハイブリッドスリープ」(ハイバネーション)の導入だ。サスペンドの前にRAMの内容をディスクに保存しておくもので、サスペンド中にバッテリがなくなるなどでシステムがシャットダウンされた場合でも、ディスクに保存しておいたRAMイメージからメモリの内容を復旧させてシステムを再開できる。電源管理ではこのほか、PCIeデバイス向けの「D3cold」省電力レベルのサポートも加わっている。

 実験的サポート段階にある新ファイルシステム「Btrfs」にも多くの機能強化が加えられている。まず、各Subvolume単位でquotaを設定できる「Subvolume quotas」が実装された。各Subvolumeに対してサイズを設定し、それを上回ると書き込みができないようにするもので、quotaの代わりに利用できる。また、「send/receive」と呼ばれる、ユーザー空間のプログラムがスナップショット間の差分を取得したりそこからファイルを復元する機能も追加された。SubVolume間でのファイルクリーンを行う機能も実装されている。

 ネットワーク関連では、クライアント側での「TCP Fast Open」サポートが行われた。TCP Fast Openは米Googleが開発したTCPの拡張機能で、TCP接続確立プロセスの最適化によりコネクション生成の高速化を図る技術。バッファが引き起こすネットワーク遅延や接続障害「Bufferbloat」問題への対策として、TCPパケットの数を制限するTCP Small Queues(TSQ)も加わっている。cifsファイルシステムではSMBv2プロトコルもサポートされた。

 IOMMU(Input/Output Memory Management Unit)保護下でドライバがユーザー空間に直接アクセスするためのフレームワークVFIO(Virtual Function I/O)の追加、KVMの性能強化なども行われている。このほか、ドライバ、メモリ管理、仮想化、暗号化などで多数の細かな改善や機能強化が行われている。

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