ついに登場「Qt 5」、アーキテクチャを改良しグラフィックと性能を強化

 フィンランドDigiaは12月19日、クロスプラットフォームのアプリケーション/UI開発フレームワーク「Qt 5」をリリースした。2005年以来のメジャーアップデートとなり、フレームワーク全体に渡るブラッシュアップや将来を見据えた改良など多くの改善点が含まれている。

 QtはC++で実装されたオープンソースのアプリケーション/UI開発フレームワーク。WindowsやMac OS X、Linuxなどさまざまなプラットフォームをサポートし、開発者ではないデザイナ向けのコラボレーション機能も備える。商用ライセンスおよびLGPL/GPLというデュアルライセンスモデルで提供されており、当初はTrolltechの下で開発が進められていたが、その後NokiaによるTrolltechの買収やNokiaの戦略変更などにより、現在はフィンランドDigiaがQtの商業ライセンス事業を行っている。

 Qt 5.0はMac OS X(10.7および10.8)、Linux(32ビットおよび64ビット)、Windowsをターゲットとする。Qt 4系との互換性を可能な限り保ちつつ、内部アーキテクチャのクリーンアップやモジュール化が進められているという。Qt 4のQt Widgetsは引き続きQt 5でもサポートされ、ほとんどのアプリケーションは大きな変更を加えることなく再コンパイルだけでQt 5に対応できるとしている。

 グラフィック関連では、Open GL ESのサポートにより繊細なアニメーションや画面遷移のあるリッチなグラフィック、2D/3Dアニメーションの滑らかなレンダリングなどをさまざまなプラットフォームで実現するという。UI作成ツール「Qt Quick 2」ではシーングラフ、パーティクル、シェーダーエフェクトなどの機能が利用でき、Qt MultimediaやQt Graphical Effectsによりさらに高度なエフェクト作成が可能という。GUIを作成するQMLエンジンでは、新しいAPIが追加された。

 また、Qt自体の構成が変更され、必須機能を集めた基本部分(Essentials)と必要に応じて利用できるアドオンモジュール(Add-ons)に分離された形になった。プラットフォーム固有の機能はQt Platform Abstractionレイヤにまとめられている。Qt Platform AbstractionレイヤにはQt Mobility APIも統合されており、コードサイズの縮小やターゲット端末の拡大を図っているという。

 C++11のサポートや、QtWebKit 2でのHTML5サポートなど、最新規格への対応も強化されている。QtWebKit 2ではこのほか、UIとWebにプロセスを分離することで性能を強化しているという。ブラウザエンジン統合により、Webコンテンツとアプリケーションを統合したハイブリッドアプリケーションも作成できる。11月に公開されたQt向け統合開発環境(IDE)の最新版となる「Qt Creator 2.6.1」もバンドルされている。

 なお、Qt 5ではまだいくつかのバグや必要な作業が残っており、またMinGWやVisual C++ 2012のサポートといった課題も残っている。これらは現在解決に向けて作業が進められており、まずは2013年1月末に5.0.1として初回のバグフィックスリリースを公開する計画という。また、Qt 5.1のリリースは2013年の春を計画しているとのこと。

 Qt 5のオープンソース版はQtのプロジェクトページよりダウンロードできる。

Qt Project
http://qt-project.org/

Qt 5ダウンロード
http://qt-project.org/downloads

フィンランドDigia
http://www.digia.com/