Web開発機能にフォーカスした「Qt 5.4」がリリース

 The Qt Companyは12月10日、クロスプラットフォームのUI/アプリケーション開発フレームワーク「Qt 5.4」をリリースした。Web開発関連機能の拡充、Windows RTの完全サポートなどが加えられている。同時に統合開発環境(IDE)の「Qt Creator 3.3」も発表している。

 Qt 5.4は5月にリリースされたQt 5.3に続く最新版。Web開発に注力されており、バージョン5.3で導入された「Qt WebSockets」に加えて、5.4ではChromium Webエンジンベースの「Qt WebEngine」と、QML/C++とHTML/JavaScriptの橋渡しとなる「Qt WebChannel」の2つのモジュールが加わった。

 WebEngineはQt WidgetsとQt QuickベースのアプリケーションへのWebコンテンツの埋め込みのためのAPIを提供するもので、主要デスクトップと組み込みプラットフォームで利用できる。これを補完するものとして、OSネイティブのWebブラウザ向けにAPIを提供する「Qt WebView」も提供する。Qt WebViewは技術プレビュー段階で、Qt 5.4ではiOSとAndroidをサポートするという。また、Qt WebChannelはQtとWeb技術の両方を利用するハイブリッドアプリケーション作成のためのツールで、Qt WebEngineのほかWebソケットをサポートするWebブラウザエンジンでも利用できる。

 これらWeb開発機能の拡充を受け、既存モジュールの「Qt WebKit」についてはサポートは継続されるものの、今後新機能の追加は行われない。将来的には非推奨になる予定としている。

 Web開発技術に続く大きな特徴が、Windows Runtimeの完全サポートとなる。5.3でベータ導入した「Qt for Windows Runtime」が完成版となったことで、Windows 8.1およびWindows Phone 8.1以上をターゲットにしたWindows Store向けアプリケーションを開発できる。

 グラフィック関連も強化し、実験的サポートの位置づけとなるHiDPI(高解像度表示)の処理を改善した。また、QOpenGLWidgetの追加などOpenGL関連も強化され、WindowsではネイティブOpenGLドライバとANGLE(GoogleによるOpenGL ES 2.0実装)のどちらを利用するかをアプリケーションの起動時に動的に選択できるようになった。「Qt Data Visualization」はバージョン1.2となり、ボリュームレンダリングなどの機能が加わったという。このほかにも、Qt Quick向けのWebGLライクなAPIを実装した「Qt Canvas3D」モジュールが実験的に導入されている。

 AndroidやiOS、Mac OS Xのサポートも改善されたほか、Waylandサポートも強化された。LinuxプラットフォームではBlueZの利用によりBluetooth Low Energy(Bluetooth LE)にも対応する。Linux以外のプラットフォームについては今後対応を進めるという。

 Qtはまた、LGPLv2.1、LGPLv3、GPLv3に加えて、LGPLv3でも公開も行う。この背景について、「商用側を犠牲にすることなくQtエコシステム全体への付加価値機能を容易に追加できるようにするため」と説明しており、TiVo化などの対策にもなるという。また、Qt 5.4では、Qt WebEngineなど一部のモジュールはGPL/LGPLv3または商用ライセンスのみで利用できる。商用ライセンスは「Enterprise」「Profesional」、それにモバイルアプリ開発向けの「Indie Mobile」の3種類がある。

 Qtはフィンランドのソフトウェア開発企業Digiaの下でプロジェクトの運営を続けてきたが、2014年9月にThe Qt Companyとしてスピンオフした。

Qt
http://www.qt.io/