Mozilla、Thunderbird切り離し計画へのGoogleの関与を否定――「Googleとの提携維持が切り離しの理由ではない」

 米国Mozilla CorporationのCEO、ミッチェル・ベイカー氏は7月26日、Googleとの提携維持が電子メール・クライアント「Thunderbird」の別組織化の理由だとする批判に反論した。同氏は、Googleとの提携とThunderbirdプロジェクトの独立とはまったく関係がないと強調している。

 ベイカー氏は7月25日、Mozilla Foundation傘下の営利部門Mozilla Corporationが、ThunderbirdをMozillaから切り離し、オープンソース・ブラウザの「Firefox」のみに注力することを検討中だと自身のブログに記した(関連記事)。

 これに対し、同ブログにはその後、Thunderbirdに関するMozillaの決定と、GoogleがWebメール・サービス「Gmail」に力を入れている事実とを結び付けたコメントが多数書き込まれた。例えば、ボーン・リードを名乗るユーザーはこう記し、Mozillaの方針を批判している。

「Googleは、Mozilla Foundationの主な出資者であると同時に、GmailとGoogle Appsを通じてエンタープライズ・グレードの電子メール・エコシステムの開発と販売を強力に推進している。このためGoogleは、Outlook/Exchangeを捨ててGoogleに移行したいと考えているユーザーの『背中を押す』ため、Thunderbirdの開発を中止させたり、遅らせたりしたいと考えているのではないか」

 またマーク・ルスト氏は、「少し警戒心が強すぎるのかもしれないが、とにかく一般家庭のユーザーをWebベースのGmailに移行させたいとGoogleが考えていることは間違いない。こうしたことから、スタンドアロン・メール・クライアントのThunderbirdとMozillaとの結び付きを断つため、Googleが圧力をかけた可能性はある」と指摘している。

 一方、こうした書き込みはまったく事実に反しているとベイカー氏は主張、26日夜にポストした反論コメントの中で、「(ThunderbiedをMozillaから切り離すことに)Googleがまったくかかわっていないことを可能なかぎり明確にしたい」としたうえで、こう述べている。

 「Thunderbird製品の計画やThunderbirdの売上げ、Gmailの製品計画やGmailの売上げなどについてGoogleに尋ねたことは一切なく、Googleに意見を求めたこともない。(中略)Gmailに関するGoogleの計画――それがどのようなものであるにせよ、私は関知していない―― は、今回の決定と無関係だ」

 リード氏も指摘するとおり、MozillaにとってGoogleは重要な収入源だ。Mozillaは、Firefoxのデフォルト・ページと検索エンジンの両方をGoogleの検索サイトに設定することで、Googleから年間数百万ドルを受け取っている。最近の数字は明らかにされていないが、2005年時点でGoogleはMozillaにおよそ5,200万ドルを支払っている(Mozillaは2006年の所得申告データを公表していない)。

 Thunderbirdの開発を主導してきたスコット・マクレガー氏とデビッド・ビエンベニュー氏は、ベイカー氏が25日付けの書き込みで挙げた3つの選択肢のうち、3つ目の案に支持を表明している。この案は、インターネット・アプリケーション「SeaMonkey」のようなコミュニティ・プロジェクトとしてThunderbiedを独立させ、小規模なサービス会社を設立してユーザー・サポートを行うというものだ。

 マクレガー氏は27日付けの電子メールの中で、自身とビエンベニュー氏がThunderbirdの存続を望んでいることを明らかにし、「われわれと、われわれのコミュニティが消えることはない」と強調した。また同氏は、Thunderbirdをサポートする組織がどのようなものであれ、次のメジャー・バージョンとなる3.0の開発作業は継続されると明言した。

 ただし、マクレガー氏によると、MozillaからThunderbirdを切り離す方法を決めるまでの具体的なスケジュールはまだ決まっていないという。

(グレッグ・カイザー/Computerworld オンライン米国版)

Mozilla Foundation
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提供:Computerworld.jp