MozillaがThunderbirdの独立を検討中

 Mozilla CorporationのCEO Mitchell Baker氏が昨日(7/25)同氏のウェブログ上で、「莫大なエネルギーとコミュニティとが、ウェブとFirefoxとそれを中心としたエコシステムに集中してしまっている」ため、Mozilla Corporationが電子メールクライアントのThunderbirdのために「新たな別組織の設立」を検討しているということを発表した。

 Baker氏は「Mozillaは現在、特にThunderbirdユーザに対するサービスを専門に行なう組織について3つの案を検討中だ。Thunderbirdに的を絞った別組織は、独立して活動することが可能になる。またコミュニティとユーザとの関係を深めるためには、そうすることが必要でもあるのだ。この組織がどのようなものになるのかはまだ分からない」と述べている。そしてBaker氏は、それぞれにメリットもデメリットもあると思われる、3つの案を挙げた。

  1. 「Mozilla Foundationに似た非営利組織を新設する。例えば『Thunderbird Foundation』」。
  2. 「Thunderbird用に、Mozilla Foundationの下部組織を新設する」。
  3. 「Thunderbirdを、SeaMonkeyのようなコミュニティプロジェクトとしてリリースするようにする。またThunderbird開発者が、開発を続行したりThunderbirdユーザのサポートを行ったりするための小規模な独立したサービス/コンサルティング会社を設立する」。

 Mozilla wikiには現在、The Future of Thunderbird(Thunderbirdの将来)The Future of Mail(メールの将来)について話し合うためのページが用意されている。またBaker氏のブログにもコメントが寄せられていて、そのほとんどはどちらかと言えば否定的な意見となっている。中にはかなり激しく否定的な意見を述べているものもいくつかある。Mozilla FoundationをFirefox Foundationに名称変更することを提案している人も何人かいる。「Vaughn」は、Googleがらみの陰謀ではないかという次のような意見を述べている。

GoogleがMozilla Foundationに対する主な資金提供者であることと、GoogleがGmailとGoogle Appsとを通して独自のエンタープライズレベルの電子メールエコシステムを積極的に開発/提供していることとを考えると、おそらくGoogleは、Outlook/Exchangeという巨大な怪物を捨てようとする人々が、ThunderbirdとLightningを組み合わせてオープンソースのグループウェアバックエンドと一緒に使うのではなくGoogleに移行することを「奨励」するために、Thunderbirdの開発をつぶすか遅らせるかをしたいのかもしれない。

当然ながら、一般的に、非営利組織に資金を提供する企業には下心がある。そのような観点からも、Thunderbirdをまったく唐突にMozilla Foundationから切り離す理由として、上記の私の推理はもっともな見方と言えるだろう。

 一方、Thunderbirdの将来について別の筋書きを予測するものも――中にはかなり長いものも――いくつかあり、Mozillaの「連れ子」のような扱いで冷遇されるよりも、Thunderbird独自の組織の中心的な存在になる方が、長期的に見ればThunderbirdにとって良い結果になるかもしれないと考える人もいた。また、より多くの人々がウェブブラウザ経由でオンラインサービスでメールを読むようになるにつれ、Thunderbirdのようなメールクライアントはすたれていくだろうと指摘する人もいた。「Rafael」は、かつては熱心なThunderbirdユーザだったが、今ではもはやオフラインのクライアントは実用的ではないと述べている。

普段私は、自分のシステム以外のものも含めて、3台から5台のワークステーションを使用している。そのため自分のメールやUsenetの設定を同期させるのは、どうひいき目に見てもうんざりする作業だ。しかし真の決定打となったのは、通例そのようなシステムのうちのどれかが、毎週フォーマットされるということだ。自分のデータを常にバックアップして、インポートして、すべてのマシンで同期しようとするのはただただ重労働なのだ。

そこで数年かけて、すべてをオンラインのサービスに切り替えた。GmailやHotmailなどを使うことでメールに関する私の問題はすべて解決し、Google Groupsを使うことでUsenetの問題が解決した。バックアップ/インポート/同期が必要なくなって、私にとっては本当に理想的なシステムになった。

 Mozillaの社員でThunderbirdの主要開発者であるScott MacGregor氏とDavid Bienvenu氏は、Baker氏による3つ目の案が良いと考えている。

Thunderbirdの使命に的を絞った独立した別会社を設立するのが、われわれの使命をまっとうするのにもっとも都合がよく、またそれと同時にThunderbirdユーザをサポートするための最良の案でもあると思う。

われわれが構想しているのは、Thunderbirdの今後の新バージョンを開発し、ユーザをサポートし、メールという分野で選択の自由と革新とを提供する役割を担う独立会社の設立だ。そのような会社では、Mozillaを素晴らしいものにしているのと同じ原則を体現することになるだろう。すなわち、オープンソース、透明性、コミュニティの参加、ユーザの重視ということをひたむきに守るということだ。

Thunderbirdプロジェクトは、SeaMonkeyやCaminoのようなMozillaのコミュニティ・プロジェクトになるだろう。コードはどこにも行かず、われわれがコードを扱う方法(bugzilla、CVS、IRC)も変わらないだろう。Thunderbirdコミュニティは、このメール用プラットフォームを中心としてさらなる革新をもたらすために、今後もメール関連の他のコントリビュータたち(各言語版の作成者、SeaMonkeyの開発者、Penelopeの開発者、QAのボランティアなど)とコミュニケーションを取りながら協力を続けていく。新会社は、Mozilla CorporationがFirefoxの製品化を行なったのと同じように、Thunderbirdの製品化を担うことになるだろう。

Shirl KennedyはDocuTicker/ResourceShelfウェブログの編集長。またInformation Todayの”Internet Waves”コラムも担当。1992年以来、技術関連の記事を執筆している。

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