[JM:01620] Re: tar-1.32 の tar.1 の翻訳

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長南洋一 cyoic****@maple*****
2019年 9月 28日 (土) 10:01:52 JST


長南です。

一応ですが、チェックがやっと終わりました。いろいろ個人的な用事が重なったとは言え、
二ヶ月ぐらいかかってしまいました。投稿からだと、三ヶ月になりますね。

このマニュアルの翻訳は長い上に、問題になるところがかなりあるので (原文にも
あります。それについては、後で書きます)、cal の場合のように問題点を一つ一つ
取り上げて説明するという方法は使えませんでした。あまりにも説明のメールが
長くなりすぎてしまうからです。

それで、佐藤さんの翻訳を直接上書きするという方法を取りました。
間違いとは言えないかもしれないけれど、ここはこう訳した方がよいのではないか
というところまで、勢いで書き直してしまいましたから (「これはお上手な訳だな」
と思ったところは、積極的に残したのですが)、私がどこを問題にしているかを
知るには、不便になってしまったと思います。まあ、パラグラフを一つ一つ比較
したとき、両者が意味的に違っているところが、問題箇所なんですけれど。

佐藤さんとしては、私が手を入れたものを元にして、さらに手を入れてもよいし、
私のバージョンを参考にして、ご自分の訳を推敲なさってもよいと思います。
「後は任せるから、引き継いでくれ」という第三の道でも構いません。

ここで、原文にどんな問題があるか、一例を挙げておきます。

  --no-unquote
         Do not unquote input file or member names.
	      
  --unquote
         Unquote file or member names (default).

この unquote は「クォートを除去する」とか「引用終わり」の意味ではなく、
「クォートを開く」ということのようです。つまり、「入力ファイル名やメンバー名中の
バックスラッシュでクォートされた \t, \n, \b のようなシーケンスを、タブ、改行、
バックスペースなどに解釈して変換する」ということ。そんなこと、実際に動かして、
いろいろ試してみるか、info tar を読むかしなければ、わかるわけがありません
(info には、--no-unquote について "Treat all input file or member
names literally, do not interpret escape sequences" と書いて
ありました)。これは、マニュアルの著者の、というより、tar の作者の俺サマ用語
なんじゃないかと思います。それとも、unquote にそういう使い方が普通に
あるんでしょうか。

一般化すると、この man ページの原文は、言葉を読んでいただけでは、間違いかねない。
実際に動かしたり、info tar で確認する必要があるということです。

使用した訳語について、いくつか説明しておきます。

extract:    「抽出」と「展開」が混じっていたので、「抽出」に統一しました。
            「抽出」の方が extract の訳語としては忠実でしょうし、
	    アーカイブからメンバーを 1 個だけ取り出すのは、「展開」と
	    いうより「抽出」でしょう。でも、メンバーを全部取り出すには、
	    「展開」がふさわしい。一長一短だと思います。

decompress: これは「伸長」にしました。私としては "compress/decompress" を
            「圧縮/展開」と訳すのが、一番自然な気がするのですが、
	    「展開」は extract の訳語にもなりうるので、紛らわしいと思います。
	    「解凍」は感覚的で洒落ていますが、「圧縮/解凍」が対に
	    なっていません。gzip や bzip2 の manpage の翻訳では、
	    「圧縮/伸長」を使っています。そこで、「伸長」にしておきました。

extract や decompress の訳語については、どれを選んでも、一貫していて、
紛らわしくなければ、それでよいと思います。
	   
list:       基本的に「内容表示」にしました (「一覧」を残したところも
            一箇所あります)。アーカイブのメンバーを 1 個、あるいは
	    数個だけ表示する場合もあるわけで、「一覧」はちょっと
	    言い過ぎではないかと思うからです。

time:       mtime, ctime などとの関連で使うときは、基本的に「時刻」ではなく
            「日時」にしました。その方がふさわしいときは、私ももちろん「時刻、
	    時間」を使います。

mtime:      「更新日時」にしました。既存のテキストファイルに文章を書き込むのは、
            更新ではあっても、必ずしも修正とはかぎりません。ですから、意味的には、
	    「修正日時」というのはずれていると思います。しかし、「更新日時」は
	    ctime の「変更日時」と字面が似ているので、「修正日時」を選ぶのも
	    一理あります。

sparse file: 「疎らなファイル」という訳をよく見ますが、イメージがわきませんし、
            あまり格好のよくない日本語だと思います。私が find の manpage の
	    改訂をしたとき、前の翻訳の訳は「穴空きファイル」になっていました。
	    これは、イメージがはっきりしていて、よい訳だと思い、踏襲したのですが、
	    あまり使っている例を見かけません (ないわけではありませんが)。
	    それで、「スパースファイル」とカタカナにしておくのが妥当ではないか
	    と思っています。

the complete manual: これはほとんど私の好みの問題ですが、こうした文脈で
            complete を「完全な」と訳すのは賛成できません。complete と
	    perfect は違いますし、「完全なマニュアル」なんて存在しないからです。
	    この場合、complete は、「簡易版、簡略版」ではないということでは
	    ないでしょうか。ですから、「完全」を使うのなら、「完全版の」と
	    言うところです。「完備した、包括的な、網羅的な」なども考えられますが、
	    「詳細な」で十分だと思います。一番素直な言い方ですし。

私にわからなかったところを挙げておきます。

○ --group-map と --owner-map:
  "As a result" をどう訳すか。「結果として」ではイマイチつながりが悪い
  気がします。「その結果、つまるところ、とどのつまり、要するに」など、いろいろ
  考えたのですが、どれもやっぱりピッタリな気がしません。一応「つまるところ」に
  しておきましたけれど。
  
○ -h, --dereference:
    Follow symlinks; archive and dump the files they point to.

  この "archive and dump" って何なんでしょう。動詞として使った場合、
  archive も dump も事実上同じことなんじゃないんでしょうか。強いて言えば、
  archive はアーカイブを作ることで、dump は個々のファイルやディレクトリを
  アーカイブに入れることぐらいの区別かも。私はここを「アーカイブに入れる」と
  訳しておきました。

  この "archive and dump" は、次の項目、--hard-dereference にもあります。

○ --warning=KEYWORD のキーワードの一つ:
    bad-dumpdir
           "Malformed dumpdir: 'X' never used"
	   
           "不正形式の dumpdir: 'X' が未使用"

  これは、メッセージカタログの訳の流用ですから、あまりこちらで気にする必要は
  ないのでしょうが、「不正形式」とか「未使用」とか、「本当にそういう意味かなあ」
  と思わずにはいられません。と言って、代案も思いつかないのですが。

○ 私は、テープドライブを使ったことがありません。ですから、テープドライブ関係の
  部分は、「たぶんこういうことだろう」ぐらいで訳しています。よくご存じの方に
  チェックしていただきたいと思います。

私が手を入れた訳にも、間違えているところや、佐藤さんにとって納得できない
ところが、当然あると思います。指摘していただければ、できるだけ考えます。

手を入れた原稿は、圧縮して添付します。

-- 
長南洋一
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テキスト形式以外の添付ファイルを保管しました...
ファイル名: tar.new.gz
型:         application/octet-stream
サイズ:     29509 バイト
説明:       無し
URL:        <https://lists.osdn.me/mailman/archives/linuxjm-discuss/attachments/20190928/f9b40345/attachment-0001.obj>


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